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生を追え 志に進め


 今回はバンド語り&楽曲レビュー。知る人ぞ知る茨城のバンドCOCK ROACHの楽曲について、個人的なランキング形式で紹介させていただきたい。SNSでは衝動的に書きがちで上手くまとまらないので、noteで思い入れあるこのバンドについて長尺で記事にしたいと思った次第。
 正直トップ10を選ぶのも困難なぐらい粒揃いな曲ばかりなのだが、同じく大好きなTHE BACK HORNと比較すれば曲数はまだ多くないのでどうにか選べそうということで楽しみながらやっていきたい(勿論バックホーンについても後で何かしら書きたい所存)。


 国内のフェスやライブハウスに積極的に出演するバンドでもなければ、解散期間が長く、一般的に広く認知されているバンドという訳でもないので、存在を認知されている方がいれば泣きながら握手を求めたいぐらいである。

 私とCOCK ROACHの邂逅については以前の記事「静かなる虫達の遭遇」に書き綴ったのでここでは省略させていただく。



簡単にCOCK ROACHについて紹介。

茨城県水戸市にて1996年に結成。
2005年に解散。2018年に再結成。

メンバー※現体制
遠藤仁平(唄)、本田祐也(四弦)、本多直樹(太鼓)、海老沢宏克(六弦)、浪川芳和(六弦)

音楽性
オルタナティブロックを基調とし、童謡やフォークといった日本らしくどこか不穏なメロディにディストーションの効いたギターと和楽器のように味わい深いベースが特徴的。生と死をテーマとした壮大で重みのある歌詞が聴くものに強烈なインパクトを与える。


 ライブパフォーマンスにおいては昔の映像を見る限り、メンバー全員黒装束に身を包み、長髪、坊主、髭、裸足などの極端な風貌であり、異質な雰囲気を纏いながらも(遠藤さんは仙人、本田さんは僧侶とかにしか見えない)エネルギー溢れるライブを行っていた。

 そんな濃厚過ぎる程に濃厚な世界観でお送りするCOCK ROACHの楽曲個人的トップ10を発表していこう。


10位「青い砂に舞う君の髪」

 本当に歌詞が素晴らしい。まあCOCK ROACHは全曲歌詞が素晴らしいのだけれど。とりわけこの曲は復活後リリースの4th「Mother」に収録されている曲で、活動初期から死を見つめ、貪欲なまでに生を追う姿を経てきた彼らだからこそ書ける詞ではないかと思う。

焚火の火を背景に うっすらと笑った
青い砂に舞う君の髪 それでも人は生く
命を紡ぐ為 貴方から貰い受けし命を
唯々、燃やす為
唯々、澄ます為
綺麗な水に還帰れるまで

青い砂に舞う君の髪/COCK ROACH




9位「雪風の虫」

 初期のデモ音源集「蜚蠊誕生史」に収録され、サブスクでの配信は無い模様。私はタワレコオンラインで取り寄せ、擦り切れる程聴いた。この頃までは和風なハードコアパンクみたいな曲調であり、後の精神世界系の曲達よりかは取っ付きやすい印象(当社比)。中でもこの雪風の虫はパンキッシュでテンポも速いながらメロディアスかつ生命力を感じる曲でコックローチの中ではすんなりと好きになった曲。



8位「記憶の水殿」

 3rd「青く丸い星に生まれて」に収録の8分超え長編大作。海底に沈んだ都市の中を揺蕩うイメージ。ポエトリーパートを挟み、美しくも鬼気迫る楽曲構成は見事。人を寄せ付けない孤高で孤独な詞の世界観、透き通るように煌めく轟音の大洪水。クリーンギターの透明感に水面の揺れや水流のせせらぎを感じられてたまらなく良い。聴けばこの曲が解散前最後のアルバムの核となっているのも頷ける。



7位「花と瓦礫」

 この曲も記憶の水殿同様、長尺の複数部構成の曲。消え入りそうなピアノの旋律に始まり、呟くような歌パートが少し長めに続く。そしてアコギとストリングスが入り、一斉に花開くかのように全てのバンドサウンドが鳴り、最高潮を迎える。退廃的で美しい一つの絵を見ているような気分。恥ずかしながらエンバーミングという言葉の意味はこの曲で初めて知った。





6位「食人欲求者の謝肉祭〜カニバリズム・ン・カーニバル〜」


 もうタイトルからして衝撃である。初めて聴いた時、全ての異様さに狂いかけた。禁忌の領域に余裕で踏み込んだ歌詞、インダストリアル要素を仄かに感じる打ち込みとクセになる中毒まっしぐらなギターリフとベースライン、もう血湧き肉躍るしかない狂気の世界全開でCOCK ROACHの代名詞と言っても過言ではない。理性や尊厳などのリミッターが解除されている。復活後のライブで演奏されたが、あのサビのシンガロングで全身の細胞が狂喜乱舞したのは言うまでもなく、会場のお客さんも皆どうかしてて最高だった。



5位「赤道歩行」

 シンプルながらも遠藤仁平氏の歌と言葉に酔いしれる曲。初めて買った1st「虫の夢死と無死の虫」で唯一クセが無いというか、心に染み入るバラードなのだが、若干二十歳の人間が一体どんな人生を送ればそんな歌詞を書けるのだろうと思わずにはいられない美しさが詰まっている。桜咲く春先の寒い日に季節外れの雪が降ったことがあり、幻想的で寂寞を感じるこの曲のことを真っ先に思い出しては一人ウォークマンの再生ボタンを押したのであった。

