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日食なつこ/宇宙友泳/エリア不変/盛岡CLUB CHANGE WAVE



 先月のAge Factoryに続いて盛岡へ。今回はかなり久しぶりの日食なつこ氏のライブ。


 同じ岩手県出身であることを誇らしく思える程に彼女は素晴らしいアーティストだと常々感じている。最近ではTHE FIRST TAKEに水流のロックで登場し、ようやく時代が追いついたんだなと謎に古参ぶってしまった。


 日食なつこ氏のライブを観るのはいつぶりだろう。もしかしたらMOROHAとの対バンで見た2019年が最後かな。あの日もいい夜だったけど、コロナ禍を挟んで数年経ってるので、聴きたい曲も増えたし、どんなライブになるか非常に楽しみ。


 この3DAYSは彼女のホームである盛岡club change系列のライブハウス3箇所をそれぞれ異なるセットで回る企画。全公演ソールドしており、私はその最終日のバンドセットの公演に来たのだが、フロアは老若男女問わず沢山の人で埋め尽くされていた。日食なつこの音楽がどの年代にも満遍なく刺さっていることを感じた。

 ライブの方は言わずもがな圧巻だった。基本的には彼女の歌とピアノがメインで、komaki氏のドラムが入る構成が多いのだが、今回はベースとギターも混ざり、分厚い音となって凄まじい程にロックしていた。

 独特の語感で日記や物語のような世界を紡ぐ彼女の音楽は躍動感に満ちている。

 オープニングナンバーは致死量の自由。軽快且つアップテンポに乗せながら皮肉めいたリリックで自由を歌う日食節全開な曲だ。さらに空中裁判うつろぶねと勢いを加速させてゆく。安直な希望や夢に縋らず、自らを問い正すような葛藤があるのが彼女の曲に惹かれる理由の一つかもしれない。
 meridianでしっとり聴かせた後、フェーズを「エリア未来」へ。このゾーンは未発表曲のみを敢行するツアーのちょっとした再現であり、全てが新曲でアルファベット1文字で冠された曲達が披露された。もう全曲良かった。初見でも充分に爪痕を残す威力と楽曲の幅広さを感じさせてくれた。特に一族を根絶やしにする蛇の祟り神の伝承を歌った曲、あの蜷局を巻くようなおどろおどろしさが琴線どストライクだった。


 MCではドラムkomaki氏とのゆるいトークで和ませてくれた。日食なつこ氏自身を育てたホームである岩手・盛岡への想いを語り、今回の企画では現在の日食なつこが持てる全てを余すことなく置いていきたいと話していた。

 そしてライブもラストスパートへと雪崩れ込む。ずっとライブで聴きたいと願っていた音楽のすゝめ。大名曲。正解のない音楽というものを教訓形式で歌にした何ともストレートで芯の強い彼女らしい曲。世間の流行り廃りに流されることなく、誰かの支えや救いとなる大木であってくれ。もうほんとカッコ良過ぎるよ。

失われた時間は2度と来ない
また会える約束もできやしない
すぐに朝が来て 現実が来て
夢の冷める温度を知っちゃって
濁流のような渦の中
押し流れそうな記憶を
腕一本で 指一本で
保ち続けるお前に幸あれ
短い 短い 短い夢を
朝が来れば幻と化す夢を
後先もなくかき集めてしまう
馬鹿な僕らでいようぜ

音楽のすゝめ/日食なつこ


 そして本編ラストは日食なつこ流ブチ上げロックナンバー、ログマロープで締め。イントロで疾走するピアノとドラムのビートで既に持っていかれる。そして鋼の心臓というワードのシンガロングで熱く昂る。代表曲は水流のロックかもしれないが、キラーチューンなら間違いなくこれだろう。矢印ばっかの世界を生意気に歩こうぜ。



 ライブ本編が終了。鳴り止まない拍手のアンコール。普段はアンコールは受け付けていないそうだが、今夜は特別にと、ピアノと歌のみで披露された10円ガム。初期の曲で、若き日の日食なつこが作った曲をこの日、この瞬間に奏でられたことに意味を感じながらエリア不変は閉幕。


 今やツアーでホールを埋めるクラスのアーティストであるが、こういう原点を忘れない企画をやってくれる粋な計らいというか熱い想いに心底嬉しくなる。


 人生を歌う日食なつこの曲に影響を受けつつも、その凜とした佇まいに宿るブレない芯の強さや詞として彼女が紡いできた言葉たちを刻み込んで今後も生きていきたい所存です。

 おやすみなさい。


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