谷川俊太郎さんを送る言葉「明日のこと」
11月13日、詩人の谷川俊太郎さんが亡くなられたということを19日の報道で知る。
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「明日のこと」
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わたしはわたしの心の中に棲む谷川さんといろいろなことを話しています。
そして、いま明日のことを話しています。
わたしは谷川さんに聞きました。
「明日ってなんでしょう?」
谷川さんは言いました。
「明日の明日の明日は、いったいどこまで続いているのかな?」
「わたしたちが死ぬ時まででしょうか。」
わたしは答えました。
すると谷川さんは首を横に振りました。
「ちがうよ。だってこの前わたしは死んだけれども明日は来たもの」
しばらくの静寂の後、わたしは谷川さんに聞きました。
「わたしの明日はきたかもしれないけれど、谷川さんの明日はどこに行ったの?」
谷川さんは静かに答えました。
「明日にはいろんな明日があるんだね。わたしの明日はおしまいになったけれどもあなたの明日はまだ明日だね。」
わたしは口ごもりながら答えました。
「たぶんそうだと思うけれども・・・。」
「わたしの明日と谷川さんの明日とわたしが大切に思っている人の明日とが、そのまた明日と、その次の明日もずっとこうやってくっついているといいのにね。」
日が落ちて寒くなってきました。
谷川さんは言いました。
「わたしの明日はおしまいになったけれども、
わたしは宇宙のエネルギーとひとつになって、
わたしの言葉は夜空の無数の輝く星のように、
あなたたちの明日の中で瞬き続けているよ。」
わたしはゆっくり一言一言区切りながら祈るように谷川さんに伝えました。
「あ・り・が・と・う、そして、さ・よ・う・な・ら・・・谷川さん。」