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国際学会って実際どう?参加するメリット・デメリット
ポッドキャスト「ICUトーク」第4話が公開されました。今回のテーマは「国際学会」です。
日本の学会でも緊張するのに、海外の学会なんてハードルが高いですよね?ぼくもそう感じていましたし、何度か参加した今でも緊張します。でも、国際学会ならではの魅力もたくさんあるので、また行きたいと思えます。このnoteでは、実際に国際学会に参加したぼくの経験をもとに、そのメリット・デメリットをまとめていきます。
ぼくにとっての初めての国際学会
まずは、ぼく自身が初めて国際学会に参加したときのことを紹介します。2018年10月のことなので、もう6年半前になります。初めて参加したのは、パリで開催されたヨーロッパ集中治療医学会(ESICM)でした。
緊張した初の英語での発表・質疑応答
電子ポスターのセッションに採択され、発表に臨みました。4分間のプレゼンテーションに向けては、事前に原稿を作成し、次の言葉が自然に出てくるまで何度も何度も暗唱しました。結果的に、なんとかプレゼンはやり終えました。しかし、問題はそこからでした。
3分間の質問タイム。やはり、質問が聞き取れない!
ヨーロッパ集中治療医学会には、さまざまな国・地域からの参加者がいます。ぼくが日本訛りの英語を話すように、他の方々にもそれぞれのアクセントがあり、全く聞き取れませんでした。本来なら聞き返せばよかったのですが、頭の中が真っ白になり、言葉が出てこない。本当に焦りました。
そんな中、救世主となったのが座長の先生(写真の緑のカーディガンの女性)でした。彼女が、聞き取りやすい英語で質問を言い直してくれたおかげで、なんとか聞き取ることができ、回答につなげることができました。
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スムーズに対応できたとは言えませんが、発表を終えたことでひとまず安心しました。研究を指導してくださった先生や職場の同僚も労ってくれ、大仕事を終えたという実感が湧きました。質疑応答中は、聞き取りと回答に必死で余裕がありませんでしたが、よく考えると「海外の研究者から直接フィードバックをもらえる」というのは、とても貴重な経験だったと後から気付きました。
ハイレベルな研究だけじゃない!
自分の発表以外の時間には、いろいろなセッションを聞いて回りました。ICU分野を代表する国際学会なので、「どの発表もレベルが高すぎてついていけないのでは?」と不安もありました。しかし、実際にはさまざまな研究が発表されていました。単施設の後ろ向き観察研究のプレゼンも多く、「研究経験が少ない人でも、身近な研究で国際学会に参加できるんだ」と実感しました。
国際学会参加のメリット
ぼくが考える国際学会参加のメリットは、大きく以下の5つです。
1. 自信がつく
行く前は「国際学会は怖いもの」という漠然としたイメージがあるかもしれません。でも、実際に行ってみると、意外になんとかなります。座長も聴衆も、発表者を困らせようとは思っていません。自分にできる準備をし、精一杯プレゼンし、質問に答える。それだけで十分です。完璧でなくても、発表を終えた後には間違いなく自信がついています。
2. 世界的リーダーの話を聞ける
大規模な国際学会では、その分野のトップリーダーが参加しています。彼らが日常診療をどう展開しているかを知ることは、明日からのプラクティスに役立つヒントになります。また、講演を通じて「この分野を今後どう発展させようとしているのか」が垣間見えるのも、国際学会ならではの醍醐味です。
3. インパクトのある研究の発表を目のあたりにできる
「Late Breaking Session」や「Hot Topic Session」では、最新の大規模RCTの研究結果が初めて公表されます。さらに、NEJMやJAMAといった一流ジャーナルに論文が掲載される瞬間に立ち会うことができます。世界が注目する研究発表の臨場感は、現地に行かないと味わえません。今の時代、自宅にいてもオンラインで論文に簡単にアクセスできますが、あの独特な雰囲気は現地にいかないと経験できません。ICUトークでも、「研究のフェス」という表現が紹介されてましたが、まさに的を突いた表現です。
4. 日本の他施設の方と知り合える
意外なメリットですが、海外で日本人と出会うと強い親近感を覚えます。同じ分野の仲間として、ランチやディナーを共にすることで自然と交流が深まり、国内学会でも顔見知りになり、将来の共同研究につながることもあります。
5. 異国文化に触れられる
副次的なメリットですが、せっかく海外に行くならその文化を楽しむのも大きな魅力です。空き時間に観光地を巡ったり、現地の食文化を堪能したりすることで、充実した時間を過ごせます。
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国際学会参加のデメリット
もちろん、メリットだけではなく、いくつかのデメリットもあります。
1. お金がかかる
参加費(5〜10万円)に加え、円安や物価高の影響もあり、トータルで数十万円かかることもあります。施設が一部負担してくれるケースもありますが、自己負担が大きくなることが多いです。
2. 時間がかかる
移動・現地滞在を含めると、職場を1週間ほど離れることになります。特にヨーロッパやアメリカでは、移動だけで丸一日かかり、さらに時差ボケの影響もあります。
3. 英語での発表
これはデメリットというよりハードルですが、やはり不安なポイントですよね。「なんとかなるさ」というマインドセットで乗り切ることが重要です。
ICU分野の国際学会
ちなみに、日本に日本集中治療医学会があるように、世界にはそれぞれの国・地域のICU関連学会があります。その中で特に規模が大きいのが次の2つです。
欧州集中治療医学会(ESICM):毎年10月
米国集中治療医学会(SCCM):毎年1−2月
日本から参加される方もこの2つのどちらか、という方が多いでしょう。ぼく自身はESICMに3回(+コロナ禍のオンライン参加1回)参加しましたが、SCCMはまだです。
だいたい抄録の締め切りが、学会開催の半年前くらいなので、ESICMは4月、SCCMは7−8月のイメージです。その頃に結果が出揃い抄録を書ける準備が整っていれば、応募のチャンスです!
まとめ
ぼくの経験をもとに、国際学会参加のメリット・デメリットを紹介しました。「行かないと得られない体験」が、確実にあります。演題採択のハードルも思ったほど高くはありません。少しでも興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください!
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