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何気ない平和 ー札幌日記2ー
札幌で出会った若い写真家に「札幌で面白いところどこ?」と聞いたところ、「苗穂は工場がいっぱいありますよ」と教えてくれた。工場がいっぱいあるのが面白いかどうかわからないけれども、今回の札幌ではあまり予備知識を入れずに巡ってみようと思っていたので、彼の言葉に乗って市内の「苗穂」という地区に向かってみた。
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札幌駅からJR線でたった1駅、歩いて行くと30分もあればたどり着く。都会のど真ん中が工場地帯という少し不思議な感じだ。工場といっても工業ではなく、食品関係なのだと歩いてみるとわかってきた。サッポロビール園があり、雪印メグミルクの工場があり、札幌で入った飲食店でかなりの確率で置いてある「トモエ醤油」の福山醸造の工場があり…
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その中に有刺鉄線で囲われた一角がある。陸上自衛隊の苗穂分屯地だった。外壁に注意書きに「写真撮影禁止」と書いてある。そうなのか、と思いながら歩いて行くと入り口があり、ちょうど警備の隊員さんが歩いてきた。「撮影禁止」と書いてあってわかっているのに、しれっと知らないふりをして聞いてみる、というのは写真家の性なのか、私だけなのか。常に必ずやってみる手口。すると隊員さんは「私たちから、写真撮っちゃダメとか言えないんですよね…」との答え。こういうパターンがあるからしれっと聞いてみるのだ。
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「この建物は、明治時代に建てられたものなんですよ」。優しそうなその隊員さんは入り口から見える建物を指さして、ふらっと現れた私に親切に教えてくれる。明治といえば自衛隊はまだないはず。それを聞くと、この場所はその時代に陸軍の基地として始まったという。できたのが日露戦争の翌年(どの情報もその隊員さんから聞いただけで正確かどうか調べていません)。ということはロシアに対してという理由でできたのではないかと想像できる。
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ロシアのウクライナ侵攻という現実を目の当たりにして、戦争は私の中で現実感が強くなった。そのロシアへの最前線にあるのが北海道。隊員さんたちはどのような心境の変化があるのだろうか。分屯地の前でそう思うことだけしかできない。
ついでになぜここに工場が多いのか聞いてみると、「ここの地下水が非常に良くて美味しいんですよ。そういう理由じゃないですかね」との答え。なるほど、ビールも醤油も水が大事なのかもしれないと納得(本当にそうなのか、これも知らない)。
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あとになって、札幌に自衛隊基地はどのくらいあるのかググってみると、「陸自・札幌駐屯地」、「陸自・苗穂分屯地」、「陸自・丘珠駐屯地」、「陸自・真駒内駐屯地」と全部陸自だけどたくさん出てくる。この日、札幌は雲ひとつない穏やかな1日。写真祭で作品を展示する私も、木漏れ日の中絵を描く婦人も、遊び回る子どもたちも、何気なく存在し続けてきた平和の中で成り立っているのかと、ふらふらと歩きながら考える。
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(了)