【オリジナル短編小説】One day.
男が街を歩いていた。
左手にビジネスバッグ、右手に銃を持ち、オフィス街を行き交う他の者達と寸分違わぬ顔をして通りを抜ける。
男は人気のない道に出た。
黄色いタクシーが向こうから走ってくるのを見た男は左手を軽くあげてそのタクシーを止めた。
ドライバーが後部座席のドアを開ける。
男は不意に右手をあげてドライバーへ発砲した。
ドライバーは頭を撃ち抜かれて窓にもたれた。
男はそっと銃を道に置くと、その場にしゃがみこんだ。
長身の男が人気のない道を歩いていた。スキンヘッドにサングラス、その身にはコートを纏っている。
そのまま歩いていくと、男は落ちている銃を凝視して足を止めた。
傍にはしゃがみこんで空を見つめる男。地面にはビジネスバッグが放り出されている。
コートの男は銃を拾いあげると、しゃがんでいる男へ発砲した。
男は頭を撃ち抜かれて地面に転がる。
コートの男は銃をポケットに仕舞い、近くの川沿いを歩いていった。
しばらく歩くと公園が見える。
コートの男は公園に入り、ポケットの銃を赤いベンチの隅に置いた。
そのまま緩やかに流れる川を眺めながら、煙草を内ポケットから取り出す。煙草を口に咥えて火を点け、男はゆっくりと煙を吐き出した。
みすぼらしい格好の男が公園を歩いていた。服はボロボロで、いかにも浮浪者という体である。
公園のベンチへたどり着くと、隅に置いてある銃を見つけた。
浮浪者の男は銃を手に取る。
川の方へ視線を向けて、ゆっくりと歩き出した。
浮浪者の男は、川のへりで煙草を吸っている男へ発砲した。
煙草を吸っていた男は頭を撃ち抜かれて川へ沈んでいく。
浮浪者の男は銃をその場に置くと、ベンチに座って真昼の空を眺めた。
公園を女が散歩していた。
右手に犬を繋げたリードを持ち、軽い足取りで川沿いを歩いていた。
しばらく歩いていくと、女は足を止めた。
道端の銃を見つめている。
女はそれを暫く凝視し、やがて何事もなかったかのように散歩を再開した。
夜。
公園を月の明かりが包み込む頃。
浮浪者の男は、これまでにしたことがないような穏やかな表情で、ずっとベンチに座り続けていた…。
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