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ウポポイでアイヌ文化を学ぶ ー札幌日記5ー

札幌から特急で約1時間。太平洋に面する白老町にたどり着く。向かうのは以前から行ってみたかった「ウポポイ」。ここではアイヌの歴史や文化を学んだり体験できる。

以下「ウポポイのウェブサイトより抜粋」
ーーーウポポイ(民族共生象徴空間)は、アイヌ文化を振興するための空間や施設であるだけではなく、我が国の貴重な文化でありながら存立の危機にあるアイヌ文化を復興・発展させる拠点として、また、将来に向けて先住民族の尊厳を尊重し、差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴として位置づけられています。ーーー以上

10数年前だろうか、「日本は単一民族国家」と国会議員が発言したことを今でもずっと覚えている。つい2、3年前にも首相経験者がそういう趣旨の発言をした。

もちろんそれは論外だけど、私自身日本での生活において民族の違いを意識したり考えたりすることはまずないし、自分が民族的に何人であるとか意識しない。そしてアイヌについてずっと興味はあっても、知る機会がなかった。2年前に北海道に「ウポポイ」ができたのを知ったので、ぜひ今回の札幌滞在中に訪れてみたかった。

白老駅から10分ほど歩くとウポポイに着く。開園の9時前に着いてしまい、ほぼ一番乗り。予想以上に広く、いろんな施設があってちょっと戸惑うが、まずは知識を叩き込まないと始まらないので博物館の建物に。

さすがに最近できた施設だけあって、工夫されて展示されている。かなりじっくりと読んだりみたりして、1時間半。

今世界のどこかでは民族浄化が行われている。言葉や文化を奪い、無理矢理同化させられている現状があり、それに私も強く憤りを感じている。しかし、ここ日本でもそれほど遠くない昔にアイヌ民族に対して行われたことを改めて再確認させられる。自分たちも正義を振りかざしてそれを非難できる人間ではないということを考える。時代や雰囲気が違えば、当たり前のようにそれをやってしまうことはあり得ることを考える。

ちゃんとみてまわればかなり勉強になる博物館だ。大量の修学旅行生がいなければ。

敷地内にはあと体験交流ホール、体験学習館、工房、アイヌ伝統の家屋がならぶコタン(集落)…などがあり、むむ、これは1日いても回りきれないのでは?という感じ。ここまで巨大な施設だとは思っていなかった。

博物館で勉強して疑問が残った。「アイヌ民族」であるという定義(大和民族であるという定義も同じ)は一体どこにあるのだろうか。世界各地で血は複雑に混ざってきているので、純血な民族の人はいないはず。そのことを学芸員さんに尋ねると、「血ではもちろん基準があるわけではないので、文化的にとか、どのように生きてきたかとか、周りからどのようにみられるかでアイヌかどうかになるのではないでしょうか」とのこと。なるほど、誰それがあるいは自分が何民族かは、かなり意識レベルの話なのかもしれない。

そして「日本人」とは、定義によって異なるけれども、日本に国籍を持つ人か、現在の日本の領土に古くから居住してきた民族全員、らしい。なので、日本人とは民族の名ではない。

このように、自分の民族について改めて考える機会になるだけでもきてみる価値はあるのではないだろうか。

工房を覗き、コタンのなかを拝見すると、ちょうど近くでなにかの上演があるという。

行われたのはムックリ(アイヌ伝統の楽器)の演奏やイヨマンテリムセ(熊の霊を送る踊り)。ウポポイの敷地に接しているポロト湖のそばでの上演なので、非常に心地が良い。
こうした踊りなどは敷地内の体験交流ホールという立派なハコモノの中で行われるらしいが、湖のそばでのほうが圧倒的に素晴らしいのではと思った。

上演後、踊り手さんたち忙しいらしく皆どこかへ行ってしまったが、唯一残っていた方にここぞとばかりに話しかける。

彼女もいろいろ伝えたいことが多いらしく、機関銃の如くいろんな話をしてくれた。生まれも育ちも地元・白老町で、ウポポイができるまでこの地にあった「アイヌ民族博物館」(ポロトコタン)の時代から40年も歌を歌い続け、国内、国外いろんな場所で披露してきたという。
正直センシティブな話もしてくれたが、知識も少ない私がここに書くには責任が持てないので書かない。

踊りを見ていて私は、20代のバックパッカー時代に東南アジアで感じたことを思い出した。少数民族がたくさんいるけれども、その珍しさを目当てに観光客が訪れ、それを売りにして彼らは身銭を稼いでいる。何か見せ物にしている感じがあって、自分が非常に後ろめたかったのだ。それを日本で初めて感じた。そのことを話してみると、「私はアイヌのことを知っておほしいと思っているから、たくさんの人に来てもらって見てほしい」と言われた。1時間近くも彼女と話すことができた。

気になったのは、スタッフの多さ。「入り口こちらです」「博物館見る前にこちらで映像みてはいかがですか?」など、めちゃくちゃ声をかけられる。平日の朝だからかな?北海道の人は親切なのかな、くらいでこの時は多少違和感を感じた程度だったけれども、のちに友人にウポポイに行ったことを話すと、どうやら雇われている人数が多すぎるというのが共通認識らしい。

慰霊施設

その後、町内循環バスで「スーパーくまがい」までいき、海鮮丼をいただく。少し時間がありそうなので、アイヌ慰霊施設を見てから太平洋に出る。
白老の街は(私にとって)非常に奇妙な街だ。人口は少ないけれども、同じような規模の東北の町とは全然雰囲気が違う。家々が密集していない、道路がやたら広い、ゆえに整然として綺麗な感じがする。家などもやたらリゾートっぽい洗練された建物。北海道は広いからなのだろうか。

町営住宅

ところでウポポイの正式名称は「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。アイヌ民族だけのためでなく、さまざまな民族が共生するための施設と名うっている。なるほど、そこに真意が見える気がする。

白老では毎年アートフェスティバルも開催されているらしい。札幌から1時間ならまたきてみたい。さよなら、ウミネコたち。カモメたちかもしれないけれど。
(了)

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