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【日記】猫に狙われた家

(1216文字)

初めて飼った猫は中学生の時。新築した家に引っ越して数ヶ月のこと。
朝起きると、まだ大人になり切れていない大きさのサバトラの猫がいた。
タクシーの運転手だった父が、勤務を終えた朝に駅から家まで歩いている途中に会い、そのまま着いてきたという。
その後、どういうわけだか、庭に現れて居ついたり、妹がもらってきたりと、猫がずっと住み着いていた。

その後、ボクは仙台に引っ越した。
二年後に結婚して、古いけど庭付きのメゾネットというアパートに引っ越した。
引越し当日。
居間のちゃぶ台に上に、昼食にと買っておいた菓子パンを置いたまま、荷物を運び入れていた。
外に出て車から段ボール箱を運んでくると、菓子パンを咥えて動きが止まった白茶の猫と目があった。
「あ!」
と声を出すと、奴は一目散に走って逃げた。
庭を見ると、猫が何匹かこちらの様子を伺っている。
それから彼らとの同居生活が始まった。
あの目で見つめられると餌をあげないわけにはいかなくなり、雪が降れば寒いだろうと発泡スチロールで二階建ての家を建設し、10匹ほどが入居していた。
年月が経つと生まれる猫、いなくなる猫もいて、三世代目の猫の4姉妹はすっかり飼い猫になっていた。

その後、そのアパートは取り壊すことになり、別のアパートに引っ越した。
飼っている猫は二匹になっていたけど、もちろん連れて行った。
次のアパート、それから購入したマンションにももちろん連れて行った。
そして一匹が亡くなり、残り一匹となって数年経った時に、東日本大震災が起こった。
支援活動で通っていた沿岸部で、親と逸れてしまった子猫が被災者に保護されて、自分たちはまだ避難所暮らしなので育ててくれないかと頼まれて一匹が増えた。
数年経って、元からいた猫が亡くなり、被災地から連れてきた猫一匹になった。
その猫も7歳で腎臓が悪くなり、調子が悪くなってから程なく亡くなってしまった。

結婚して二十数年、常に猫がいる生活だった。
しかしお金を出して買ったことはない。
人から頼まれた猫は被災地からの一匹のみで、他はみんなどういうワケだかいつの間にか居ついた猫だ。
猫がいる生活が当たり前になっていたので、いない生活は何かが物足りなかったが、生き物を買うことには抵抗がある。
これでもう猫を飼うことはないかなと思っていたある日のこと。
マンションの敷地内のどこかから子猫の声が聞こえる。
2日くらい聞こえてきていて、気になっていたところ、玄関を開けるとそこに子猫がいた。
逃げる猫を捕獲し、病院に連れていくと、多少栄養失調気味だが大丈夫とのこと。感染症にもかかっていない。
予防接種もしてもらった。
さて、どうするかと考えるまでもなく、我が家の居候となった。
それが今、妻と娘が暮らす埼玉の家にいる猫だ。

それにしても、どうしてうちはこんなに猫に縁があるのだろう。
ずっと不思議に思っていたが、数日前、その謎が解けた。
なんと、秘密結社がボクたちを狙っていたのだ。

うちは優良物件だったのか。

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