Harry delusion【第二部・2話】

「それは…。」


井上は明らかに躊躇っている。

浩二はすかさず質問を投げる。

「これは連続殺人事件と見ているのですが、同一犯の可能性はあるのですか?」

「いや…ちょっと待ってくださいよ。」

井上は浩二を制止する。

「まず、私に伝えたいことがあるというのを聞いてからそれに答えたいんですが…。それに、あなた警察でもないんでしょう?」

浩二はそれに対し一拍間を置くと、表情を変えずに告げた。


「その事件の犯人が、私の探している人物かもしれないんです。…知っている限りでいいので、情報をいただきたい。勿論、タダとは言いません。」


井上は一瞬目を見開く。

しかし、ふと冷静になって、目の前の男を観察する。

彼は浩二の顔を見た。その双貌には、強く、しかしもの悲しい感情が交錯しているように見える。


井上は腕を組んで宙空を見つめると、ぼんやりと呟いた。

「なるほど、情報を交換したいってところですか。確かにそれはオイシイネタかもしれない。でも、それを聞く前に一つ質問がある。」

井上は30過ぎにしては少し老けた顔に皺を寄せて、机に身を乗り出した。

「あなた、なんでそんな人を探しているんですか?」


浩二はこれまでの経緯をかいつまんで話した。


「ふむ…なるほど。」

井上は考える仕草をした。

「わかりました。」

彼のその一言に、浩二は緊張した面持ちで尋ねる。

「情報をいただけますか?」

井上はゆっくりと頷いた。

「いいでしょう。ただ、ここでは些か交渉の場には不向きですな。場を変えてまたお話をさせてもらいたい。…あなた、今晩はどこに泊まるんですか?」


浩二はその男にそっと微笑みかけた。


【3話へ続く。】↓
Harry delusion【第二部・3話】|高峰 由樹路 @AtW2igUeBGW4SVY #note https://note.com/yukiji8120/n/na2fc920e9bd4

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