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177. AHL(北米プロ2部)のキャンプに初めて参加して

今回は、自分自身にとっては初めての経験となったAHL (北米プロ2部)所属のIowa Wildというチームのトレーニングキャンプに参加するまでの経緯、そして参加中の出来事について、日記形式でお伝えしたいと思う。

簡単に言えば、トライアウト生のような形で呼んでもらえた今回、結論から言うと、このチームに残ることはできず、ECHL Iowa Heartlanders (北米3部)に送り返されてしまった。それでも僕にとっては素晴らしい経験となった。

キャンプ参加に際して、温かい応援をいただいた方々に改めてお礼を伝えたい。、本当にありがとうございました!

今回の僕の経験が、今後同じ舞台を目指すこれからの選手たちに少しでも参考になればという思いも込めて、できる限りキャンプの顛末をリアルにお伝えしていきたいと思う。

それではどうぞ!

9月28日(土)@日本の自宅

元々僕は、10月5日から始まる現所属チームのIowa Heartlandersのトレーニングキャンプに備えて、9月29日(日)に日本を出発する予定だった。

28日の朝に目覚め、「明日やっとアメリカに出発かー」なんて寝ぼけた頭で考えていながら、ふとケータイを見ると、Heartlandersのヘッドコーチから10件ほどの留守番電話が深夜に入っていた。

「何事だ!?」と飛び起きる。

慌ててヘッドコーチに電話をかけ直すと、「優希が急遽AHL Iowa Wildのキャンプに呼ばれたので、フライトを一日早く変更したよ。突然で申し訳ないけど、今日の夕方の飛行機に乗れるかい?」という内容だった。

フライトは同日の17時。

「え、今日アメリカ行くの?まだ全然準備終わってないじゃん!!」

となったが、そこから大慌てで荷造りを完了させ、お昼過ぎに自宅をなんとか出発し、14時ごろに空港に無事到着。

空港には、僕ら夫婦を見送るために、母と義父が一緒に来てくれた。

出発が1日早くなったことを家族や友達にも道中で報告。

申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちとで、少し複雑だった。

17時になり、羽田を出発しいよいよアメリカへ。シカゴ行きの飛行機は相変わらず長かったが、途中たくさん寝ることもできて比較的元気なままアメリカに入国できた。入国審査も特に問題なく、夫婦ですんなり通過できたことがよかった。いつも入国審査はドキドキする。

無事入国できたことはよかったが、シカゴでの乗り継ぎ時間が一番きつかった。時間は4時間ほどでしたが、時差や長旅の影響か、途中二人とも眠すぎて椅子に座ってこくんこくんと寝てしまっていたようだ。

そんなことがありながらも、無事乗り継ぎ便に乗ることができ(乗りそびれなくてよかった)、アメリカ時間29日の22時ごろ、アメリカの自宅の最寄り空港に到着。そこにはHeartlandersのスタッフが迎えに来てくれた。本当に感謝。

そして、22:30ごろ、アメリカ自宅に到着。日本からの移動時間を考えると、ドアtoドアはほぼ24時間。長い!!

そして、待ちに待った我が家のチンチラ、ロディとの久々の再会。元気な姿を見れて本当に一安心。とても幸せだった。アメリカにいない期間、ずっと面倒見てくれた友人たちにも心から感謝だ。

さて、長旅を終えゆっくりしたいところだったが(猛烈に疲れていたが)、そこから今度はAHLキャンプに向けた荷造りをしなければならない。なぜなら出発が明朝だから。きつくね?

