企画室【身体性の先を見る】 どんなコンサート?
2019年9月2日に下北沢ハーフ・ムーン・ホールにて行われるコンサート「身体の先を見る」に関連した、ちょっとしたコラム。バックナンバーはこちらから。
「身体性の先を見る」って?
わたなべ:今回のコンサート、身体性をテーマにしてるじゃない。
森下:発案者はゆきこちゃんだったよね。そういえば、タイトルの「身体性の先を見る」ってどういう意味?
わたなべ:「身体性の多様性」みたいなものを見たいなって。一言に「身体と音楽」、と言っても見方によって色々じゃない?超絶技巧で魅せるものだけじゃなくて、ティエリー・デ・メイ(Thierry De Mey)のようなコレオグラフィ、ダンスのようなもの、ベルンハルト・ラング(Bernhard Lang)がやっているような繰り返しの音楽、アンズリー・ブラック(Annesley Black)がやっている、スポーツ的なものとか。それに安野太郎さんがやっているようなゾンビ音楽とか、オンドレ・アダメックがやっているAirmachineシリーズとかも、身体≠非身体的な音楽として挙げることが出来る。そう考えると、実は「身体」って凄く幅広いテーマなんだよね。そして今回はこういうラインナップに。
アーロン・キャシディ:The Crutch of Memory (2004)
ユルク・フレイ:wen III (2009-2010)
リザ・リム:Invisibility (2009)
森下周子:新作初演
シモン・ステン=アナーセン:Study for String Instrument (2007)
(なかなかヘビーなプログラム...)
この中で、リザ・リムのチェロ独奏作品「Invisibility」、シモン・ステン=アナーセンの「Study for String Instrument」辺りが先に決まって、エヴァン・ジョンソンかアアロン・キャシディか、話しているうちに、アアロンに決まったんじゃなかったっけ?
森下:うーんちょっと違うかな。わたしはマコーマックを推してて、でもゆきこちゃんがやっぱりキャシディをやりたいっていう話になったかと。
わたなべ:そうだった。同世代のティモシー・マコーマック(Timothy McCormack)も候補に挙がってたね(最近、色んなところで名前を聞く作曲家!)。アアロン・キャシディは一度日本で取り上げたかったんだよね。
キャシディもリムも長く、ハダースフィールド大学(University of Huddersfield※)で教えてるじゃない。あそこって、私から見ると未知なる世界なんだよね。ハダスで博士までやった森下周子の新曲と共に、ハダス周辺の作曲家が「身体と音楽」について、どう向き合ってきたか、その辺りも聞けたら良いよなって、思ったの。
森下:正直このプログラムとタイトルを見て、こういうのが外側から見た「ハダースフィールド」なのか!ってちょっとビックリはしたよ。わたしは2009年からの所属だけど、「身体」をリサーチ・テーマにした人たちが集まってたのはその辺の数年間だけじゃないかなあ。ペーター・アブリンガー(Peter Ablinger)が入ったころからエクスペリメンタル系が盛んになってたし、電子音楽も良いスタジオがあって有名っていうのは聞くし。アアロン・キャシディのイメージが強いんだろうなあ、身体、ノーテーション、不確定性、複雑なリズム、、、。
※ハダースフィールド大学
ハダースフィールドはロンドンの北200キロに位置するイギリスの地方都市。大学ではCeReNeM(セレネム)という現代音楽研究所が構えられ、毎年行われる国際現代音楽祭では世界中から有名アンサンブルや作曲家が集う。
森下・わたなべのふたりが講師をつとめるProject PPPの三日間のコンポジションアカデミーは2019年は9月2〜4日に開催予定。オンナ作曲家の部屋vol.2、稲森安太己によるゲストレクチャー、Vln&Vcコンサート、グループディスカッションなど。9月2日(月)、下北沢ハーフ・ムーン・ホールにて行われるオープニングコンサート「身体の先を見る」では、中山加琳のバイオリンと、北嶋愛季のチェロで、アーロン・キャシディ、ユルク・フレイ、リザ・リム、シモン・ステン=アナーセン、そして森下周子の新作をお届けします。お得な前売りチケット(3000円)のお申込みはこちらから。