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廃墟のソファ


三連休ど真ん中。精神的安定の日。

 ありがたいことにこの3日とも休みである私は特にすることもなく、全身全霊の「何もしない」をしている。先週まで予定ぎっしりで休日が潰れていたため、待ち望んだ瞬間とも言える。

 ここでふと昼寝前に聴いていたAkeboshiの曲で色々とノスタルジーに耽ってしまったので書こうと思う。

Akeboshiメジャー1stアルバム

 Akeboshiはシンガーソングライターであり、フォークを基礎にアイリッシュミュージックやエレクトロ要素の入った音楽性が特徴。
 有名なタイアップはやはり初期NARUTOのエンディング「Wind」ではないだろうか。イントロの悲しげなピアノに続く笛の音が心地良く、私はオタク脳のため再不斬と白の曲にしか聴こえなくなり、涙不可避の曲なのだ。

 今日、勝手ながらに紹介するのはそんなWindと同じアルバムに収録されている「廃墟のソファ」。
 この曲は異国情緒たっぷりで歌詞に合わせて聴いていると鮮明なまでに浮かぶその情景に想いを馳せてしまう。

“ここは雨の町 かつては栄えた伝説の港町
今では廃墟が立ち並び 小銭をせがむ者が溢れ”

 そんな一節から入るこの曲の特色は哀愁溢れるティンホイッスルの音だろう。ピアノ、アコギと掛け合わせシンプルながらも美しい旋律が奏でられ、アイリッシュな雰囲気を引き立てる。


 「廃墟のソファ」というワード自体はこの曲の詞に登場しないが、それでもこのタイトルがしっくり来る。
 かつて隆盛を誇った港町の廃墟。破れたソファに腰掛け、ぼんやり虚空を見つめながらその場所での知らない人々の生活感や活気、思い出に触れ、同時にそれらが失われてしまった残酷な現実を憂いている。そんな様子が思い浮かぶ(私の場合は)。

 実際、私は廃墟巡りが好きって訳ではないが、そういった状態の場所を訪れると、住んでいた訳でもないのにかつてそこに在った暮らしの風景を想像し、強いノスタルジーに駆られる。誰しもが抱きそうなそんな感情をこの曲は呼び起こしてくれる。

 そしてこの曲で一番好きな詞の一節は、

“聞きたい曲も見つからず 向かった先は町外れのカフェ
スープの匂いに ケルトの音色に 冷えた僕の心は溶け出す
丸みを帯びたハープ弾きの老人の話に何度救われるのだろう”

 この部分。漠然と何がしたい訳でもない。行先も分からずどうしようもない。それでも廃れたこの町で人の温かさに触れ、他愛もない話に心救われる…。
 八方塞がりな私自身の状況と勝手にリンクさせてしまっているのかもしれないが、この何気ない暮らしのワンシーンを切り取った歌詞に全て詰まっている気がした。

 気が狂う程の郷愁に駆られ、どうしようもなくなったら聴いてみて欲しい一曲。日本人の感性なのか、こういった情景マシマシの切ない曲に弱い。

 そして日常で見慣れた景色の中にひっそりと佇む廃墟と化した家やアパート、店舗、ホテルなんかにもそんなノスタルジーが漂っているのかもしれないとか思ったりした。
 ホラー系YouTuberのように実際赴くことは無いだろうけど…。

 以上、思いつくままにAkeboshi/廃墟のソファの紹介でした。

 それでは、おやすみなさい。

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