「にごりえ」にガツンと殴られる
誰しも教科書で一度は読みながら多くの人はそれきりになってしまう樋口一葉。むしろ五千円札の肖像のほうが有名かもしれない。その涼やかで凛然とした佇まいは相当の妙齢美人だが、しかし一葉が生きた時代は自由恋愛などできたものではなく、女性にあっては学問の道とて茨として閉ざされていた。
最近、近代文学を読み直しているが、真っ先に一葉の「にごりえ」を手に取った。三角関係の許されざる恋を一向に許さぬまま、一気に破滅を描き切る。しかし、行く末の覚束ない女心の揺らめきを描く筆はもう見事としか言