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【グラジオラスの花束 〜無念〜「松田里奈」】5話


文化祭で沢村結冬をバンドに誘った里奈は、結冬の返事を待っていた。

「えーっと.....これはサクラ文庫か.....」
『松田ちゃんも今のうちに休憩入っちゃって!』
「分かりました!これ片したら休憩いただきます!」
『うん、ありがとね〜』

今日は平日なので暇だった。

「陽ちゃんお疲れ〜」
「あ、お疲れ様です」
「もう上がり?」
「ですです」
「今日暇やったね〜」
「ですね〜.....」

ぼーっとする陽ちゃんがふと気になった。

「なんかあった?」
「う〜ん.....」
「もし話せるなら話してみてよ」
「実は彼女とあんまり上手くいってなくて.....」
「そうなの?話聞く限りは仲良さそうだったけど」
「ちょっと前から意見の食い違いとか結構多くなっちゃって.....」
「.....もしかして結構我慢してたりする?」
「.....はい」
「そっかぁ.....」
「瞳月、芸能事務所の人にスカウトされて」
「えぇ!?ほんとに!?」

そんなこと現実に起きるんだ.....。

「はい.....ただそれもなんの相談もなくて、その日も急に事務所の見学に行くって言われて」
「そうだったんだ.....」
「別に瞳月の将来の事なので私がどうこう言える話じゃないですけど、一応相談はして欲しかったなって.....」
「たしかにね.....」
「だから最近自分の気持ちがよく分かんなくて.....」
「距離を置いてみるとかは?」
「.....たぶん来週から自動的にそうなります」
「そっかぁ...辛いね.....」
「はい.....」
「また今度ご飯行こうよ。あんまりアドバイスとか出来ないけど、少しくらい笑顔にはできると思うから」
「ありがとうございます笑」

元気がない陽ちゃんの背中を見送ると電話がかかってくる。

[もしもし?]
[あ、沢村です]
[沢村くん!]
[この前のバンドの話、ぜひお願いします]
[ほんとに!!]
[はい、迷いが晴れました]
[良かった!じゃあ早速なんだけど今週末って空いてる?]
[なんならこの後でも大丈夫ですよ]
[ほんとに?]
[はい]
[じゃあこの後19時に駅前のスタジオにお願いしてもいいかな?]
[分かりました!ギターと他に居るものありますか?]
[もし沢村くんが作った楽曲の音源とかあれば聴いてみたいかも!]
[特になくて.....]
[じゃあギターだけで大丈夫だよ!]
[分かりました、じゃあ19時にスタジオで]
[うん!よろしくね!]

やったぁ!!!!!!!

バイトが終わり、スタジオに向かった里奈は嬉しさのあまり30分早く着いていた。

『おぉ!里奈ちゃん!久しぶりだね』
「お久しぶりです!」
『今日も練習かい?』
「今日は人と待ち合わせで」
『ん?もしかしてその子高校生だったりする?』
「え?」
『Bスタジオに居るから見てみたら?』

そう言われて向かうと沢村くんが居た。

「松田さん!?」
「お疲れ〜、早いね笑」
「お疲れです。時間あったので練習しようと思って」
「私も楽しみで早く来ちゃった笑」

荷物を起き、ギターを取り出す。

「それ、マーティンですか?」
「うん!店員さんにオススメされて」
「僕はギブソンで」
「いいなぁ!私もギブソン欲しいんだよね」
「やっぱりみんなマーティンからギブソンに行くんですね笑」
「そういえば沢村くんさ」
「あ、結冬で大丈夫ですよ」
「ほんと?じゃあ私も里奈で大丈夫!」
「分かりました」
「結冬くんのバンドが文化祭でやってた曲、ほんとに結冬くんが作曲したの?」
「はい、1年生の時に」
「えぇ!?  1年の時に?」
「です」
「まじか.....いや、実は前にライブハウスの人に『メロディーが弱い』って言われてね」
「前に言ってたやつですか?」
「そうなの.....あの曲のキャッチーさに凄い惹かれて」
「嬉しいです.....笑」
「あれって弾き語りVer.とかあるの?」
「ありますよ!メンバーに伝える時に弾き語りで共有するので」
「聴きたい!🥺」
「いいですよ笑」

結冬はカポをフレット2に付け、Cの位置に指を置いた。

「歌はあんまり得意じゃないので」
「歌なら任せて!」
「え?覚えたんですか?」
「うん」
「.....まじですか」
「一応楽譜あると助かるけど.....笑」
「ありますよ.....はい!」
「ありがと!」
「.....行けます?」
「.....うん!大丈夫!」
「4カウントでいきます」
「はい!」
「1…2…3…4」

結冬のギターから鳴る音がすーっと耳から入り、心地よく身体を循環する。

この音だ.....。

演奏中、何度も結冬と里奈は目が合ってたしかに心が通っていた。

「.....里奈さん歌上手いですね」
「ほんとに?」
「僕が求めてた声かもです」
「えへへへ.....笑  逆に結冬くんのアコギVer.もすっごい良かったよ!」
「ねぇねぇ、今度は私の曲聴いてみてくれない?」
「ぜひ!」
「もし、直せるところがあったら無礼講で直して欲しい」
「いやいや!」
「ううん、もしバンドメンバーになるならお互い遠慮せずに思ったこと言い合いたいじゃん?」
「たしかに.....」
「一応3曲持っててね.....はい楽譜」
「3曲も.....」
「いくね」

そこから1時間半、2人はスタジオに居た。

「ここなんですけど、コード変えずに進むよりもちょっと変化させてマイナーコードとか挟むとテーマの大人っぽさが出ますね」
「へぇ.....じゃあこういうのとか?」
「あ!そっちの方がいいですね!」
「ここさ、もう1個迷ったコードがあって」
「聴きたいです」
「.....こういうのとか」
「うわ〜.....僕は前の方が好きですね」
「やっぱり?」
「でも後者の方は長調なのでそっちで大人特有の子供っぽさというかを出すのもありなんですよねぇ.....」
「イメージ的には子供っぽさも入れたいから後者なのかなぁ.....」
「ん〜.....難しいですね笑」
「う〜ん.....」
「あ!里奈さんヤバいです5分前です」
「まじ!?やばいやばい笑」

急いで散らかった楽譜を片付けスタジオを出た。

「次、いつにしますか?」
「次か.....」
「どうかしたんですか?」
「いや、次の話ができるの嬉しいなって....笑」
「笑笑  良かったです笑」

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