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出不精な娘を誘い出すための、ダークモカチップフラペチーノ
娘は、家が好きすぎる。喜ばしいことだ。
彼女が小さい頃好きだった遊びは「24時間ベッドの上チャレンジ」。つまり、家のある特定の場所でどれだけ長く過ごすことができるかっていう挑戦が楽しいわけで。
そんな彼女の、今の趣味は「自分の部屋をいかに自分の好きなものに仕上げていくか」。挑戦した先は“安住“だったみたい。家のある特定の場所を自分の住み良い空間にする探究が楽しいらしい。
ほんとうに、家が好きすぎる。喜ばしいこと。
喜ばしいことなのだけれども。
私は、お出かけがしたい。平日じゃなくて、休日。
電車を何本も乗り継がなくて良い(それは疲れる)。車を何時間も走らせなくて良い(そもそも私は免許を持っていない)。
ほんの少し歩いて、とか
バスに乗って、とか
電車で2駅、とか
それくらいの距離感のおでかけで、服屋さん行ったり本屋さん行ったりカフェ行ったりしたい。
なのに、彼女は家が好きすぎる。もう、正反対。
娘はきっと、「平日めいっぱい頑張った自分を労わるために、家でゆっくりすることが、自分を可愛がるということ」なんだと思う。
でも私は「平日とは少し違う場所に自分を連れて行ってあげることが、自分を可愛がるということ」なんだと思う。
どちらも根っこは同じだけど、正反対。
だから分かるんだよなあ〜って思う。休日は特に自分を可愛がりたいし、可愛がり方は人それぞれだよねって。
でも、だとしても、「じゃあ私は出かけるから留守番よろしく!」って小学校低学年の娘には言えない。中学生にもなったらまた別かもしれないけど、低学年の娘にはそういうわけにはいかない。
でも、だからと言って、娘に合わせて休日ずっと家で過ごし続けるのは、それは私は私自身を可愛がってあげられなくなってしまう。
困ったなあ。
「本1冊、好きなの買ってあげるから。」
「最近服小さくなったよね?一緒に買いに行こうか。」
そうやって一緒に行こうと誘うのだけど、いつも
「アマゾンで買えば良い。」
「まだ大丈夫。」
と言われる。家からは出たくない。
「今日原宿行く?」
「アスレチック行く?」
好きな場所なら一緒に行ってくれるかもと思って誘うのだけど、いつも
「電車乗り換えある?・・・それならやめとく(電車何本も乗るのが苦手)。」
「う〜〜〜ん、今日はいいや。」
と言われる。やっぱり家からは出たくない。
だけどそんな娘が高確率で一緒についてきてくれる誘い文句が
「スタバ行く?」
なのである。
私が娘と出会ったのは、娘が小学校1年生の時。当時の娘は、たくさん食べることが苦手で、どんなに好きなものでも、どんなに完食したかったとしても、完食することが難しかった。食というのは、いつも本人の思い通りになってくれないものだったんだと思う。
そんな娘と、一緒にスタバへ行った時のこと。それは、娘が2年生の頃だったと思う。「ちょっとちょうだい。」と言うので、私が飲んでいたダークモカチップフラペチーノを一口あげた。
「これ、美味しい。」
数ヶ月後もう一回スタバへ行った時、娘は言った。
「あの、あれ飲みたい。チョコのやつ。前ゆきちゃんがくれたやつ。」
へえ〜気に入ったんだ、うんうん、それは嬉しい。買おう。と思った。でも、どうせ全部飲み切らないだろうな・・・とも思った。私は自分の分の飲み物を買うの躊躇った。2人で1つにしよっかなあ・・・って。結局それぞれの飲み物、買ったけど。
各々好きな飲み物買って、各々読書して。ふと娘のダークモカチップフラペチーノを見たら・・・あれ。空になっていた。
「美味しかった。全部飲んじゃった。」
少し誇らしそうな、少し大人になったような、そんな顔。
嬉しいのかもしれない。ダークモカチップフラペチーノは、彼女にとって、そういう、「自分の成長の証のようなもの」なのかもしれない。
だから
「スタバ行こうか」と言うと、娘はこうやって答える。
「いいよ、ダークモカチップフラペチーノ、トールね。」
ショートじゃなくてトールかあ・・・。ちゃっかりしてるなあ・・・。そんなことをチラッと思うけど。ダークモカチップフラペチーノ。家が大好きな娘を数時間だけ、気持ちよく外に連れ出してくれる。私も数時間だけ、お出かけができる。お互いを可愛がることができる、大切なアイテム。
いつか、一緒に飲む相手は私じゃなくなるのだろうなあ。友達と一緒に飲むのかな、もしくは1人で飲むのかもしれない。お勉強しながら、とかね。それは彼女は遠くない未来の話。だってもう、5年生だもんね。
誘えるうちに、誘い出せるうちに、ダークモカチップフラペチーノで私のおでかけに付き合ってくれるうちに、存分に付き合ってもらおう。