見出し画像

【ドラマ】極悪女王

Netflix
主演:ゆりあんレトリィバァ

(2114文字)
ボクらの世代では流行ってましたね、プロレス。
ボクは全然ハマりませんでした。
どっちが勝つか決まっているワケで、それは見ている方には分からないとしても、どちらかを真剣に応援する気にはなれなかった。
そもそも、ロープに飛ばして戻ってくることが謎だったし、流れるように決まる技に興奮できなかった。
スポーツなのかショーなのか。まぁ、ショーなんだけど、ボクには楽しみ方が掴めなかった。

それでもこのドラマの主人公、ダンプ松本は知っていたし、バラエティ番組などで見ていた。
クラッシュギャルズも、ビューティペアも、男子ならアントニオ猪木、ジャンボ鶴田、タイガーマスク。
それだけブームだったんだよね。

で、このドラマ。
ゆりあんレトリィバァが主演のダンプ松本役で話題になっていた。
このために体重を40キロ増やしたとか。
クラッシュギャルズのライオネス飛鳥に剛力彩芽、長与千種が唐田えりか。
彼女たちも体重を増やして体づくりをしたらしい。

話は、落ちこぼれレスラーだった松本香がダンプ松本になり、クラッシュギャルズとともに大ブームを巻き起こす物語。
特に、ダンプ松本と長与千種の友情と確執が中心になって描かれているので、このふたりのW主演という感じ。

「ブックなしでやらせてください」
つまり、筋書きなしの本気の勝負をさせて欲しいというセリフが、複数の登場人物たちから出てくる。
そうなるよね。強くなるために鍛えているわけだし。
しかし会社は、ファンの盛り上がりやテレビの視聴率を優先する。

やっぱり分からないんですよね、ボクには。ファンとレスラー、筋書きを作る会社の関係が。
レスラーが自分の要望を訴えても会社に聞き入れてもらえなかったり、そういう不満を抱えてリングに登って痛い思いをするわけですよ。
練習生の頃は仲の良い仲間でも、そりゃ仲は悪くなるし確執も生まれるよね。
そう考えると、現実なのか虚構なのかわからないショーアップされた世界がプロレスの魅力なのかもなぁ。
本気の勝負のボクシングだとドラマティックな盛り上がりがないまま終わったりするしね。

そんな感じで見ていたんだけど、とにかく役者さんたちがすごいんですよ。
ちゃんとプロレスのシーンとして出来上がっている。
かなり体を作って鍛えて、練習したんだと思う。
だから観てしまうんですよね。見入ってしまう。
ストーリーとしては、ダンプ松本がキャラクターを確立するあたりが、ちょっと急というか、説得力がもう少しという感じもした。
それと長与千種が、全女のプロレス人気は自分が支えていると自信を持つのも、ふたりが落ちこぼれの時からのグラデーションが滑らかじゃないというか。
それでもプロレスシーンの気迫やリアリティでそれが薄れていく。
そしてラストシーンではちょっと泣けましたね。意外だったけど。
結局のところ、面白かったですよ。
このドラマを見て、少しプロレスの楽しみ方がわかったような気がする。

意外だったのが、ゆりあんが気の弱い松本香時代より、ダンプ松本になってからの演技の方がハマっていたこと。
あそこまでキャラクターを作って演じた方が演じやすかったのかもね。あの顔はすっかりダンプ松本でしたよ。

長与千種役の唐田えりかも良かった。W主演の感じだったからというのもあるけど、なんというか、引力があるというか、見入ってしまいますね。
演技力の程はわからなかったけど、魅力的な役者さんではあると思う。
不倫問題かなにかで民放のドラマに出てこなくなったらしいけど、もったいない気がするなぁ。
まぁ、今の時代、民放に出なくてもこうやって活躍の場はあるよね。

なかなか良い味を出していたのが、クレーン・ユウ役のえびちゃん。お笑いコンビ、マリーマリーのメンバー。
ダンプ松本のように悪役になりきれず、レフェリーに活路を見出していく役。
脇役ながら重要で、視聴者はその葛藤が理解できるから、ダンプ松本の覚悟が際立って見える。その役をしっかり演じてましたね。
彼女は役者としての需要も増えていく気がするなぁ。

どこまで実話か分からないけど、ほぼ実話がベースになっているようで、あの当時のファンたちが、いかに本気で見ていたかがわかる。
ダンプ松本に剃刀入りの手紙がたくさん届いたり、実家に押しかけるアンチファンがいたり、買ったばかりの車に落書きされたり。
なんというか、ヒステリックな時代でしたね。

それでも、ダンプ松本が引退までに人気者になっていったのがわかるシーンもある。会場に応援するファンがいたり、グッズが売れるシーンがあったりね。
その後、ヒール役は本当に悪い人間ではなくて、あくまでもショーでの役割ということが定着した。当たり前なんだけどね。
ダンプ松本の功績はその点でも大きいんだろうね。

今、プロレスはすっかりショーという立ち位置だというのはなんとなく分かる。
仮に今が本気度3、ショーアップ7くらいの感覚でファンが見ているとしたら、あの当時は本気度7、ショーアップ3と逆の感覚だったんじゃないかと思う。
考えてみると、川口浩探検隊とか、UFOとか、超能力とかも同じ感覚だった気がする。
時代だよね。
そういう観点でも楽しめるドラマだと思う。

あ、血が苦手な人は観ない方が良いかも。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?