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九谷焼の産地は日本の北欧だった| #うつたび 九谷焼編
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」ならぬ、飛行機を降りると雷雨が吹き荒れていた。それが今回訪れた石川県小松市。九谷焼の産地です。
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九谷焼とは?
みなさんは九谷焼ご存知ですか?緑、黄、赤、紫、紺青の五彩の上絵付けが施された磁気のうつわです。緻密かつ豪華絢爛な紋様と色彩感覚が特徴で、石川県で作られている伝統工芸のうつわです。
そんな九谷焼をめぐる今回の旅は〈きほんのうつわ〉スタッフのikariさん、misakiさんと一緒に緒方康浩さんにご案内いただきました。
昨日・今日は #きほんのうつわ の碇さん・菅野さん・隅藏さんが石川県へ。
— 緒方康浩🌾|九谷餐会のひと (@yasuhiro_oga89) December 5, 2021
九谷焼の産地を窯元や工房を中心に巡って、他産地との違いを感じてもらいました☺️✨
今日の午後は山中漆器の産地にもご案内。土日だけど色々回れて良かった🚗💨@ikalii @yukiko130 @msk_dot @cocoronedays pic.twitter.com/0pcTT2MgiN
暗い北陸の地でこそ輝く極彩色の九谷焼
東京で生まれ育った身としては、晴天の羽田から飛行機に乗って小松空港を降りた瞬間に雷雨にみまわれて「ここでは暮らせない…」と心折れたのが第一印象でした(小松にお住まいの皆さん本当にごめんなさい)。実際この日に限らず天気が変わりやすく曇天や雨が多いそうです。一見お天気に恵まれないことは残念なようにも感じますが、むしろそんな気候風土だからこそ九谷焼が発展したのでは…?
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昔何かの本で読んだのですが、北欧って住まいのブランドが充実しているイメージですよね。アラビアやイッタラといったカラフルでかわいい食器にポール・ヘニングセンやアルヴァ・アアルトなど著名なデザイナーの家具も人気。これは北欧の長く暗い冬を、少しでも楽しく過ごすための工夫だとか。おうちの中をきらびやかな照明やカラフルな食器で彩ることで薄暗い天候でも楽しく過ごせるようにと発展したと聞きました。
これってもしかして九谷焼と似てる…?
暗く寒い北陸の天候の中、薄暗い家の中で極彩色と金彩銀彩が輝く九谷焼はさぞかし明るくキラキラ見えたんじゃないでしょうか。
もちろん九谷焼は輸出されたり当初は庶民が手にするようなうつわではなかったでしょうが、このギラっと光るインパクトある色彩感覚は北陸の作り手だからこそ極められた美意識だったのかなあなんて思ったり。これも産地を訪れてはじめて「なるほど」と納得したことの一つです。
華やかな色や柄を日常使いする
緒方さんのご案内で訪れた錦山窯さん。100年続く九谷焼の窯元さんです。四代目の吉田 幸央さんにお話を伺うことができました。
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今は土っぽいものが流行ってるでしょ。でもね、僕たちにとっては絵付けのうつわっていうのは子供の頃から食卓に並んでたし違和感ないんだよ。全然使いにくいなんて思ったことないんだよね。どんなに華やかな絵柄でも上に料理が乗ったらまた全然違って見えるしね。
わかる!わかる200%!!と思った吉田 幸央さんのお話。もう聞いてる最中から頷きまくってしまったのですが、なぜか絵付けって難しい合わせにくい使いづらいという印象を持たれてますよね。私も上絵付けはもちろんさまざまな柄の食器を使いますが柄には柄の良さがある。料理を盛り上げてくれる底力がある。実際にハイセンスで豪華な九谷焼を作り続ける幸央さんも同じこと思ってたんだなと思い嬉しくなりました。
ハイセンスなギャラリー「嘸旦 MUTAN」
錦山窯さんは「嘸旦 MUTAN」というギャラリースペースを作られていてこれがまたかっこいいの。「八雲茶寮」や「HIGASHIYA」で有名な緒方慎一郎さんが手がけられたそうです。納得。
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ギャラリーでは展示はもちろんさまざまなイベントも開催。ここでシェフを読んで美しい九谷焼に盛り付けたコース料理を食べられれる[九谷餐会]も催されているそうです。素敵すぎる。
余白を埋め尽くす密な美意識
伝統工芸というと堅苦しいイメージもあるかもしれませんが、とにかく攻めの姿勢でハイセンスを追求し続ける姿勢がとてもかっこよかったです。3代目の吉田美統さんは人間国宝ですし(すごい)、4代目の幸夫さんも数々の賞はもちろん日本陶芸美術協会常任幹事や金沢美術工芸大学の講師を務めるなど、ご自分の作品だけでなく広く九谷焼そのものの後継を見据える意思を感じました。いつの時代も先頭を走る人は攻めてますね。
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工房見学をしつつ幸夫さんがぽろっと話していたことにもまた九谷焼のもつ土地柄を感じることが。それは「九谷焼の職人さんたちはついつい絵柄を密に書き込んでしまう」ということ。確かにその後訪れた有田焼ともまた違う、やたらギッチギチに余白を埋め尽くすように書き込む感じを九谷焼から感じ取ってはいたのです。もしかしたらそのミチミチに書き込む感じもこの暗い北陸の地でコツコツ取り組むお土地柄と関係しているのかなあなんてね。。。
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普段何気なく使っていた九谷焼ですが、産地を訪れて「ああ、この風土からできてるんだ」って深く感じたのが今回の旅で私にとっては収穫でした。#うつたび 九谷焼編まだまだ次回に続きます!
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📍旅のメモ
今回訪れたギャラリーは事前予約制ですがどなたでも見学可能だそうです。イベントの時に訪れるのが良さそう。私もいつかまた食イベントの時にいきたいなあ。
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