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【エッセイ】相手の目的を感じ取って

(1446文字)

人の行動には理由がある、という話。

ボクはひとりで登山を始めて、行きつけの登山用品店の店長のアドバイスを受けながら、ひとりで歩いてステップアップしてきた。
もともと、教わるのが得意ではない(この得意ではないという感覚、分かるかな?)し、ひとりが好きだ。
格好よく言えば一匹狼的な感じか。

しかし、誰かを連れて行くのも嫌いではない。
初心者だったり、仲間がいなくてステップアップできないという人の話を聞くと、「それじゃ、○○山に行ってみようか」
と誘ってしまう。
そしてその人がステップアップしていくのを見るのは嬉しい。
ステップアップしたら、ひとりだったり、ひとりが心配なら誰かを誘って計画し、自分の行きたい山に登れるようになると良いと思う。
そして年に2、3回でも、どこかに一緒に登れる仲間になれたら良い。
さらに誘われた人がステップアップして、初心者を誘えるようになれば本望。ペイフォワード的な感じで。
だからいつも、そういうことを意識して、教えながら歩く。
教えること、育っていくのを見る楽しみと、同等の仲間になってくれること。
それが、ボクが誰かを連れていく目的だ。

ところが、いつまでも「連れて行って欲しい」人は意外と多い。
そういう人は、自分で計画して登山をするより、連れて行ってくれる人を増やす傾向にある。
それはそれで良い。
その人の考え方だし、そのやり方を否定するつもりはない。
ただ、ボクの目的にはそぐわないので、そういうタイプだと分かれば、ボクから誘うことはなくなる。
冷たいようだけど、ずっと面倒を見るわけにもいかないし、利害が一致する人と行った方が良い。
その利害をお金に換算したのがガイドツアーなんだけどね。

しかし、先日はその意図がわからない女性から怒りのLINEが届いた。

その女性も知っている人を含めた四人で泊まりの山行に行ってきたんだけど、なぜ誘ってくれなかったのかと。
しかしその女性は他にも連れて行ってくれる人はいるし、山岳会にも入って忙しそうに楽しんでいた。
それならボクが出る幕はないわけですよ。
ボクの目的にそぐわない。
そもそも、ボクはその女性から誘われたこともないのに、誘わなければならない義務を負わされるのが疑問。

彼女の言い分としては、早く独り立ちできるようにと言われたから、遠慮して誘わなかったということだけど、その方法が他に連れて行ってくれる人を増やすだけならあまり意味はない。
また誘ってくださいと言われたけど、そうやって義務にされると重くて、登山が楽しくなくなるから誘わないと思う。
彼女にしてみたら、突き放されたように思ったかもしれないけど、目的が合致しなかったということ。

何かをしてもらうと、してくれる人がただ「良い人」だと思いがち。
そんなことないんですよ。してくれる人にも何かしら目的がある。
だから何かをしてもらうなら、その目的に対して何かを返さなければならない。
それが出来なければ、「良い人」を「都合の良い人」にしていくだけ。
誰も「都合の良い人」になんかなりたくない。

ボクの場合は、ペイフォワードで良いんです。
だから成長していくところが見たい。
それを次の人に伝えて欲しい。
こういうことって、仕事でもありますよね。

ちなみに、登山の場合は危険が伴うから、ひとりで行けない女性が、連れて行ってくれる男性に頼りがち。
ボクは前述のような目的で連れていくけど、中には女性と登りたいだけ、さらにあわよくばと考えている男どももいます。
山だからって健全とは限らない。
そういう意味でも、相手の目的を感じ取るというのは大事なことですね。



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