【グラジオラスの花束 〜無念〜「松田里奈」】8話
「お疲れ様で〜す」
海の家に泊まり込みのバイトに行く結冬くんを待つ間、バイトをしながらひたすらギターと歌の練習をしていた。
「あ!陽ちゃんおつかれ〜」
「今日忙しかったですか?」
「全然!もうちょ〜暇」
「どれくらい?笑」
「もうちょ〜暇」
「ちょ〜暇ですか笑笑」
「うん笑笑」
「こりゃ夜も暇そうですね〜」
「だね〜」
2人レジに並んでいつものようにくだらない話をしていた。
「このマンガ、タイトルだけで内容当てましょうよ」
「『いつまで経っても』?」
「はい」
「まず何系かよね」
「なんですかね」
「ん〜...『いつまで経っても』だから.....」
「いつまで経っても○○、みたいな感じですかね」
「じゃない?」
「それを最終回で回収するとか!」
「うわ!激アツ!」
「え、でも全然してなかったらどうしよう.....笑」
「そんなん言ったら全部読まんと分かんなくない?笑」
「たしかに笑」
『お願いしま〜す』
「いらっしゃいませ!」
高校生の頃からやってるこの本屋のバイトも今年で4年目。
忙しい時は忙しいけど、最近は落ち着いてるし何よりみんな面白くて楽しい。
「そういえば最近陽ちゃん元気だね」
「あ、分かっちゃいます〜?笑」
「なになに笑」
「最近、ずっと仲良くなりたかった子とすごく仲良くなれてる気がするんです〜!」
「え!良かったじゃん!」
「もうそれが嬉しくて嬉しくて.....笑」
「そっかそっか.....笑」
にこにこしてる陽ちゃんを見て、きっと瞳月ちゃんとの関係に清算をつけられたんだろうと少し安心した。
バイト上がり、湊音から連絡が入っていた。
[里奈、バイト終わったらそこ居て]
[ごめん今見た!]
数秒後、返事が帰ってくる。
[1Fのスタバに居る〜]
[は〜い]
向かうと湊音が手を振っていた。
「何?どしたん」
「いや、実はうちのバンドのインディーズデビューが決まってさ」
「え!!?」
湊音は私の反応を嬉しそうにしていた。
「一番に里奈に伝えたくて」
「そっかそっか...え〜...良かったぁ.....」
「一応お客さんたちには今度の12月のライブで発表ってことになってる」
「1,000人規模のやつ?」
「そう!」
「え!!絶対盛り上がるじゃん!!」
「だろ〜笑」
「え〜...ちょっと涙出てきちゃう.....笑」
「あはは笑 そうだな...嬉しいよ」
そこから2人は昔話も交えながら喜びを分かちあった。
「で再来週の日曜日、俺らの単独ライブやるんだけどそれの前座を里奈にやって欲しいなって」
「え?」
「ほらこの前のライブは急遽決まったから宣伝出来なかったけど俺らのライブは前座だからちゃんと宣伝できると思うし」
「でも結冬くんまだ夏休み中で居ないから」
「ほんと里奈はいっつも自信ないな笑」
「だって.....笑」
湊音はコーヒーに刺さってるストローを一回ししてまた話し始める。
「.....ずっと言おうか迷ってたことがあってな」
「うん.....?」
「『りーあちゃん』って子覚えてる?」
「うちの数少ないファンの子?」
「うん、そいつこの前俺らのライブに来てくれてさ」
「そうなの!?」
「その時言われたんだよ」
「なんて?」
「『里奈ちゃんってもう歌ってくれないんですか?』って」
「そう...なんだ.....」
「確かに結冬くんのおかげで里奈のレベルが上がってることは確かだけど、里奈が好きで居てくれた子たちは里奈を観たいんじゃないか?」
「私を.....?」
「せっかくならソロ最後は俺のライブにしてくれよ」
いつも最後に背中を押してくれるのは湊音だった。
「.....分かった!」