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FC町田ゼルビアを照らし続けた福井光輝の矜持と献身

FC町田ゼルビアの生え抜き、福井光輝のセレッソ大阪への完全移籍が発表された。日本体育大学から入団して8年。守護神として、ムードメーカーとして、町田を最後尾から支え続けた男が、ある日語ったプロとして、町田の選手としての矜持がある。


今でも夢だと思っている

今年の9月はじめ、浦和レッズとの国立での激闘を終え、アルビレックス新潟とのルヴァンカップ準々決勝を控えたある日のことだった。

8月のリーグ再開後、町田は1勝3分1敗と足踏みが続いた。長く首位を走ってきた町田だったが、浦和に引き分けたことで、サンフレッチェ広島に勝ち点で並ばれ、得失点差によって首位を明け渡した。町田は苦しんでいた。

そんなとき、ベンチで誰よりも声を出し、チームを懸命に盛り立てる選手がいた。それが福井だった。町田を長く支えてきた男が、いま何を思っているのか。聞きにいかなければいけないと思った。

練習後、クラブハウスのミーティングルームで福井は町田への思いを40分に渡って語った。

まず率直にベンチで声を張り上げて鼓舞し、選手にボトルを渡し、献身的にチームを支える働きへの思いを聞いた。

「シンプルに勝ちたいだけなんで、そのプラスαになれればいいなと思っているだけです。それと、今でも夢だと思っているんで。クラブがこの順位にいて、こんなにも露出が増えていて。だから今を大事にしたいなと思うんですよね。優勝するチャンスでもあるし。それが恩返しでもあるんで」

福井光輝

8月中旬、ともに町田を支えてきた奥山政幸がベガルタ仙台に期限付き移籍して半月が経った。長年の戦友がクラブを去ったその寂しさは隠せない。

「寂しさは埋められてないですね。でもマサくんも自分のキャリアを前向きに考えての移籍なので、そこに後ろめたい言葉をかける必要はないと思う。僕もそうですけど、悔しい思いをしてきたと思うんで。いなくなったからこそ、僕らにできることがあると思うんで。仙台でも試合に出てますし。もしかしたら昇格もあるかもしれないし、また同じ舞台でやれたら嬉しいと思いますね。それがまた町田で一緒にスタートできたらより良いなと思いますよ。でもこの職業は移籍がつきものなんで、移籍の話を聞いた時は『マジか……』という感じでしたけど、最後はお互い切磋琢磨して頑張ろうと声を掛け合ったので大丈夫です」

福井光輝

俺が発信してみんなを巻き込むことができる

昨季も町田は苦しんだ時期があった。そんなとき、福井がゴールマウスを守るようになり、トンネルを抜け出して町田はJ2優勝へ駆け抜けた。そんな福井は苦しむチームをベンチでどう見ているのか。

「去年も確かにそうでしたね。あの頃は自分たちの原点に戻ろうと意識してました。今までやってきたことを信じればおのずと勝てるようになると、選手みんながわかっていたし、各々ができることを把握していましたよね。この選手はこれを生かしてあげようとか、ちょっと足りないならみんなでカバーしようとか。別に今年のチームにそれがないというわけではないですよ。浦和戦も良い試合だったのでそんな後ろ向きになる必要なんてないと思う」

福井光輝

ただ、やはり昨季とは相手のレベルの違いを痛感してもいた。昨季やれたことが、J1では通用しない部分も当然ある。

「やっぱりレベルが違う。ちゃんと策があって、ちゃんと分析されてますよね。1巡目はお互いのやりたいことをぶつけ合う中で勝ることが多かったけど、2巡目は自分たちのスタイルを捨ててでも相手の良さを消しにくるチームもあって、その質がJ2とは全然違う」

福井光輝

そんなチームが苦しむ中で、福井はもう一つ殻を破るために必要なこと、できることがあるという。

「もっと仲間を意識したい。犠牲心だったり、なんのために戦うかというメンタリティがあれば、おのずとそれが真の勝者になっていくと思っているんですよ。僕がよく思っているのが『人のために戦うのが真の勝者』ということ。サッカーはチームスポーツなので、そういうことをより大事にしていきたい。ただ、それは思っているだけじゃダメ。ちゃんと言葉で発したり、プレーで見せたり。誰かがミスしたらみんなでカバーする。そこでミスを咎めても次のプレーはもう始まっているんで、そんなことよりカバーし合うこと。そういう犠牲心が大事で、それを言わなくてもプレーで示す。それが去年のチームは練習からできていたと思うし、今のチームにそれがないというわけではなくて、もっとできると思いますね」

福井光輝

その精神を福井は自らがベンチで体現していた。その思いは記者席にまで伝わっていた。

「みんなもそういうことを思っていると思うんですよ。ただ、言葉にするとか、プレーに出すことって難しくて、俺はこういうキャラクターだからやれる。だからこそ、俺が発信してみんなを巻き込むことができるんじゃないかなと。ピッチの外から見たときに、もっと士気を上げていかなきゃけいない。それは俺にもできることだと思いました。ただ、それはチームのためでもあり、自分自分のためにできることでもあったと思いますね」

福井光輝

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