ちなみに、家について落ち着いた時には時計は0時を超えていたので、「こんだけ長い時間かけて移動してやっとついたのに、もはや数時間後の出発か、ははは」という変な笑いが生まれていた。

AHLキャンプには、どれくらいの期間行くのかわからなかったので、大きめのスーツケース一つに必要なものをまとめ、あとはリュックサックを持ち、荷造りはなんとか完了させた。

長い海外生活を経て学んだことの一つ。それは、「目に入った、必要になりそうな雰囲気の荷物はとりあえずスーツケースに詰めること」だ。これをしとけば大事故はない。(重たくなるけど)

そうそう、少し前提を話しておくと、今回のキャンプに僕が急遽呼ばれた背景は、AHLチームからNHLチームのキャンプに選手が多く参加していたからだ。

一言で言えば、「1軍キャンプに2軍の選手が多く参加しているから、2軍のキャンプに3軍の選手を呼ぼう」的なこと。

つまり、その選手たちがチームに戻ってくれば必然的に僕らは押し出されてしまう。つまり元々、一時的なコールアップという前提ではあった。

しかしそれでも、貴重なチャンスであることには変わりない。ここで活躍をすれば本当にチームに残れるかもしれない、契約を掴み取ってやる、という思いで荷造りをしていた。

荷造りが終わってみれば、時刻はもう1時過ぎ。

こうして長い移動日は終了。

9月30日(日)

朝、7時ごろ起床。

現所属チームのあるIowa City から、AHL Iowa WildのあるDes Moines までは、車で1時間半ほど。チーム側からは「15時にリンクに来て」と言われていたので、10時ごろIowa Cityを出発し、12時前にはDes Moinesのホテルに到着していた。ちなみに、移動はuberを利用。

ただ、ホテルが15時からしかチェックインできなかったらしく、結局ロビーで数時間を潰すことに。

それなら朝ゆっくり出てもよかったなぁ!!!
早起きしなくてもよかったなぁ!!!

という叫びを胸の中にそっとしまい、移動中に溜まったメールやら作業やらを進めていると、ようやくチェックインできることに。時間は14時半ごろ。

ホテルに荷物を置いたタイミングで、同じくHeaartlandersからAHLキャンプに参加するチームメイト(キャンプ中はホテルのルームメイト)とも合流。

再会を喜びつつ、ちょうど時間になったので、15時に、Iowa Wild の本拠地であるWells Fargo Arena へ。

AHLチームのロッカールームに足を踏み入れるのは初めてだったが、やはり全ての面で整っている環境だった。

ロッカールーム内には、トレーナールーム、ジム、サウナ、ジャグジー、選手用ラウンジなどさまざまな部屋があり、毎日朝ごはんと昼ごはんはリンクでケータリングで提供されるとのことで、ECHLとのホスピタリティの違いも大きく感じた。

さて、リンクに到着して一通りスタッフ陣に挨拶をしたあとは、脳震盪のテストを行った。

これは、毎年選手が行うもので、コンピュータ上で簡単なテストを行い、脳震盪の症状がないかチェックをするもの。これ自体はスムーズに終わり、その日は終わり。

その後ホテルに戻り、チームメイトと夕食を食べ、就寝。

移動の疲れからか、夕食を食べ終わって20時ごろにはもうベッドについていたかと思う。

9月30日(月)

キャンプ1日目。いよいよ今日からAHLキャンプスタート!

いきなり練習かと思いきや、実はその前に必ずやらなければいけないことがある。それがフィジカルテスト。

フィジカルテストと言うと、身体能力を測ることかと思われるかもしれないが、そうではなく、こちらは「健康なのでキャンプに参加してOKです」という許可をドクターたちからもらうこと。身体的にアイスホッケーをすることが問題がないか、どの選手も必ず行う健康診断のようなものだ。

というわけで、朝6時半に指定された病院に行きフィジカルテスト開始。(いや朝はやくね?)

