日本のエネルギー政策と日本企業の国際競争力
今年度中に第7次エネルギー基本計画を策定するために、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会では月に1回以上の議論が行われている。
極めて個人的な感想として、「2050年カーボンニュートラルを達成することのコンセンサス」と「日本企業の国際競争力の維持・強化」の2つの観点が弱いと感じている。
1点目の2050年のカーボンニュートラルの達成へのコンセンサスだが、暗黙の了解としてはあるはずだが、現時点トレードオフが発生する議論においてはS+3Eが優先されている。もちろん私自身もS+3Eの視点には強く共感しており、今後も日本のエネルギー政策の基本的な視点であり続けて欲しいと考えている。
だが、3Eの1つであるEconomic efficiency(経済効率性)の観点において、デフレマインドからの脱却が図れていないのでは無いかと感じているのだ。価格が抑えられていればよいという考えが強すぎるのではないだろうか。
今後も(コストプッシュとは言え)インフレは続くと考えた場合、エネルギー価格の上昇は避けられない。そうであるのなら、エネルギー供給事業者が長期的に価値を生み出し続けることが出来る市場環境を作るような政策の方向性を打ち出さなければならないのではないだろうか。
2点目の日本の国際競争力についてだが、発電技術に関わる多くの企業は、日本だけでビジネスをしている訳では無いし、今後注目される次世代エネルギーに関わる多くの企業はより強くグローバル市場を意識しているにも関わらず、基本政策分科会での議論を見る限りエネルギーミックスや電源技術を考える上で海外を引き合いに出しているものの、日本企業がどのようにグローバル企業と伍して戦っていくかについて意識されているとは感じられない。
日本は従来から『標準化戦略』が弱い。ソニーがビデオカセットにおいてBetaを標準に出来ず、オーディオメディアにおいてMDを標準に引き上げられず、非接触ICカード通信技術においてFelicaを世界標準とすることは出来なかった(それでも世界に名だたる企業で居続けているのは素晴らしい)。
日本政府は世界に先駆けて「水素基本計画」を打ち出し、水素技術は日本がリードしていると他国の識者からも見られていた時期はあったと感じているが、商用化の流れにおいて一気に追い抜かれた感が強い。
LNGのグローバルサプライチェーンを構築し、いい意味で世界を裏切った日本として、名誉挽回を目指してもらいたい。
加えて、エネルギー基本計画における議論が、電力に寄った議論となっているように感じており、日本のエネルギーの需要と供給は電力だけでは無くなっていく可能性にもう少しだけ意識を持った議論をお願い出来ればと考えている。