本の歴史は、印刷の歴史: コピー研究会Week8
ベストセラー研究をした。
やり出すと細かいので、巻物やグーテンベルクにまで遡ってしまった。
おもしろかったのは、本が商業化されたことにより、500年前にも「知」や「記録」ではなく「売れる」を目的とした本が出てきていたことだ。
「商業的本」の源泉は、500年前にまで遡る。
「賢く」なくても、売れる本。「売れる本が良い本ではない」と、ときどき言いたくもなるけど、おもしろくなってきた。
本の歴史は記録の歴史、紙の歴史、印刷の歴史
そうこうしているうちに、「本の歴史」にまで遡ってしまった。
ざっとたどると、2万年前には人々は記録や伝達のために文字や絵を使っており、5千年前には巻物が誕生。約2千年前には図書館も、表紙のついた本も生まれている。
そう、紙も製本も、「文字」を保存するために欠かせない「技術」だったのだ。
1200年前に印刷物が登場し、本が「商業化」するのは、500年前のグーテンベルクの大量印刷の発明以降だ。
古い方からたどるとこんな感じ。
記録の歴史
・2万年前:洞窟壁画
・1万年前(前8000年頃〜):楔形文字(粘土板。印もつけやすく、手に入りやすいが、重かった)
紙の歴史
・5千年前(前2900年頃〜):スゲの一種(パピルス)が巻物の書写材として使われた。(エジプトの乾燥した気候は保管に好都合だった)
・3千400年前(前1400年頃):中国では亀の甲らが占いに使われていた
物語の歴史
・約3千年前(前700年頃):ホメロスの叙事詩(『イリアス』『オデュッセイア』)
・前500年頃(orもっと前):イソップ寓話が伝わっていた。
図書館の歴史
・前300年:ギリシャでアレクサンドリアに大図書館が建てられた(パピルスの巻物の蔵書が増え、図書館の在庫管理の必要性が高まる。すでに「情報過多」に。)
製紙・製本の歴史
・105年:中国で紙が使われ始める
・200年頃:パーチメント(羊皮紙)が開発される。表紙のついたコデックス(折丁)という製法が誕生
・700年頃:中国から韓国に製紙技術が伝わった。最古の印刷物は韓国の陀羅尼。
・750年頃:日本に製紙技術が伝わった(今とほとんど変わらない)
ここから、大量印刷・商業化までにはぐっと700年ほど時計を早送りする。日本では『古事記』の編纂や『源氏物語』がこの間にうまれている。
大量印刷・商業化の歴史
・1454年:グーテンベルクの42行聖書(各行42行)が、フランクフルトの見本市でまたたくまに完売
・1493年:『ニュルンベルク年代史』が出資を受けてつくられた。2000部が印刷される。
まとめ
「本の歴史」と一口に言っても、本の歴史は「記録」「伝承」の歴史であり、「文字」の歴史であり、「紙」の歴史であり、「印刷」の歴史だ。
「物語」の歴史であり、「ビジネス書」の歴史であり、「ベストセラー」の歴史だ。
5千年前から巻物はあるし、図書館もあった。知の蓄積により、学問は「巨人の肩に乗る」ことができてきたし、物語は形を変えて子どもたちが世の中のルールを見出す手助けをしてきた。
それでも本が商業化されはじめたのは500年前からと、ビジネスの歴史を考えると意外と最近だった。「本の寿命は、本が神聖なものという幻想が終わるまで」みたいな話がよく編集部で出るのだけど、「読み手」が「消費者」となってから500年と思うと少し心許ないような気がした次第です。
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