SHEIN for slaves
「ウルトラファストファッション」と呼ばれるインターネットショッピング業界で大きな存在感を持つSHEINを利用したことがあるだろうか。この令和の時代、SHEINで買い物をしたことがない若者はほとんどいないと言っても過言ではない。
そんなSHEINだが、数年前、「なぜここまで価格が安いのか?」という疑問が話題になった。その背景として、主にウイグル人の強制労働による人件費削減が指摘されている。低価格の裏には、ホンモノの命が犠牲になっているというシビアな現実があるのだ。
しかし、こうした社会的な問題が明るみに出ても、多くの人々は買うことをやめない、いや、やめられないだろう。それは、私たちが資本主義に毒されているからだ。毎日、スマートフォンの画面越しに購買欲を煽られ続けている。かわいい、かっこいい、モテたい、流行に乗りたい──そんな「ホンモノかわからない」他者からの欲望が次々とあの小さい画面から飛び出してくる。そして、私たちは自分の本来の枠を超えた過剰な欲望をいつの間にか抱え込むようになってしまうのだ。
肥大し続ける「買いたい気持ち」を叶えようとすると、一つひとつの商品を正規の価格で購入していては、お財布がもたない。だからこそ、信じられないような数字の並んだ安価な商品に手を伸ばしてしまう。生活のために働いていたはずの体が、いつの間にか消費のための媒体にすり替わっていく。ホンモノの命を削った商品が、ホンモノかわからない購買欲によって買われていくのだ。もしSHEINの生産者が「労働奴隷」として働かされているのだとしたら、私たち消費者もまた「消費奴隷」となっているのかもしれない。