BLUE GIANT/石塚真一#72
先日、「BLUE GIANT」の新刊が発売された。
石塚真一といえば、山岳救助をテーマにした「岳 みんなの山」で有名だ。
もちろん岳も読んだことあるのだが、岳の主人公である三歩に劣らないほどポジティブなのがBLUE GIANTの主人公・宮本大である。
私がこの漫画を知ったのは何だったか。
とにかくこの作品に出会えて良かったと、過去に読んできた漫画の中でも一番好きだと言える。
物語がジャズ音楽をメインに進んでいくからなのかもしれないが、何よりこの大の真っ直ぐな性格が良い。見ていて清々しい。
その上、大と出会う人々が素敵だ。
いや、素敵な人とばかり出会うわけではない。
「出会うということ」が素敵なんだと思う。
その出会いに対して、大はいつも真っ直ぐに応える。そして音楽とも実直に向き合う姿が、読んでいる人の心をアツくする。
「BLUE GIANT」(全10巻)は大がサックスに出会い、上京し仲間に出会う東京編が描かれる。涙なしでは読めない内容だ。
「BLUE GIANT SUPREME」(全11巻)は、ドイツ・ミュンヘンに単身で向かい、アジア人としての孤独と向き合いながら仲間と出会いライブをしていく。
そして「BLUE GIANT EXPLORER」は、ドイツを離れ単身でアメリカに渡り、世界一のプレーヤーになるための道を突き進んでいくところだ。
2021年11月時点で4巻までが発売されている。
この作品は最後の数ページに必ず、インタビュー形式のエピソードが描かれていてこれを楽しみにしている読者も多いと思う。
大と出会った人が一人ずつインタビューに答えている形で、現在の大がどう活躍しているのかが想像できる。
特に先月発売された新刊では、「ああ、やはり大でも孤独と自分の信念と現状との葛藤があったのだな」と思うシーンがあった。
ジャズが好きでなくても詳しくなくても、おすすめできる。
私は信念が揺らいだとき、行き詰まったときにこの漫画を手に取りたくなる。静かな勇気をもらえるからだ。