地域再エネロングポジションの形成
ここ数年、カーボンニュートラルに関わるお仕事に多く携わらせて戴いています。特に電力関連では、再生可能エネルギーの提供企業にも、再生可能エネルギーを調達したい企業にも様々なお話しをさせて戴いています。
そんな中でふと思うに至ったこの「地域再エネロングポジション」について、今のところどなたも言及していないので、こちらで私の個人的な雑感を公開しておきたいと思うに至りました。
地域再エネロングポジションとは
電力事業に関わっている多くの方にとってのロングポジションとは、平易にいうと、「小売電気事業者が、販売予定電力量を、安定的に調達可能と想定出来る電力量が上回っている状態」を指すと思います。(詳細かつ正確な文言は今回は省略させて戴きます)
そのロングポジションを、再エネのみで行うことを再エネロングポジションと仮に言うようにしました。
また、これまでこのポジションは小売電気事業者を起点に議論されていましたが、それを自治体を始めとする、なんらかの地域を起点に議論したく、「地域再エネロングポジション」という言葉を最近良く使うようにしています。
「地域再エネロング」、「地域再生可能エネルギーロングポジション」などとも言っていますが、これらのキーワードを使われているところは、本日(2023年3月11日)現在見つけられませんでした。
地域再エネロングポジションの重要性
2021年グリーン成長戦略に基づき、日本は2050年までに国家としてカーボンニュートラルを目指すこととなっています。
一方、少し大雑把な表現で恐縮ですが、再エネ資源は地方にあり、都会には非常に限られた供給力しかありません。
つまり、2050年までに、都市部や工業地帯などの再エネ資源の需要に応えられるだけの供給力を再エネ資源が豊富な地方が備えなければならないということになります。これはその地方は再エネ資源を輸出しておけば良いと言うことではなく、その地域の需要を満たした上で、他地域への供給力を持たなければならないということになります。
その目標とすべき状態を「地域再エネロングポジション」と言うようにしています。
地域再エネロングポジション形成に必要なこと
当たり前なんですが、再エネ資源が豊富であることが最大の重要な要因と考えています。ですが、昨今の乱開発とも言えるような開発の仕方にはならないよう、自治体との協力は不可欠なのだと思います。
また、再生可能エネルギーと言った時に現在は太陽光を始めとする自然エネルギーが第一に思い浮かびますが、今後の技術の発展による違った再生可能エネルギー(より発展した廃棄物処理施設による発電や、下水処理施設による発電など)の到来も期待されます。
地域再エネロングポジション獲得後を見据え行うべきこと
ある地域から他地域への再エネ供給が可能だけの再エネが獲得出来たとして、そのエネルギーをどのように他の需要地に送るか?これは非常に重要な問題だと考えています。
現在想定されるものは1. 送電網を利用し電力として供給、2. 水素などの媒体に変換しての供給、3. 全く別の方式によるエネルギー輸送、が考えられますが、水素などの媒体に変換しての供給は、水素なのか他何があるのか?どのように運ぶのか?など解決すべき問題は多くあります。
個人的な期待も大いに含まれますが、水素はかなり有力な選択肢だと思っており、ロングポジションを取れる地域としては、自らが持つ再エネ資源をいかに効率的に水素に変換し輸送するか?が重要な関心事となります。
とは言え、水素の経済合理性は向こう1,2年で大きく下がるようなものではなく、中長期的に検討すべき課題であると考えています。また地域再エネロングポジション獲得も早い地域でも向こう数年はそこまでは至らないと考えており、有っても極めて限られた地域になると想定しています。今後時間を掛け地域再エネロングポジションの形成に向け、再エネ資源の構築と輸送手段を整えて行くのだと思います(勝手ながら2030年を目標と考えています)。
おわりに
私自身、現時点では勤め人であるため、自分勝手な動きは難しいところではありますが、ライフワークとしてこの分野についての考察を続けて行きたいと考えています。
社会が変わっていく局面に立ち会えるのではないかと楽しんでやっていきたいと思っています。