血液検査、尿検査、関節の可動域など、一通りチェックされていく。血液検査で血を抜かれてる瞬間、少し意識が遠のく感じがしたけど、一点を見つめながら気合いで乗り切った。

ちなみにチームメイトの一人は一瞬失神した。

フィジカルテストが終わったのが8時過ぎ。それが終わったらそのままリンクへ移動。

そして、10時ごろにいよいよオープニングミーティング。
まさかここまでと思ったが、初日はメンバーがまだ本当に少ないようで、当日は合計13人ほどのみだった。明日からもっと増えるとのこと。

ミーティングでは、いきなりチームの戦術のインストールが始まった。ビデオを見ながらチームの動きを一つ一つ確認していく。

普段のチームとはシステムも違うところがあるので、映像とコーチの説明を聞きながらしっかりと頭に叩き込んでいく。

システムを間違うことは、相当印象が悪いので、しっかり覚えることに全部の意識を注いだ。

そしていよいよ、初練習。練習内容は人数も少なかったこともありスキル系やバトル系がメインだった。

自分のコンディション的には、フライト後初の氷上だったこともあり、体はかなり重く感じた。緊張もあるだろう。ただ、決して動きは悪くはなかった。

スピードは通用するけど、1on1のパックプロテクション、フィジカルの部分で負けることが多かった印象だった。シンプルに人数が少なかったことあり、練習もかなりハードだった。

「できる限りの準備をして、この体の重さは仕方ないよな」と割り切っていた。

そして、1時間ほどの氷上練習がおわり。

しかし、まだまだここで本日の日程終了、とはならない。そのあとは、体力測定があった。

握力、立ち幅跳び、垂直跳び、デッドリフトの挙上速度、バイクスプリントなどを行った。

バイクスプリントはこれまた意識が遠のきそうになる内容だった。

へろっへろになったが、ようやく1日の予定が終わった。

朝のフィジカルテストのために5時半ごろから活動を開始していて、結局リンクを出たのは15時ごろだった。

ホテルに帰り、ご飯を食べたら爆睡。昨日より早く、リアルに18-19時ごろには寝ていたっぽい。
その後、夜何度か目覚めたもののすぐまた眠りにつき、朝を迎えた。

ルーミーに”You slept like a baby(赤ちゃんみたいに寝てたよ)”と言われた。

いや赤ちゃん以上じゃない?

10月1日(火)

キャンプ2日目。朝8時ごろホテルを出てリンクへ。軽い朝食をとり、その後はミーティング。

今日はNHLキャンプから帰ってきたメンバーも多く、練習は20人以上で行われた。

自分は4セット目の、余りの一人だった。(4セット目はみんなHeartlandersから自分と同じくコールアップされてる選手)

練習でのパフォーマンスは、これまたまずまずといったところ。
いいスピードを持ってアピールできたところもあったけど、チャンスを決め切れなかったりバトルに勝てないところもあった。

練習後、明日行われるプレシーズンゲームの遠征メンバーが発表された。最初自分は行かないものだと思っていたが、メンバーに入っていた(いわゆる、AHLの主力組が試合はおやすみということだった)

練習後、チームはバスに乗りイリノイ州ロックフォードへ。

移動は4時間ほどだった。

明日予定通り出れれば、プレシーズンとはいえ初めてのAHLレベルの試合。
アピールできるのは明日だけだろう。シフトが少なくても、出た時に全力でプレイする!ゴールする!

10月2日(水)

試合は、AHL Rockford Icehogsとの対戦。試合は朝10時くらいからだったので、8時前にはリンクに集合。

セットを確認すると、4セット目のウイング。

昨日決めた通り、出番が少なくても、全力でプレイする。

チームミーティングで試合の戦い方に関する話があり、その後はウォームアップ。

良い気持ちの状態で防具を身につけ、いよいよ氷上へ。
Iowa Wildのユニフォームに袖を通した時は、感慨深い気持ちだった。

試合終了。

結果は、3-4で負け。スタッツは、0ゴール0アシスト。

僕らのHeartlandersセットは、なんとチームの先制点を奪うも、その後僕らのセットで3失点(自分が出ている時は2失点)。

最終的な±は、マイナス1だった。

いい動きはたくさんあったし、スコアリングチャンスも3回ほどあった。
だからこそ、ここで結果を残せなかったことが本当に悔しかった。

大きなミスこそなかったが、やはりこういった場面で生き残るためには、ちょっといいプレイではなく、あっと誰もが驚くパフォーマンスをしなければいけないことはわかっていただけに、とても悔しかった。

