インプットする奈良|鹿猿狐ビルヂングでしたい5つのこと #うつたび
"旅でもっとうつわが好きになる" #うつたび 。今回は奈良のニューカマー「鹿猿狐ビルヂング」を堪能してきました!
これまでの窯元さんや産地を巡る旅とはちょっと趣が違いますが、広く「ものづくり」「工芸」を知るという意味ではとっても味わい深いスポットでした。ものづくりの世界の先端を野心的に駆け抜ける『中川政七商店』が昨年作られた複合施設「鹿猿狐ビルヂング」。
「見に行ったけどいつもの中川政七商店のショップチラ見して終わっちゃた」なんて残念な話も聞いたので声を大にして言いたい。ここはいつものお買い物する”だけじゃない”スポットなんです。
ご案内いただいたのは前回の赤膚焼回に続き中川政七商店のおかもとさん。よろしくお願いします!
① 『時蔵』で100年先を見据えたものづくりのエネルギーを感じる
まず今回一番ぐっときたのが『時蔵』。中川政七商店300年の歴史をアーカイブしたギャラリーです。ものづくりの歴史を追体験できるタペストリーもわかりやすく、読むだけでもなかなかに見応えあり。
一番グッときたのは、こちらの桐箱に詰められたアーカイブ。過去300年分のものづくりの軌跡を集めたのもすごいんですが、さらに未来100年分の桐箱もすでにスペースを確保しているんです…!思わず「え!もうこの桐棚100年分用意してあるんですか」って口からこぼれたくらい。びっくりしました。これから100年分毎年記録していくんだ、それくらいものづくりを発展させ続けていくんだという熱意に満ちている。ものづくりを続けていくという意思。この気骨あるところが中川政七商店さんの好きなところです…。
うつわは、若い人の間でちょっとしたブームもあり追い風を感じる一方、産地を訪れると職人さんの後継者がいないなど業界全体としてはちょっと寂しい状況にもあり。そんな中、100年先を見据えてものづくりの世界をリードする中川政七商店さんのパワーには元気をもらえます。
こんなに古い資料が細かく残ってるのほんとにすごいです。私なんて学生の頃はおろか過去の自分の撮影データすら取っておいてあるかあやしいのに。いや比べてる場合ではないですね。
アーカイブが残っていることはとっても大事で、新しいものをつくる時にも資料として学びが深いし、ヒントの宝庫ですよね。うつわも釉薬の実験、土の実験など過去に学ぶことは多く、新しいものづくりのためにも過去の歴史こそ大切。。。
「これ何かわかりますか?」とおかもとさん。『時蔵』の床は、入った瞬間から「よくある板じゃないな〜」とは思っていたのですが、なんと9cm角の合板を小口が見えるように敷き詰めてるんですって!「長い歴史も小さな積み重ねから」という意図による意匠だそうで社員の方も手伝われたとか。言われなければ気づかないかもしれませんが、こういった細かいところまでこだわり、スタッフみんなで手を加え自分ごと化していくのって素敵ですね。
『時蔵』見応えあるんですが、お話を伺って初めて気付く部分も多いのでツアーで周るのが良いのではと思いました!ガイドツアーの後『茶論』でお茶ができるコースがあるそうなので、せっかくならこれ頼むといいかも。
『時蔵』の横にはもう一つのギャラリー『布蔵』も。今でこそ多種多様な工芸品を生み出す中川政七商店さんですが、創業当初の商いは奈良晒。
そんな「麻」に関する道具や機織り機など展示されてるのですが、予約すれば実際に機織り体験もできるんですって!
