新たな道
熊谷桜堤。荒川の堤防沿いに約2km続くソメイヨシノ。
桜のほのかなピンクと、菜の花の黄色と、空の青さすべてが淡く優しく私をつつみこむ。
大好きな場所。
でもただ景色が美しいからだけではない。
ここへ何度足を運び、ここで何度悩んで、何度泣いて、何度笑ったんだろう。
私は高校生のとき、この荒川の河川敷で毎日部活に励んでいた。
高校に入ってから、自分の人生について深く考えるようになった。
中学までは、地元のほぼみんな同じルートを辿ってその環境で自分なりに楽しんでいたので、深く悩むなんてことはなかった。たまに素敵な未来を想像して漠然と夢を抱いているだけだった。
中学卒業以降は、自分で自由に沢山の選択肢の中から選ぶことが格段に増えた。
自分が選び取ってきた人生の選択が積み重なって、たった1つの自分のルートを歩んでる心地がした。
でも、だからこそ、自分のルートに険しい山が現れると、他の人のルートが楽そうに見えて羨ましくなって仕方なかった。
こんな毎日河川敷で砂まみれになりながら部活したり、リュックに沢山重たい教科書毎日入れて勉強して、身も心も疲弊しまくってたとき
帰りに駅で、教科書なんて入らないめちゃくちゃ小さいバッグ1つに可愛い制服を着たカラオケ帰りのJKを見て、本当に辛くなった。楽そうだなって羨ましくなった。
決して答えが出るわけじゃないけど、辛くなったら部活の仲間と泣きながらお互いに語り合った。悩んで沈んでひたすらもがいた。
でもなぜか辛くても、悩んでも、他の人のルートが羨ましくなっても、自分のルートにいつも後悔は無かった。むしろ、誇りに思っている。
大学に入ってからもこれでいいのかという不安や辛さがずっとあって、
ふとしたときにその気持ちが私を襲いかかってくる。
そしてそんなときはまた部活の仲間と語り合って、心を軽くして、また前を向く。つい昨日も友達の同じような悩みを聞いて、一緒に沢山沢山考えた。
新しい環境に飛び込んだ私は、また更に自分の人生について考えることが増えると思う。
その分、辛くなったり気持ちの面で弱くなる。
それでも絶対に、私はそんな自分の、自分だけのルートに後悔はしない。
毎日毎日自分が歩み続けて成した道は、振り返ったとき色鮮やかに見えるんだ。
大好きな果てしなく続く熊谷桜堤のように。