YOASOBIチームへのパッケージ制作に関するインタビューと記事を書いた話
先日、CDショップ大賞に関連して、YOASOBIの制作チームにインタビューをする機会を頂きました。
おかげさまで、たくさんの方に読んで頂き、とても嬉しく思っています。長い内容にも関わらず、ありがたい限りです。
CDショップ大賞は、年に一度、CDショップの店員が素晴らしい作品に対して賞を授与するものですが、第14回CDショップ大賞2022では、YOASOBIが『THE BOOK』『THE BOOK 2』で、特別賞と入賞を受賞しました。
この2作品の完全生産限定盤は、曲ごとに異なるデザインが施された歌詞カードを、購入者がひとつずつバインダー形式のジャケットに収納し、本のように楽しむことができます。
このCDジャケットを作るに至った経緯や、デジタルのイメージがあるYOASOBIがパッケージ商品をリリースすることについて、ソニー・ミュージックエンタテインメントのYOASOBIチームの3名の方にお話を伺いました。
詳細は、記事を読んで頂きたいので、ここでは私の感想を中心に書いていきたいと思います。インタビュー記事は、こちらからどうそ。
『THE BOOK』『THE BOOK2』の完全生産限定盤は、これCD?と聞きたくなるようなデザインです。私は、CD全盛期に青春時代を過ごしていますので、ジャケットやパッケージデザインに工夫を凝らしたものは、たくさん目にしてきましたが、この2作品のこだわり具合は別格でした。
2作品とも、バインダー型のジャケットと、歌詞の描かれる世界に合わせた紙質やフォントの歌詞カードが、セットになっています。購入者は、歌詞カードを自らバインダーに収納して、パッケージを完成させていきます。作品を完成させていくという作業は、ファンからすると、CDを介してアーティストと繋がっていくようにも感じられるかもしれません。
税込4,950円という、通常のCDと比較すれば、決して安くない商品を買うことは、YOASOBIのコアファン層である10代には、ひとつの思い出になっていると思います。おそらく、自分の心象を歌詞に重ねて楽曲を聴いているであろう彼らが、自分の想いも重ねた歌詞カードを、自らの手でファイリングしてく行為は、素敵だなと思います。
YOASOBIの制作チームで、A&R、 ディレクターとしても携わっている、ソニー・ミュージックエンタテインメント山本秀哉さんがお話くださった、以下の内容が、私はとても印象に残っています。
90年代後半からゼロ年代前半くらいまでは、ミリオンセールスのCDがたくさんあり、私自身も、なけなしのお小遣いやバイト代をCD購入に費やしてきました。当時、自分的に最高に趣味の良いCDを並べることで、悦に入っていたのを覚えています。
時代は移り変わり、CDの売り上げ枚数が、かなり減少している状況で、CDは終わったという言葉を、耳にタコができるくらい聞きます。特に音楽に関わる、音楽との距離が近い仕事などをしていると、その減り方などを肌で感じることが多いからか、つい言ってしまうことかもしれません。
だからこそ、デジタルリリースをしていてかつ、大人気のアーティストが、フィジカル(いわるCDなどのパッケージ商品のことを我々はそう呼びます)を出す、と最初に耳にした時には、なぜだ?と思いましたし、こだわったものを作ったのも、すごい!と思うと共に、どうしてだろうか?とも感じました。
リリースに関しては、YOASOBIの制作チームのソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平さんは、このようにお話してくださいました。
手に取ってもらえるものを…と考えていたというのも、正直驚きましたし、またそれをカタチにした時に、ここまでの美しいものが仕上がるということにも驚きました。
今回のお話を伺っていると、パッケージ商品を作るからには、手にとって思い出になるような、特別感のあるようなものを作りたいということが、ひしひしと伝わってきました。
ファン層の年齢からしたら、初めて買うCDかもしれない、という言葉を聞くと、私自身も自分が初めて買ったCDのことを思い出したり、実家で眠っている数多のCDのことを思い浮かべました。
なんだか、自分が買いそろえてきた作品が、とても愛おしく感じ、抱きしめたくなるような、そんな気持ちすらしました。
そして、"良いものを作る"という、シンプルかつ大切なことに、改めて気付かされたように感じます。全てのことが、"簡単に、手軽に、早く、安く" が、良しとされていて、それが過剰に求められている今の風潮から、一度足を止めて考え直すような気持ちになりました。
ものを大切にする。そして、作ったひとたちの想いも感じながら、大切に保管しておくことって、大事なことですね。
YOASOBIの制作チームのソニー・ミュージックエンタテインメントの吉野あさみさんは、作品リリース時にSNSをチェックすると、ファンが買った作品を部屋に飾り、その写真を撮って投稿している様子を、目にしたそうです。また、以下のようなお話をしてくださいました。
好きなアーティストだから、推しだから、モノとしても所有しておきたい。手触りがあり、視界にも入ってくるからこそ、CDなどのパッケージ商品は、自分自身の生活を彩ってくれる存在になることが、分かりました。
今回のインタビューでは、パッケージ商品の在り方、今後の方向性のひとつを見たように感じました。
売り上げ枚数が、20年くらい前に戻ることは、ほぼ無いと思いますが、好きなアーティストの作品を大切にしたい気持ちは、いつの時代でも共通しているように思います。むしろ昔よりも、モノを大切にしているように感じます。
もしかしたら今後は、美しいパッケージがCDショップを彩るかもしれませんし、”何枚売れたか?” ではない、違う指標でのパッケージ商品の価値基準ができるかもしれないと感じています。
記事では、もっと詳しくYOASOBIのパッケージリリースまでのストーリーを読んで頂けます。ぜひチェックしてみてください。
最後になりましたが、ソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平さん、山本秀哉さん、吉野あさみさん、そしてミュージックソムリエ協会、CDショップ大賞事務局長の髙安紗やかさん、ありがとうございました。