普段であればパスをする場面でも、シュートマインドセットをもち、自分で決めにいく姿勢を持ち続けた。

試合が終わり、すぐにアイオワへバスは出発。
そして、バスがリンクに到着した瞬間、チームスタッフから電話が入った。
「話したいことがあるから、コーチルームに来てくれるかな?」という電話だった。

僕と、もう一人のHeartlandersの選手が呼ばれた。
その瞬間「ああ、ここでリリースだな」と二人で悟った。

実際にその後コーチの部屋に一人ずつ入り、話をした。
予想通り、「今日で君をIowa Wildからリリースし、Heartlandersに送り返す」というものだった。

コーチからもらったフィードバックとしては、

・スピードはとても良い
・チャンスでパックを持った時に、シュートだけではなく、フリーな味方がいたらそこにパスを出せると、もっとホッケー選手としてよくなれる
といったものだった。

・・・・

・・・いや完全にシュートマインドセットが裏目に出てるううう!!!!

味方が周りにいたのはもちろんわかっていた。その上で、シュートを狙いに行った。そんな場面が2-3回あった。

普段の僕は「シュートを打て!」と言われることが多い。打てる場面でも味方に渡してしまうことが多いから。

今回は、あえて見えていても自分でシュートを打ちに行ったが、それが裏目に出た形となった、作戦失敗。笑

でも、結局そこで決めていれば「良いゴール」になっているわけだし、シュート選択自体は決して判断ではない。でも、自分がパスをもっと出すように求められたのは人生で初めてだったから、ある意味とても価値のあるフィードバックをもらえたと思っている。

そして、的確なアドバイスをくれたコーチにも心から感謝をしている。

チームスタッフにも今回呼んでくれたことへの感謝を伝え、リンクを後にする。

ホテルに戻り、同じタイミングでリリースされた子の車に乗せてもらい、その日のうちに自宅のあるIowa CItyへ戻った。

こうして、僕の初めてのAHLコールアップ体験は終了した。

最後に

今回、本当に急遽AHLキャンプに参加させてもらうことになったわけだが、本当に良い経験ができたと思う。これまで同じチームで3年以上過ごしてきた中で、これまでよりレベルも高く、環境も大きく変わる場所に行けたことで、自分が快適と感じている場所を抜け出しあえて居心地の悪い場所へ行くことの大切さを改めて学んだ。

リンクに行くことも、ロッカールームを歩くことも、練習に出ることも、試合に出ることも、久々に緊張した。

でも、その緊張が心地よかった。

目標だったチーム残留には程遠い結果となってしまったが、これまで足を踏み入れることのできなかった世界に、少しでも自分の身を置けたことは非常に良い経験となった。

それに、AHLコーチ陣に直接自分のプレイを見てもらえたことも大きな収穫だろう。

今回チームからリリースされたからといって、今後またコールアップされるチャンスがなくなったわけではない。

またコールアップされるためにやることはとてもシンプルで、今いるチームの勝利に貢献し、結果を残すことだと思う。

もちろん簡単ではない。

毎年年齢も重ね、いつの間にかチーム内では上から年齢を数えた方が早い選手になっているが、つくづく、年齢は単なる数字だと感じる。

現に、こうしてこれまで経験できなかったことを体験することができたのだから。立派な成長だと思う。

もちろん、人からしたら、目指している場所に対して、今自分がいる場所と年齢を考えたら、無謀だとか、無駄だとか、そのように見えるかもしれないが、僕は本当に、この挑戦を心から楽しんでいるし、まだまだ成長できると思っている。

自分が成長できていると思えるときは、人生で最も幸せな瞬間の一部だ。

今回学んだことを、単なる経験として終わらせるのではなく、今後の成長に繋げるための肥料にしていこうと思う。

本当に素晴らしい経験をさせてもらった。今回のチャンスをくれた全ての人に心から感謝をしている。

ありがとうございました!

この記事が少しでも、何かしらの形で、どなたかの役に立つことを願っています。

三浦優希

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