この「時蔵」「布蔵」があるのはかつて中川家の住まい兼商いの場でもあった築130年の町家。職住一体の古き町屋を見学することそのものも、建築好きにはぐっとくるものがあります。
さて、じっくりギャラリーを堪能したら改めてショップの方へレッツゴー。
②隠れミッキーならぬ隠れ政七紋を探せ
中川政七商店の商品がずらっと並ぶのはもちろん、私が「お?」と思ったのはこのコーナー。
前回訪れた赤膚焼の茶道具がこうして並べられていたり
奈良漆のブローチや帯留めも。おなじみのプロダクト以外にも、奈良の工芸品たちが並んでいるところも心惹かれるものがありますね。写真には撮りそびれたんですが、奈良の個人作家さんの作品もありました。
奈良にゆかりのある伝統工芸品から奈良でものづくりする個人の作家さんまで。幅広く奈良の工芸に触れて手に入れることができるのが素敵。
「ところでこれ何かわかりますか?」とおかもとさん'sクイズがここでも登場。ドアップに撮影しているのでわかりにくいんですが店舗の壁なんですこれ。独特の文様がついてるんですが、これなんと中川政七の「七」と工芸の「工」が連なった「政七紋」という柄なんだそうです。まさか壁にまで敷き詰めているとは。
おなじみの人気商品「かや織掛けふきん」にも政七紋ありました。皆さんも隠れミッキーならぬ隠れ「政七紋」探してみてくださいね。
ちょっと写真撮り忘れたんですが、ショップ近くにさりげなく展示されてるアート作品なども、めちゃくちゃ高価非常に価値のあるものばかりなので軽くプチ美術館巡りみたいな気分でまわるのもいいかも。
③おっきなおあげが豪快!『きつね (㐂つね)』でランチ
奈良って京都や大阪に比べると圧倒的に飲食店が少ない気がする。そんな商売っけの少ない街 奈良に新しい飲食店ができたぞ〜!と嬉しいお知らせです。ということで、sioの鳥羽シェフが手がける『きつね (㐂つね)』でランチをいただきました。こちらは鹿猿狐ビルヂング1Fに入っています。
こちらでも小耳に挟んでた「奈良は日本酒が美味しい」という噂通り、一杯いただいた日本酒がおいしくて。
最後に出てくるアイス最中も狐の焼印はいっててキュートでした。
④おあつらえサービスでオリジナルをつくる
おなかいっぱいになったら次のスポットを散策。『旧 遊中川本店』でハンカチ「motta」に刺繍をオーダーしました。おあつらえサービス他にも色々ありますが、ハンカチは一番気軽に取り入れやすいしお土産にぴったり。
刺繍糸の色も、フォントもたくさん種類があるので選ぶのが楽しくて楽しくてついつい時間が過ぎていきます。
出来上がりはこんな感じ!ほんとにかわいい。この鹿マークは奈良本店限定。せっかくきたからには刺繍したいってなっちゃいますよね。
こちらの店舗も先程のギャラリーと同じく築130年の町屋の一部をリノベしたということで古い電話ボックスが試着室になってたり、
1925年パリ万博の賞状と当時のデザインのハンカチが額装されていたり、お買い物だけでなくそこここに歴史が残っているのを発見するのも楽しみです。
⑤茶論でカジュアルに茶の湯の空気を感じる
最後は「茶論 奈良町店」へ。と思ったんですが満席であえなく今回はお店の中をチラ見するのみ。テイクアウトの飲み物もありますが、ここはやっぱり茶道体験に行ってみたいですよね。次回はきっと予約してお茶を嗜んでみたい。
中川政七商店さんがもともと茶道具を扱ってきた経緯もあると思いますが、店舗のそこかしこに茶の湯の気配がさりげなく感じられました。うつわの歴史を紐解くと避けては通れない茶の湯の世界。何しろ茶道具で陶芸は発展してきたといっても過言ではないので、私個人的にはいつか学びたいな、でもなかなか手が出せないなと思っている今日この頃。気軽に体験できて、なおかつ景色やしつらえも素敵なスポットが身近にある奈良の皆さん羨ましいです。
『茶論』に行けない代わりに徒歩数分のところにある老舗和菓子店『樫舎(かしや)』へ。『茶論』でもお茶菓子として出されているそうで、とっても上品でおいしかったです。
***
おまけ:東大寺を眺めてコワーキング
最後に、もし奈良に長期滞在やお仕事をかねてワーケーションに行かれる方に朗報です。「鹿猿狐ビルヂング」の3Fにはコワーキングスペース『JIRIN』が。スポット的にも利用可能だそうですよ。
BACH 幅允孝さんが選書した本棚もあるしついつい長居しちゃいそう。
ここは「N.PARK PROJECT」という奈良のスモールビジネスを応援し奈良を元気にする経営者・クリエーター支援を行う取り組みの一環として作られた施設だそうです。中川政七商店さんが自身のプロダクトだけでなく、広く工芸を、奈良をエンパワーメントしようという心意気を感じてジーンとしました。
自分はこんな大きな活動とてもできないわけですが、このnoteをきっかけに産地に行ってみようとか、うつわのこともっと知って楽しみが増えてくれたら嬉しいなと思ってます。ささやかではありますがものづくりの歴史の中のほんのちょびっとだけでも力になれてたら嬉しいな。
そんなこと思った1日でした。
サポートありがとうございます!いただいたサポートで新しい食器を買って、みなさんが「読んでよかった」と思ってもらえるようなnote書きたいです🌿