【グラジオラスの花束 〜制服の人魚〜「石森璃花」】9話
聞いたことないアラームの音が聞こえる。
明石くんのだろうか.....。
ベッドに向かうと彼は起きていた。
「.....石森」
「おはよう。寝れた?」
「.....今何時」
「7時だよ」
「そっか.....この店、こんな部屋あったんだな」
「よくお店に篭もる時があるからその時用の仮眠室だよ」
「.....勉強熱心なんだな」
「朝ごはん出来たけど食べる?」
「あ、てか昨日のお代払うわ」
「いいよ別に」
「いやいや払うよ」
「.....じゃあ半額で」
「分かったよ」
「飲み物どうする?」
「ブラックもらえる?」
「は〜い」
「.....ありがと」
「いいえ」
「頂きます」
「どうぞ」
彼の隣に座って同じ朝ごはんを食べていた。
しばらく無言が続き、きっとお互い同じことを考えていた。
「.....あのね明石くん」
「いや.....そのごめん」
「違くて!」
「.....」
「.....私ね」
「.....うん」
「高校生の頃、明石くんの事好きだったの」
「.....」
「2人が付き合い出して、きっぱり忘れたと思ってた.....でも昨日はっきり解ってしまった」
「.....」
「.....だから振ってほしい」
「石森.....」
「もうそれで終わりだから」
「.....ごめん」
「.....ううん」
私は食器を片すためにキッチンへ戻った。
「ごちそうさま」
「美味しかった?」
「うん」
「あ!そうだ!ちょっと待ってて!」
「.....?」
高校生の時、渡せなくてずっと持ってたプレゼントを最後に渡そうと思った。
それで全部終わりにしたかった。
しかしもう既に明石くんの影は無く、そこには5,000円札が置いてあった。
「.....多いよバカ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黙々とモーニングの準備をしていた。
どうにか忘れたくて。
でもなんて神様は意地悪なんだろうか。
カラン
「いらっs...唯衣ちゃん.....」
「やっほ〜璃花👋」
「珍しいねこの時間に来るの」
「今からバイトなんだけど行く前にタロットカード占いしてもらおうかなって」
「そっか.....」
「てか大丈夫?目赤いけど」
「え、うそ.....」
「また昨日も遅くまで研究してたんでしょ〜」
「ううん...昨日はアニメ一気見しちゃったんだよね.....笑」
咄嗟に嘘を付いてしまった。
唯衣ちゃんを傷つけたくないって思っても結局後から傷つけるのに、どうか一生知らないでくれとさえ願った。
「今日は何を占うの?」
「最近ね.....響介と上手くいってなくて」
そう...だよね.....。
「分かった.....じゃあ占うね」
「お願いします.....」
「.....」
「.....どう?」
「星の逆位置.....」
「どういう意味?」
「働きすぎだって笑」
「まじ〜.....そっか〜」
「もうちょっと減らして明石くんとの時間作ってあげれば?」
「いやでもなぎの為にお金必要だしなぁ.....」
「まぁそうだよねぇ.....」
「あ!やば!そろそろ行くね!」
「あぁうん!また来てね!」
唯衣ちゃんは急いで店を出ていった。
ふと私は自分を占うことにした。
「運命の輪の逆位置かぁ...そうだよね.....」