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ふたりのロバート氏から学ぶ、思想改造(洗脳)と説得 ー歴史から、他人を思い通りにする方法・洗脳の手段と、それらから身を守る方法を同時に学ぶことができるー

1.はじめに

人の気持ちを操る・誘導する・思想改造する・マインドコントロールするということに関しての個人的なメモ。

私たちひとりひとりの「自分の意思」は、どこまでが「自分の」なんだろうか。
自由意志で選択したと思っていたことが、誰かに誘導され「選択させられていた」ということはないだろうか。

重要なことを決めるとき、私の気持ちはどんなふうだろうか?
焦らされていないだろうか?
誰かに嫌われることを恐れていないだろうか?
もっと勉強したいな。
というわけで、メモスタート。

2.ロバート・J・リフトン氏の
「思想改造のプログラムの8つの基準」

2-1. 環境コントロール

環境とコミュニケーションをコントロールする。
(他者とのコミュニケーションに限らず、個人の内面でのコミュニケーションも含まれる)

2-2. 神秘的操作

「最終目的を達成する」という名目のもとで、人が人を操作する。自然に起こったように見える体験も、計画された効果を発するよう巧妙に操作されたものであり、霊的と思われる体験も、実は仕組まれたものにすぎない。

2-3. 言語の詰め込み

言語を管理することで、思考の管理が容易になる。全体主義集団では、現実を黒と白にはめ込むために全体主義的な言語を使用する。「思考を停止させる決まり文句」の存在。外部のものは信者が話すことばを理解できない。

2-4. 教義の優先

実際に体験したことよりも「全体主義的集団の真理」「教義の真理」のほうが重要と考えさせる。「全体主義的集団の真理」「教義の真理」が良心や誠実さに取って代わる。

2-5. 聖なる科学

全体主義的集団では、自分たちの教義は科学的であり、道徳的にも真理であると信じられる。他の見解をもつことは許されず、教義に疑問をいだくことも禁止される。

2-6. 告白の儀式

人格の境界を打ち破るために、集団のルールに適合しない思想・感情・行動はすべて告白するよう要求される。プライバシーは全く、もしくは、ほとんどない。

2-7. 純粋性の要求

どんな人間でも達成できないような完璧な基準を掲げることで、罪と恥の意識をかきたてる。集団の思想に従えないものは罰せられ、また自らを罰することを学習させる。

2-8. 存在の配分

存在する権利をもつ者・もたない者を決めるのは集団だ。全体主義的集団には、他に正当な選択肢は存在しない。その集団が政権である場合は、国家による処刑を許すものだ。


ロバート・J・リフトン氏が著書で挙げた「思想改造のプログラムの8つの基準」は、朝鮮戦争で中国・北朝鮮の捕虜となったアメリカ兵が受けた精神操作の教育についてのものだが、これはほとんどそのままカルト宗教のマインドコントロール(思想改造)にも流用されているといえるのではないだろうか。

また、これは戦争捕虜、カルト宗教の信者に対する思想改造にとどまらず、”思い通りになる人間を作る手法”のテンプレートと言えるのではないかと私は考えている。

独裁国家・ブラック企業・機能不全家族のなかでも、リフトン氏が挙げた「思想改造のプログラムの8つの基準」に該当することが、強者から弱者に対して行われているのではないだろうか。

1979年にはこのような本が出版されていたというのに、日本は霊感商法被害や地下鉄サリン事件が起きてしまったし、今もブラック企業にすり潰される人たちが後を絶たず、目には見えないが全てに優先されるとされる「その場の空気」を忖度しながら個を犠牲にし続けている。
目を覚ましたい。

出典:『思想改造の心理―中国における洗脳の研究』(人間科学叢書〈6〉ロバート・J・リフトン 著、小野 泰博 翻訳 1979年 誠信書房)

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3.ロバート・B・チャルディーニ氏の「説得力の6原則」


3-1.返報性

「人から何らかの恩恵を受けたら、お返しをしなければならない」という原理。人間は好意には返礼をして、借りを返す性質がある。
人は本質的に、人から好意を受けた場合には、その人に対して譲歩や妥協をしなければならないと感じる。

3-2.コミットメントと一貫性

「自分が何かしたら、その後も以前にしたことと一貫し続けたい(一貫していると人から見られたい)」という原理。
人間は「一貫性があると見られたい」という深い欲求がある。そのため、人は何らかの物や人にコミットした際には、そのコミットメントを実現し最後までやり遂げる可能性が高くなる(そのようにして一貫性を維持しようとする)。

3-3.社会的証明

「人は、他人が何を正しいと考えるかに基づいて、物事が正しいかどうかを判断する」という原理。
人間が他人と同じ行動を取る。大勢が支持していることのほうが安心するという心理。人間は「自分に自信がない」「観察対象の人々が自分と似ている」という条件がそろった場合には、この原則にさらに影響される。

3-4.好意

「人は、自分が好意を抱いている人からの頼みを受け入れやすい」という原理。好意は、 人がその人物から影響を受ける可能性を高くする。
好意は何か似ているものや、身体的な魅力などのより表層的な関心を共有することによって成り立つ。

3-5.権威

「人は権威に弱く、権威者の命令や指示には深く考えずに従いがちである」という原理。
付帯的な要素、例えば仕事の肩書(博士・医師・議員・CEO等)やユニフォームは権威の空気をまとうことで、一般的な人々にそうした人物の言うことを受け入れさせやすくする働きがある。

3-6.希少性

「あるものが手に入りにくくなればなるほど、それを得る機会が貴重と思えてくる」という原理。入手が困難な場合に、それがより魅力的に感じられる現象。
商品が「最後の一つ」であることや、「特別価格」がもうすぐ終わってしまうことを知らされると、その商品を購入する可能性が高くなる。
人間はチャンスを逃すことを恐れる。その恐怖は素早い行動を促す強力な動機づけとなる。

チャルディーニ氏の「説得力の6原則」はマーケティングや営業を仕事にしている人なら、一度は目にするものだと思う。

いかに物を売るか、契約をさせるか、コンバージョン率を上げるか。
そういったテクニックは霊感商法やスピリチュアル商法にも取り入れられている。

出典:『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(ロバート・B・チャルディーニ 著、社会行動研究会 翻訳 第三版 2014 誠信書房)

【追記】

チャルディーニ氏は続刊で、7つ目に「説得前の下準備」を挙げているが、私は1対1なら、これがもっとも重要だなと思ってる。

事前に徹底して相手のことを調べていく。会うときにはすでに、初対面なのに共通の話題を豊富に持っている状態にする。
そして「え!こんなに自分のことを知っていてくれたなんて!」と感動させる。
人は「理解されたい」と思いがちな生き物だ。
「自分をこんなに知っていてくれるなんて!」と思われれば、もう相手の懐に飛び込んだも同然。

これは説得したい相手がいる場合は、攻略のためのテクニックとして頭に入れておきたいが、騙されないためには「これは私を説得するために、事前に調査していたんだろうな」と冷静になって一歩引くために頭の隅に置いておきたい知識だ。

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