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FC町田ゼルビア2025 第3節・東京ヴェルディ戦(0-1)レビュー
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前半がかなり悪すぎた。逆にヴェルディさんの方は自分たちの形を崩しながらも背後を徹底してきた。連敗から気づいたことをここで発揮してくる明確な意図と強い思いが感じられた試合にさせてしまった。
黒田剛監督は、試合の前から相手の思いや勢いを受けて立ってはいけない。それを上回なければいけないと言ってきた。しかし、まさにそうした形で東京Vの思いや勢いを受け、町田は敗れた。
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連敗スタートの今シーズンの中で、我々が変われるチャンスだと思っていました。そういう準備をしてきましたし、短い準備期間の中で、選手は町田さんの対策をしながらも我々自身に矢印を向けて、しっかり戦ってくれたと思います。
町田サポーターは東京Vイレブンの戦う姿に、町田が本来見せるべき姿を見出したかもしれない。あの失点は必然であったし、もう1、2点は取られておかしくなかった。彼らは気迫と強度に溢れ、やりたいことを封じ、見事なサッカーで町田を飲み込んでいった。
試合後、挨拶にきた町田の選手たちにスタンドから厳しい言葉が飛んだ。まだ第3節である。確かに3試合で2敗は、去年の町田からすれば厳しい結果だ。彼らにはそれを主張する権利があるし、それを否定するつもりもない。ただ、思ったよりもずっと早く沸点を迎えてしまった人がいるなと感じた。
トライ&エラーの段階はどうしても痛みを伴う。補助輪をつけて自転車に乗っていた子供が、初めて補助輪を取ってフラフラしながら、ときには転んで膝を擦りむきながら何度もトライし、正しいバランスを身につけてまっすぐ漕げるようになるのと一緒である。
そんな子供に「なんで転ぶの!」と言ってもしかたないし、できないからと「しかたないからまた補助輪をつけよう」と言ってしまえば、いつまで経っても補助輪は取れない。
プロであっても人間である。子供であろうと大人であろうと、素人であろうとプロであろうと、新しいステップに進むプロセスは、どんな人間でも大体同じだろう。そこに近道も魔法もない。
今はバランスを取ろうともがいている。ただ、それに気を取られるばかりに今までできていた「ペダルを漕ぐ」ということが疎かになってしまっては前には進まないし、それはそれでバランスを崩してしまう。
ペダルをちゃんと漕ぎながら正しいバランスの取り方を覚えなければいけない。そんな段階だろうか。
昨年までのリスクを排除していくサッカーを整えるのは、比較的時間はかからない。相手にスペースと時間を与えず、自分たちの強みを相手に押しつけ続ける。相手に関係なく、自分たち主導で整えることができるからだ。
ただ、やることが同じだと相手も慣れ、対策もされる。昨季後半戦に、町田の一辺倒なサッカーは限界を迎えている。
だから今季の町田は、次のステップに進む決断をした。しかし、リスクを伴うサッカーにトライするのは、毎試合違う相手を見ながらのプレーになるので、当然慣れないうちはエラーが起こりやすく、時間もかかる。
しかも、ただ一方に舵を切るわけではなく、今までやってきた強みを活かしつつ、ボールを握って相手を誘き出す、あるいは下がった相手陣地に繋いで前進するという選択肢も併用していく。そのバランスは思った以上に難しく、チーム全体で連動してやれるようになるのはさらに難しい。
今の段階では町田がやってきた、あるいは東京Vにやられたスペースと時間を奪うサッカーの餌食にもなりやすい。難しいのは選手たちもわかっている。
最初から完璧になにもかもできるとはもちろん思っていないけど、やっぱり球際だったり、色んなところで上回っていかないと。まだまだ自分たちの弱さだなと。もう素直に自分たちが弱かった。
それでもなお、やって初めて体感としてわかることがあるし、それを経験することで次のトライ&エラーに繋げることができる。理屈でわかっていても実際にやってみないとわからないというのは世の常。
FC東京戦のようにうまくいかない中でも勝ちを拾えることもあれば、東京V戦のように負けることもある。今は転びながら正しいバランスの取り方を覚えている段階だ。
だからと言って負けてばかりいてはトライすることも難しい状況になる。
広島戦で負けて立ち止まるのではなく、そこから成長してのFC東京戦だったと思う。そうやって変わって、成長していかないと、現状維持は停滞や衰退と一緒なんで。次に進むために、またこれで僕らは一歩成長できると思う。
町田の強みを残し、より鋭い刃とするために、ここを乗り越えなければならない。もう少し先の成功、勝利のために、町田はこの試練をどう乗り越えていくのか。
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