アイロンがけは「準備できている自分」の見える化だった
マクラメのレッスンの時は襟のあるシャツを着る。それが『先生』と呼ばれる立場に立つスイッチでもある。だからレッスンの翌日は、洗濯後のシャツにアイロンをかける。
シューッという衣擦れの音をさせながら、まずは右袖。袖口は丁寧に、しわなくカッチリと見えるようにしたい。ボタンが少し厄介だ。アイロンの向きを細かく変えて、先の尖ったところをあててしわを伸ばす。右袖が終わったら左袖、次に襟。襟もしっかりプレスしながらアイロンを当てる。
肩もしわが残らないように気をつける。顔に近いところだから、しわがあったら台無しだ。顔周りはきちんとした印象にしておきたい。背中にタックがあるシャツなら、タックから伸びる折り筋が左右対称になるように気をつける。生徒さんに背中を向けることもあるので、背中も抜かりなく仕上げたい。
アイロンがけは主婦の苦手な家事ワースト1位だと、何かの雑誌で読んだことがある。確かに夏場は汗だくになるし、そこそこ時間がかかるし、面倒だと思うのはよく分かる。だけど私はアイロンがけが好きだ。しわだらけでもその服は着られるが、そこにひと手間のアイロンをかければ、服に対する愛着だったり、この服を着るレッスンの時間への覚悟だったり、何か隠し味のようなものが追加される気がするのだ。
また、アイロンがけは、しわがのびる、という視覚的に明確な変化で私を支えてくれる。隅々までしわを伸ばしながら、この服を着ていく自分は全方位に準備が整っているとイメージできるようになる。
アイロンがけは、いわば験担ぎのようなものかもしれない。頼れるものには何でも頼ってでも、レッスンに参加される生徒さんに最大限の幸福な時間を過ごしてもらいたいのである。
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