ゆらり 舞い落ちる桜と
また降る雪が交わる
二度と戻らない僕と
また来る春が…
すれ違う

赤道歩行/COCK ROACH



4位「顔」

 これも初めて聴いた時、ジャパニーズホラー直系の気色悪さで呪われるかと思った。童歌のような不穏なメロディに重く暗く蠢くようなサウンドが乗っかり、どう足掻いても気味の悪さが先行してくる。それでも彼らにしか生み出せない独特の世界に沼ってもう抜け出せなくなるのである。サビへの流れは素晴らしく、蓄えられた熱を最大限まで放出する曲構成はホントに素晴らしい。何度も聴くたびにじわじわと好きになり、私の中では4位まで上り詰めた。ほらまた歯が抜けた…。抜けた…。抜けた…。



ランキング番外編「コネチカール」

 トップ3に入る前に番外編としてデモ音源集収録のコネチカールを。noteのクリエイター名にまでしてるくせにランキング外なんかい!って突っ込まれそうだけど、やはり大好きな曲なので紹介しておく。
 悪夢を見ているかのような煙たさとワルツ調のダンサンブルな雰囲気が中毒性高い一曲。音割れしまくりなのが逆に破滅的で印象強く残ってるのが功を奏してて良いなと。そもそもコネチカールって何?って話だけど遠藤氏の造語のようで。残念ながらサブスクも音源も今は出回っていないので私は今後も化石ウォークマンでエンドレスリピートしたい所存。



3位「死の王国」

 脳汁と鳥肌が止まらないディストピア滅亡系アンセム。燃え盛る太古の国で起こる血生臭い戦争の風景が浮かんでくるので、誰かAIクリエイターの方に映像化してもらってMVとして世に出して欲しいなんて思ったりする。パーカッションなんかも入り、エスニックで神々しい雰囲気もあって今の時代こんな曲書くバンドはどこにも存在しないだろう。彼らだけが辿り着いた唯一無二の到達点。

貪り勝る王の微笑み
返り血を浴びても瞬きもせずに
戦士が失った足の針と
戦士がひきずる臓物の糸で
一つの大地に国境を縫ってゆく
万物の全てをそっとそっと忘れて

死の王国/COCK ROACH



2位「触覚」

 知ってる人からすれば、この曲が2位ってのは少々意外に思われるかもしれないが個人的な思い入れから1位にしてもいいぐらいの勢いである。1stを買ってから阿保みたいにリピートし続けた曲。月夜を思わせる静かなギターのイントロから少しずつ熱を帯び、所々ドラムで区切りながらサビへ進む。曲構成も見事だが、虫が羽ばたくようなベース音と三味線直系のギターがもう他のバンドからは得られないオリジナリティ。



1位「鸞弥栄」

 悩みに悩んだけれど数ある名曲の中で1位に選ばさせてもらったのは鸞弥栄(ランヒェイ)。生まれ死にゆく自然の摂理、永遠ではない生きとし生けるものの一生を希望の象徴として描いた空想上の鳥の曲。COCK ROACHのファンの方々、おそらくこの曲を葬式で流して欲しいと望んでる方が多いのではないだろうか(私もそうです)。生命力に溢れた屈指の名曲であり、おどろおどろしさを煮詰めたような2nd「赤き生命欲」のラストを飾るに相応しい闇を照らす光の曲。
 昨年の夏に行われた「静かなる虫達の叫び」ではアンコールの最後に演奏され、皆で大合唱した夜を忘れはしない。


 フルアルバム4枚、シングル2枚、デモ音源1枚、オムニバスで数曲と多くはない曲数だが、そのどれもが真似できない濃密な世界を構築しており、燦然たる輝きを放っている。
 音楽を好きになり、TSUTAYAに足繁く通うことがなければ辿り着かなかった世界なのだと考えると、心の底から彼らの音楽に出会えたことを感謝したい。
 解散からまさかの再結成を果たし、一生残る爪痕の如きライブを3度も見れたことが嬉しかった。しかも内2回はTHE BACK HORNも含めた対バンで、10代の頃からの夢が叶った瞬間だった。

MUCC企画「えん8」
COCK ROACH企画「静かなる虫達の叫び」
ワンマン企画「死の王国-花と瓦礫の物語-」


 

 勝手に神格化し過ぎて実在しないものとばかり思っていたが、COCK ROACHはちゃんと実在しており、浮世離れした雰囲気のある遠藤仁平さんはMCで喋ると結構面白くて、ますます魅力的な方だと感じた。

 しかし、昨年末に遠藤さんが膵神経内分泌腫瘍という珍しい病気に罹ったとの報告もあり、一ファンとして何より身体を最優先で治療に専念していただきたい限りである。
 バンドとして最後となるであろう5枚目のアルバムを作成中ということだが、COCK ROACHの音楽は表現者・遠藤仁平の詞ありきで紡がれてゆくもの。この局面で一体どんなものが生み出されるのか。終焉として見せる景色がどんなものか、渇望しながら何年でも待ちたい。

 黒く、しぶとく、蠢く虫のように。また我々蜚蠊市民の前に姿を見せてくれる日を信じます。

 dead startの詞にある

「生を追え 志に進め」


 の精神で日々邁進して参ります。

 大好き故に暑苦しいほど長々と語ってしまいましたが、そろそろ寝ます。読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。

 おやすみなさい。

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