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育児相談に行ったら「もやしを買いなさい」と言われた話#33

あれは確か長男の1歳半検診だったと思う。

わたしの住む熊本市では、1歳半検診と3歳児検診とあり、お便りがきたので指定の日時に保健子ども課へ行った。

1歳半検診では主に、運動機能や視聴覚など身体の成長、精神発達の度合いをチェックし、生活習慣や虫歯の予防、栄養や育児の指導をしてくれる。

近年では「育児ノイローゼ」という言葉も頻繁に聞かれるためか、出産時と同じく保護者の記入する問診票に「近くに育児の相談をできる人はいますか?」「家族や夫のサポートはありますか?」というような保護者を気遣う問いかけがある。

わたしは近くに育児の相談をする人はいるけど、初めての子育てだし不安なところにはチェックをつけておこうと思い、「経済的な面で心配している」というような項目にチェックをつけて提出した。

年金制度は破綻するなんて話も聞くし、教育資金もかかることを思えば、これからどういったことを考えておかねばならないのか、という意味での経済的な心配、である。

おそらく誰もがそう考えると思うし、わたしも返答としては学資保険や教育資金がどのくらいかかるかといった話が出てくるのかな、という予想をしていた。

問診票を提出して担当の保健師さんとお話して、いくつか質問に答えていくうちに、

「経済的な面で心配があるんですね?」
と言われた。

そうなんです、学資保険や大学卒業までにいくらかかるのかなと思って〜と、そんなことを聞こうとすると、

「わかりました。もやしを買うといいですよ!」

と言われた。

「!???」

一瞬驚いた。
できるだけ動揺していない素振りをした。
平静を装ったのはなぜかはわからない、動揺したり笑ってしまうと失礼になるかもと考えたからなのかもしれない。もうなにがなんだかわからない。

保健師さんは、

「もやしはね、季節に関係なく価格も上下しないから。いつでも安い!葉物や季節の野菜は高くなったりするけどね、もやしはいいわよ」

と自信満々に続けた。
わたしはその瞬間ニッコリと笑った。このニッコリは「なるほど」という意味ではない。
もう笑いを堪えてしまったが故、ニッコリになってしまったのだ。

もやし…もやしを買うと教育資金に悩まなくなるのだろうか?
というかわたし、そんなにお金に困っているような服装で来てたっけ?
もやしを買わないとどうしようもないほど、困窮しているように見えるの!?

と、ニコニコと聞いていたら、保健師さんは「よし、解決した」という顔で次の質問に移った。

帰宅して夫に話すと、かなり笑われてヒーヒー言っていたほど。


あの時の保健師さんにありがとうって言いたい。
育児で悩んでいるわたしに、真面目に答えてくれたことと、思いがけない返答でわたしたち家族を笑顔にしてくれたことを。
その晩はもやし料理が食卓に並んだ。


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