
歌になんない日々はそれはそれでOK
最近は何かに追いかけられる夢をよく見る。逃げ続けて最終的には逃走に成功してはいるようだけれど、目覚めが非常によろしくない。
夢占いからすれば、こういった何かから逃げる夢というのは置かれている現状から逃れたい精神の現れなんだとか。もう心当たりしかない…。最近はしがらみだらけのこの街から早く去りたいとばかり考えているので、それが夢となって具現化してきたのかも。
プラスに考えれば、逃走に成功しているのはこの現状を打破する可能性があるとのことなのでまあポジティブに捉えよう。
あまり関係のない前置きはさておき、今回書きたいことはSyrup16gから得た生き方、そのマインドについてである。

このバンド、鬱ロックとかいう括りに入れられ、なんならその頂点に位置付けされているようなバンドでもあるが、実際はどうなのだろうか。
今となってはとても大好きで重要なバンドなので、敢えてそういう鬱屈とした暗さを求めて聴いたりすることは無い。
そもそも初めて聴いた時から「暗い」という印象よりも、「言いたいこと、すげー分かる。」が最初に抱いた感想だった。
言い方悪いかもしれないが、意識低いというか、やる気皆無な印象だった。忙しなく過ぎてゆく日々を憂い、夢や希望なんて抱いたりせず、波風立たぬよう穏やかに暮らしたいんですといったイメージだ。
波を立てずに 穏やかな暮らしで
目立たないように 慎ましやかにして
死んでいる方がマシさ
生きているよりマシさ
死んでいる方がマシさ
生きているよりマシさ
このSyrup16gを私がまともに聴き始めたのは、こともあろうに大学4年の就活中の時期であった。見方によっては最悪のタイミングである。
夏の終わり頃にもなると周りの皆は内定を貰い、再びバイトを始め、残り少ない学生生活をエンジョイする時期なのだが、私はまだ一つも内定が貰えずに自問自答する日々を送っていた。
30代いくまで生きてんのか俺
体ダルくて逆に眠くないね
バイトの面接で「君は暗いのか?」って
精一杯明るくしてるつもりですが
I'm 劣性 世界の心臓を
I'm 劣性 鼓膜の振動で
I'm 劣性 感じるだろう
I'm 劣性 テレビなんてPass!
焦りがない訳ではなかったが、何よりも自己嫌悪が酷く、誰かに会うことすら億劫になっていた。それでも音楽繋がりで仲良くしていた友人とは時々会っており、一緒に食事をした際にシロップの「COPY」という犬の絵が描かれた1stアルバムを貸してもらった。

ちょっとした息抜きのつもりで聴いた。3ピース故のシンプルなコードとサウンド、シニカルだけど一貫して自然体な五十嵐隆のリリック、その一曲一曲に親しみと心地良さを覚えた。今頃になってこんな響いてくる音楽だったとは。
程なく 人生を
そつなく終えれば
ヤクザも官僚も
ロックのロクデナシも
みんな負け犬でしょう
完全に負け犬ムーブ真っ只中だったが、不思議と気負うことが無くなり、逆に自身の中で吹っ切れたような感覚すらあった。
五十嵐隆の書く歌詞のおかげで人生のハードルが低くなり、生き辛さが緩和されたのだ。意識高い系のエリートやポジティブな体育会系に聴かせたらブチ切れるんじゃないかと思うぐらいのクズっぽさに逆に痺れた。
センチメンタルな恋は
どうしようもなく
破綻していくもので
安心したらさようなら
通信簿に書かれたよ
協調性に欠けてます なんて
妄想気味のロンリーガイ
今まで聴いてきたロックやパンク、メタルのような音楽には強い感情を叩きつけるものや、何かに抗う反骨精神を示すようなものが多かった。それに対してシロップからは諦め、逃避、憂鬱のようなネガティブな感情をユーモアを交えながら惜しげもなく曲にして、肯定も否定もせず「そんなの全部どうでもいい。」といったヤケクソの境地すら感じさせた。
生きんのがつらいとか
しんどいとか
めんどくさいとか
そんなことが言いたくて
えっらそうに言いたくて
二酸化炭素吐いてんじゃねぇよ
先端恐怖症なんで
最先端は興味ないです
絶対コレは買いの絶対って何?
正直、挫折続きの人生を送ってきた側からすれば腑に落ちたというか(決して正当化しようという訳ではない)、いざとなりゃ頑張らなくて全然OK、なんなら逃げちゃってもOKという究極マインドに振り切れるようになったと思う。
何もかも真面目に向き合い、全力出し切ろうと壊れてしまっては元も子もないし、修復が難しくなる。
”生活“という曲の歌詞にあるように、どうせ「心なんて一生不安さ」である。
後ろ向きLife style
死ぬまでRock?
Nobody like そんな
Beautiful
生きたいよ
今さら何を言ったって
四の五の何歌ったって
ただのノスタルジー
生ゴミ持ち歩いてんじゃねぇ
シロップを聴き続け、少しだけ気が楽になった私は良い意味でどうでもよくなり、自然体のまま就活を続けた。しくじった所で何も失うものなんてないし、生き急いだって仕方ねぇよみたいなスタンスでいたことが功を奏したのか、11月の終わり頃にようやく内定が貰えた。
案外そんなもんだったりする。シロップには肩の力を抜くことを教わった。人生のハードルをナンボでも下げて、身の丈に合ったペースでやれることをやればいいと思った。
まぁ、時には頑張らないといけないタイミングもあるからあくまで精神面でのお話になるけれど。
鬱になったって
闇堕ちだって
お腹空くよ
命は自我に興味ない
喜びも 苦しみ尽くした
その先にあるって 確かに
一度解散したとはいえ、この音楽性で武道館公演までやってるのだからカルト的に根強いファンが多くいるのだろう。そしてシロップの音楽に共鳴した人達もそれぐらい存在しているということ。
なんかシロップ好きな人とは無条件で分かり合えるような気さえする。
私も含めて多忙な日々を送っている皆さん、あまり悩まず、疲れたりダルくなったら立ち止まって、Syrup16gを聴いて少しでも楽になりましょう。
歌になんない日々はそれはそれでOKです。
おやすみなさい。