【グラジオラスの花束 〜無念〜「松田里奈」】13話
『無念』を一発目に持ってきたおかげか、会場のボルテージは最高潮。
そのまま2曲目、3曲目と続けて演奏してMC。
里奈「みなさん盛り上がってますかー!!!」
観客「ウォーーーー!!!!!」
里奈「熱気すごっっっ!!笑 ここだけ真夏ですかね?笑」
観客「笑笑」
里奈「みなさん、改めまして『Gladiolus』です!よろしくお願いします!!」
こんな歓声初めてだ.....。
里奈「私たち、今年の夏に活動を始めまして」
観客「えー!?」
里奈「あははは笑 ありがとうございます笑」
大きい箱になると、こうも反応が違うのかと圧倒される。
里奈「えー私たち、今年の夏に活動を始めまして、いきなりこんな大舞台に立たせて頂いて、まだ夢だと思ってるんですが」
観客「頑張れー!」
里奈「あぁ笑 ありがとうございます笑 ですが、そんなチャンスを運だとか偶然とかで片付けたくなくて.....自分で掴んだ、掴みに行ったチャンスだと思いたいんです!最後の曲はそんな想いを込めた新曲です」
結冬くんと目を合わせ、気持ちをひとつにする。
里奈「それでは聴いてください。『縁起担ぎ』」
今までも確かに楽しみながらやってはいた。
でもその中にも少し.....いいや...楽しさの倍、悔しさがあった。
それが今は100%楽しめている。
だからこそもっと欲しいと、傲慢にもそう思ってしまった。
曲が終わったと同時に歓声が鳴り響く。
その時の結冬くんの顔を今でも覚えてる。
この先の未来に希望を見出した、素直でキラキラした目。
ただの嬉しさだけでない口角。
結冬くんのその顔を見て、私の夢がはっきりと決まった。
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結冬「お疲れ様でした!!」
里奈「私たち、よく頑張った!!」
リナ「お疲れ様!!」
里奈「リナさん!!」
ユイ「まっっっっっじで盛り上がってた!!」
結冬「ほんとですか.....」
アキ「ほんとだよ!!」
キラ「私たちより盛り上がってて悔しかったです」
里奈「いやいや!さすがにそれは!」
リナ「いやいや!ほんとなんだって!」
ユイ「自信持ちぃや笑」
結冬「ありがとうございます.....」
リナ「これは手強いライバルが出来たって感じ」
里奈「えぇ...嬉しいですぅ.....」
ユイ「ほなうちら、客席行って残りのバンド観てくるわ!」
4人を見送ったあと、2人楽屋に残っていた。
結冬「まじで楽しかったですね」
里奈「ほんとだね〜.....」
結冬「.....なんかやり切った感出してます?笑」
里奈「え.....?」
結冬「これからですよ」
そうだ...これで終わりじゃなくて始まったばかり.....。
里奈「そうだね!」
いつもの優しい笑顔の結冬くんと目が合う。
結冬「これからです...これから.....」
里奈「.....うん」
結冬くんもきっと同じように成功する未来が見えてたらいいなって.....。
結冬「里奈さん、このまま他のバンド観ますか?」
里奈「うん!」
結冬「僕、一旦みんなの所に行きますね」
里奈「分かった!また後でね!」
私も湊音と合流するために楽屋へ向かうと、途中で出くわす。
湊音「おぉ」
里奈「びっくりしたぁ!」
湊音「こっちのセリフな笑」
里奈「どっか行くん?」
湊音「里奈のところ行こうとしてた」
里奈「丁度良っ」
湊音「それな」
2人で客席に行き、後ろの方で残りのライブを楽しんでいた。
湊音「なぁ里奈」
里奈「ん?」
湊音「高校生の時にした約束覚えてる?」
里奈「どれ?」
湊音「2人とも、ちゃんと自分の実力で同じステージ立とうって約束」
里奈「あぁ.....」
高校1年生。
まだ世間を知らない時の湊音との約束。
里奈「よく覚えてたね.....笑」
湊音「今考えたらほんと無謀だよな笑」
里奈「ほんとだね笑」
湊音「.....今日...それが叶ったって言っちゃダメなのかな」
湊音の目に反射するライトが何処か寂しさを纏っている気がした。
里奈「.....ダメだよ」
湊音「なんで?成功したじゃん」
里奈「1個抜けてるよ」
湊音「え.....?」
里奈「2人とも、ちゃんと自分達の実力で、"同じようなレベル"で.....って約束じゃなかった?」
湊音「それは.....」
里奈「.....だからまだまだ先だよ」
自分たちには圧倒的に場数が足りない。
いくらいい曲を出そうとも、披露する場が無ければ意味がない。
そして音楽の世界は縁の世界。
これから色んなイベントに出して名を売っていくしかない。
湊音「じゃあさ」
里奈「うん?」
湊音「里奈たちもデビューしたら、一緒にライブしようぜ」
里奈「できるかな.....笑」
湊音「.....待ってっから」
力強く真っ直ぐ前を見つめる湊音を、初めて見た気がした。
里奈「当たりまえじゃん!」
湊音「ほんとか〜?」
里奈「え、なんで疑う?笑」
湊音「やっぱり嘘?」
里奈「違うって!笑」
湊音「応援してっからな」
そう言いながら、私の肩を叩いて抱き寄せる。
里奈「痛っ!」
湊音「そんなに強く叩いてねぇよ笑」
里奈「うわ〜慰謝料だ、これは」
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それから3日後。
いくらライブが盛り上がったとは言え、話題なんてものはすぐに過ぎるもの。
私はいつも通りバイトをしていた。
湊音「.....」
里奈「.....」
夏鈴「.....」
湊音「.....」
里奈「え、暇すぎん.....?」
湊音「それな」
夏鈴「上がっていいですかね」
湊音「いんじゃね?」
里奈「陽ちゃんもうすぐやっけ?」
夏鈴「ですね」
湊音「藤吉、まじで上がる?」
さすがに年末の平日に、本屋へ来る人なんてほぼ居ないわけで。
陽 「おはようございます!」
里奈「びっくりした!!」
陽 「里奈さん!!なんかやばい事になってますよ!!」
里奈「え?」
そう言いながら陽ちゃんが見せてくれたスマホを観ると、私たちのライブ映像が流れていた。
里奈「なんで私たちのライブ?」
湊音「誰かが上げてくれたんだろ、あのイベント撮影OKだから」
里奈「あ、そうなんや」
陽 「違います!!そこじゃなくてここ!!」
里奈「え?」
陽 「再生回数見てください!!!」
里奈「えぇ!!!!???」
to be continued.....