命の灯り
詩人、吉原幸子の一篇「通過Ⅳ」
山の 高いところに
ぽつんと一つ 灯がついてゐるのは
人が あそこにもゐるのだ
泣いたり 笑ったりして
幸せは罪ではない
これを読んで心の蓋がポッと開いた気がした。都心の真ん中で退屈な日常を暮らしていると、気づきようもなかった命の灯り。無数の涙とたくさんの笑顔、それは命そのものだ。
「幸せは罪ではない」とあるのは、詩人は幸せが有罪か無罪かの問いをもっていたのかもしれない。そしてここに、命という存在の最高裁無罪判定が下る。それを原罪にしてしまったら、詩人は在りようもなかったに違いない。
私の命だって、外からみれば、LEDにぼやけたカーテンのシルエット。
命の灯り。
罪であるものか。