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自分が何者かについて語るとき、そこに壁はない


期末試験を終え、いよいよ4ヶ月間の北京留学生活が終わろうとしている。来週の今頃はもう日本にいると考えたら、時間が経つのはとてつもなく早いものだと改めて感じる。

今日はもうすぐ帰国ということで、こちらの大学で聴講させてもらった「跨文化心理适应(日本語だと異文化適応心理学?)」の授業で同じグループになった中国人大学生二人とご飯を食べた。

彼女たちは、年齢でいえば20歳前後で、私とは8歳も離れている。

でも授業でパーソナルな話を共有したからか、あまり年齢の違いを意識することなく、一緒にいるときは楽しい時間を過ごすことができた。

そのうちの一人とは興味関心事がすごく似ていて、心理学や社会学、ジェンダー論、自己理解について3時間ぶっ通しで話したこともあった。

そんな彼女から、最後にポストカードをもらった。中国語で書かれたカードには、ざっくりいうと下記の内容が書かれていた。

「自分は何者か」を理解することは、時間をかけて探しにいくこと、学ぶこと。その一部分をすでに終えていることに、おめでとうと言いたい。未来のあなたも、自分の心の声に従い、自分が好きなこと・興味あること、そして意義のあることをしているといいな。世界のどこにいたとしても、「自分らしく」あり続けることを祈っているよ。

メッセージを読んで、私が大切にしたい価値観である「自分らしくいること」が、この短期間の交流で彼女に伝わっていたことがとても嬉しかった。そして、どうして伝わったのかなと考えると、授業を通して私が何者かについて悩んだことがあることを共有し、彼女もまた高校時代の辛かった時期のことを話してくれ、そこから人生について語り合ったからかなと思った。


人と人の距離を一番近づけるのは、どんな学校にいって、どんな仕事をして、どんな家に住んでいるのか、じゃない。

自分は何者か。つまり、これまでの人生で何を考え、どんな決断をしてきたか。どんなことに悩み苦しみ、それと向き合ったことで何を学んだか。自分は何が好きで、何をしているときにワクワクするか。何を大切にしているか。そういった、人間としてみんながそれぞれの形で経験していることを伝え合うことが、お互いの距離を近づける一番の方法だ。

自分が何者かについて語るとき、そこに壁はない。そんなことを改めて思った。


2019年は、仕事を辞める(5月末)、絵画展に参加(6月頭)、旅館住み込みバイトする(7−8月)、中国に留学する(9月)、転職活動をする(11−12月)、と改めて書いてみるともはや前半が思い出せないくらい後半が慌ただしくて、気がついたら2020年を迎えていた。

2019年の振り返りもできていないし、2020年のやりたいことも整理できていない。

でも、そんな中でも一つ心に決めたことは、「ピースメイキングサークル(修復的対話)」を自分ができる範囲で本格的にやっていくこと。アメリカに留学していたときに出会ったこの対話の手法とは、もうかれこれ4年くらいの付き合いになる。日本に帰国してからも、プライベートで十数回対話の場作りをしてきたけど、誰かに強制されることもなく自分の意志で続けられているのは、きっと自分にとって大切なことだから、もっと質を高めて自分の価値を提供できるものの一つとして育てたいと考えるようになった。

どうしてこんな話をするかというと、このピースメイキングサークルが大事にしていることが、まさに「経験」を語ることで自分と他人をより深く理解し、最終的に問題解決に繋げるということだから。

4年間の対話の中で、実にさまざまな人と物語と出会った。人種差別に苦しんでいる有色人種の人々の物語、人種差別が理解できない白人たちの物語、二十数年間刑務所にいた人の物語、移民、難民として異国の地で暮らす人たちの物語、多様なルーツを持つ若者の物語、キャリアに悩む20代の物語。

みんな生きてきた人生は違うけど、悩みや苦しみ、喜びや幸せを共有できたとき、違いを一気に飛び越え、人間として繋がりを感じる瞬間がたくさんあった。異なる背景の人々と話している中で共通点を見つけ、お互いの繋がりを感じた瞬間、すごく心が温かくなる。私はその瞬間がとても好きだ。

やっぱり、私がしたいのは、国境や民族、年齢、性別などのカテゴリーを超えた、人間同士の対話と相互理解なんだと思った。


中国人の彼女からのメッセージは、私がこの先取り組んでいきたいことへの後押しだと感じた。

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