【グラジオラスの花束 〜油を注せ!〜「武元唯衣」】6話
なぎと合流した私たちは舞台を観ていた。
『何言ってんの早くご飯食べなよ。私はおチビちゃんたち起こすから』
『今行くよ〜』
パチパチパチパチ👏
「まさかの主人公たちの名前が『なぎさ』と『ゆうと』だなんてね」
「.....結冬」
なぎは意味深に呟いた。
「.....あ、もしかしてそういう?」
「違うからぁ!」
「私は結冬だったら歓迎よ?笑」
「違うからぁ.....」
ほんとこの子は可愛いなぁ.....。
「橋本くんこの後は?」
「そっすね。このまま軽音楽部とダンス部のパフォーマンス観たいっすけどなんか口、寂しくないっすか?」
「たしかに.....なんか買いに行こっか」
「まだ時間あるんでそうしましょ」
「なぎどうする?」
なぎはスマホを見て突っ立っていた。
きっと結冬の事だろう.....。
「.....なぎ?」
「ごめん.....クラス戻らなきゃ」
「もうそんな時間?」
「あぁ.....うんごめんね」
「全然!またね!」
「👋」
なぎのことを心配そうに見つめる橋本くんに話しかけられる。
「.....大丈夫すか?なんかありそうでしたけど」
「分かんないけどこういうのってあんまり踏み込むもんでも無いかなって.....昔から結冬と2人で色々解決してきたの見てるから」
「そうすか.....」
気を遣わせたくなくて話題を逸らす。
「ねぇねぇさっき途中で見たひとくちチュロス気にならん?」
「武元さんって意外と食いしん坊っすね」
「なっ.....やっぱ行かない」
「なんでですか笑 行きましょうよ笑」
「.....またバカにするもん」
「違いますよ笑 可愛いなって思ってるだけっす」
「またそうやって.....そんなに可愛いとか言ったって奢らないよ?」
「ふっ笑 尻尾振ってるの見えてますよ」
「はぁ!?付いてないわ!!」
「笑笑 いいから行くっすよ」
そう言って私の手を握る彼を嫌がりはしなかった自分に驚いた。
最近よく見るようになった橋本くんの無邪気な笑顔に徐々に惹かれてる自分が居た事に。
「そういえば橋本くんたち3年の出し物は?」
「俺らのクラスは展示会なんで」
「展示会?なんの?」
「好きな石展示会っす」
「えぇ!?笑 ほんとに言ってる?」
「うちのクラスカップル多くて当日できるだけ回りたいからってので適当に決まったんすよ」
「まじか.....恐るべし高校生.....ん?そういえば橋本くん彼女は?」
「居たら一緒に居ないっすね」
「そうだよね笑」
「なんすか?イジメすか?」
「ごめんって笑」
「.....だから武元さん居て良かったっす。このままじゃ独りでした」
「.....そっか」
「.....ふっ笑 なに気まずそうにしてんすか笑」
「だって.....」
「いや彼女居なくても友達が居ますから友達と回りるっすよ笑」
「あ!そっか笑」
「もしかして俺に友達も居ないと思ったんすか?」
「.....うん笑」
「うわ〜最低な先輩だ」
「ごめんじゃ〜ん笑」
「傷つきました」
「ごめんって笑 ほらひとくちチュロス奢ってあげるから」
「足りないっすね」
「じゃあ何よ」
「.....今度デートしてください」
またなにか変な要求をされると思って身構えていたのに.....。
「.....え?」
「だから.....武元さんとデートしたいです」
さっきまで子供みたいに無邪気に笑ってた橋本くんはそこには居らず、真剣な顔をした男の子が立っていた。
「どう.....ですか?」
「え...あ...えーっと.....」
「.....ふっ笑 冗談っすよ笑笑 バカだな武元さn」
唯衣が戸惑ってる間に作られた笑顔で笑う彼を見逃せなかった。
「いいよ行こう」
「.....いいんですか?」
「今日...さ.....結構楽しくて」
「.....まじですか?」
「うんほんと。だから唯衣とデートしてよ」
「.....ひ、ひとくちチュロス美味しそうっすね」
「照れてんの?笑」
「いや照れてないっす別に」
「じゃあ顔見せてよ」
「今はダメっす」
「おりゃ」
夕日か頬の暖かみか、どちらにしろ彼の頬は紅く染まっていた。
それに気づいた瞬間、自然と彼の手に自分の手を重ねてた。
「唯衣!!!」
突然切り裂いてくるかまいたちの哭き声は確実に私を呼んでいた。
「響介!!?」
「明石さん.....!」