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論文執筆初心者も迷わない!効率的な論文の書き順

論文を書くのって大変ですよね。終わりの見えない作業に思えます。ぼくも1本目は特に苦労しました。

そんなぼくも多くの方々に指導をいただく中で、自分なりに論文の書き方が定まってきました。

論文の書き方の中でまず大事なのは、どの順番で書いていくかです。それぞれのセクションで書くべきことは、まず作業順序を決めた後のお話になります。今回は初めて論文を書く方や、研究に関わり始めた方のお役に立てればと思い、ぼくなりの論文の書き順をシェアします。

執筆した論文のゴールは?

まず共有しておきたいのが、論文のゴールです。あなたが論文を書き始めたら、「何をゴールに論文を書くか」という問いです。

ぼくの答えは、アクセプトされることです。

アクセプトされない論文は世に出ることができません。方法や結果がいくら素晴らしくても、どこかの雑誌にアクセプトされなければ、その研究は存在しないも同然というのが、残酷ですが現実です。なので、このnoteではあくまで「アクセプトされる」ことを目的に論文の書き順を紹介します。

論文全体で一つのストーリーを作る

アクセプトされるためには、評価者である査読者の気持ちになることが大切です。基本的には、その分野の専門家が査読者に選ばれています。査読者を納得させられればアクセプトされますし、疑問や不満が多ければリジェクトされます。

もちろん論文というのは、医学研究の成果を客観的に表現するものです。一方で、読み物としてのストーリー性も大事です。どこかで流れが悪いところがあると、プロである査読者は見逃してくれません。「流れが悪い」「一貫性に欠ける」と感じられると、リジェクトされる確率が高くなります。読み手の気持ちをイメージして書いていくことも大事です。

論文を構成するパーツ

では、論文はどんなパーツからできているのでしょうか?大きく分けると以下のようになります。

  • タイトル

  • 抄録

  • イントロダクション

  • 方法

  • 結果

  • ディスカッション(結論を含む)

  • 図・表

他にもサプリメントなどを作る場合があるますが、今回は論文本文部分にフォーカスして、どの順番で何に注意しているかをまとめます。

論文の書き順

では実際に、論文を書き進める順に沿って説明します。

1. まずは図と表を完成させる

図表から作るのには、主に2つ理由があります。

  1. 論文のハイライトだから
    繰り返しですが、図表は論文のハイライトです。ハイライトが一番美しく見えるべきなので、図表そのものの作り込みは大事です。また、論文全体のストーリー性も重要です。イントロダクションや方法が図表を際立たせる役割を果たし、結果とディスカッションは図表を中心に展開するという流れが理想です。その意味でも、図表の確定が第1歩です。

  2. 査読者に見られるから
    論文の取捨選択は査読者の手に委ねられているので、査読者視点を持つことが大事です。査読者はタイトル・抄録とともに図表を必ずチェックします。そのため、図表の質が査読者の第一印象を左右します。図表が良ければ好意的に査読が進みますし、逆に質が低ければ本文を真剣に読んでもらえないかもしれません。

図表の内容は研究によって異なりますが、観察研究では以下のような構成が多いです。

  • 図1:患者選択のフローチャート

  • 図2:メインの結果の図示

  • 表1:患者の基礎情報

  • 表2:曝露のまとめ

  • 表3:アウトカムのまとめ

2. 方法を書く

方法は、原則として研究を始める前に確定しているはずです。また、論文の種類(研究デザイン)によって書くべき内容が決まっています。例えば観察研究の場合、以下の項目を記載します。

  • 研究デザイン

  • 対象患者

  • 曝露・対照

  • アウトカム

  • 統計解析

詳しくは、研究デザインに応じて記載すべき項目をまとめてくれている報告ガイドライン(reporting guidelines)が参考になります。

3. 結果を書く

次は結果です。ここで大切なのは、論文という1つのストーリーの中での一貫性です。具体的には、方法に記載した内容に呼応する結果を書くことです。方法に述べられていない数値が出てくるのは不自然ですし、新しい解析結果が突然登場するのも一貫性を欠きます。このため、結果を書くのは方法の後になります。主な記載内容は以下の通りです。

  • 患者選択のプロセス:図1に対応

  • 患者の基礎情報:表1に対応

  • 曝露のまとめ:表2に対応

  • アウトカム:表3に対応

  • メインの解析:図2に対応

  • 補助的な解析:サプリメントに対応

結果を書く際に図表が重要な役割を果たすことが、ここからもお分かりいただけると思います。

4. イントロダクションを書く

次はイントロダクションです。ここは3〜4段落で構成します。

  • 第1段落:わかっていること。
    対象となる病気の重大性(例. 頻度が高く、予後が悪い)と曝露の重要性(例. 理論的なメリットやデメリット)を記載します。場合によっては、病気と曝露を分けて書き、2段落にしても構いません。

  • 第2段落:わかっていないこと。
    1段落目で記載した既知の事実を踏まえた上で、未知のことを明確にします。単に未知であることを述べるだけでなく、「これが分かれば、この病気の理解や治療にどのように役立つか」を示し、と読者を引き込むようにします。つまり、今回の論文で明らかにしたいことの裏返しです。

  • 第3段落:研究目的・仮説
    第2段落を受けて、「この研究の目的は◯◯を明らかにすることです。この研究の仮説は◾️◾️です」という形で明確に記載し、イントロダクションを締めます。

イントロダクションは、図表で示すメインの結果に結びつくよう構成するのがポイントです。例えば、予後の悪さを書く際には、プライマリーアウトカムに触れると流れがスムーズになります。

5. ディスカッションを書く

イントロダクションで作った流れを基に、方法を説明し、結果を提示したら、最後に考察です。このセクションは自由度が高いため、苦労する人が多いです。しかし、以下のテンプレートに沿うと書きやすくなります。

  • 結果のまとめ

  • 先行文献との比較

  • 診療と将来の研究への示唆

  • 強みと限界

  • 結論

特に気をつけたいのは、「先行文献との比較」です。重要なのは、「あなたの論文」と先行研究を比較することです。先行研究の結果を羅列したり、先行研究同士の比較ばかりでは、あなたの論文とのつながりは見えません。あくまであなたを中心に据えて記載しましょう。

限界の書き方も大事です。論文の弱点を正直に認めつつ、その克服のために取った対策を示します。限界を一つ挙げたら、必ず“However,”を使い、その対策や補完策を記載しましょう。うまくいけば、限界が強みに転じることすらあります。

6. タイトル・抄録

ここまで書き上げたら、論文はほぼ完成したも同然です。タイトルや抄録は本文のエッセンスを抽出して書く部分なので、内容が固まっていれば比較的スムーズに進むはずです。

なお、ぼく自身は図表作成後の早い段階で、タイトルと抄録を完成させることもあります。他の部分に比べて必要な労力が少ないため、執筆のタイミングは柔軟でよいと思います。

まとめ

ぼくが実践している論文の書き順は以下の通りです。

  1. 図表

  2. 方法

  3. 結果

  4. イントロダクション

  5. ディスカッション

  6. タイトル・抄録(ここはこだわりなし)

初めて論文を書くときは、どこから手を付ければいいのか迷うものです。このnoteで紹介した書き順が、皆さんの執筆の助けになれば嬉しいです。

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小谷祐樹
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