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恋のトキメキはどうして終わる?2<関係が安定するとドーパミンは減る>

前回の記事で、トキメキはドーパミンによって作り出される感情であることをご説明しました。今回は、そのトキメキに必ず終わりが来ることについてお話します。

D子さんとE太さんの事例を引き続き使ってご説明します。今回もおそらくドーパミンが放出されているであろうと予測される場面の文末に(★)を記したので、ご参考にしてください

D子さんとE太さんは順調に交際を続け、1年半後に結婚しました。そしてその数年後には可愛い子ども2人にも恵まれました。二人は仕事と育児の両立で疲れ、たまにぶつかってしまうこともありましたが、深い愛情と信頼を培い、総じて良い結婚生活を送っていました。

そんなある日、D子さんはばったりと昔の彼F男さんに遭遇。懐かしさからお茶をすることになりました。お互いの近況報告や思い出話に花を咲かせ、とても楽しい時間を過ごしました。D子さんは、こうしてF男さんと再会して楽しい時間を過ごすなんて想像もしていなかったので気持ちが華やぎます(★)。そしてF男さんがしみじみと「D子は昔と変わらず綺麗だね」と言ったときには、久しぶりに妻・母としてではなく女性として見られていることに胸の高鳴りを覚えました(★)。

帰り際、今度飲みに行こうとF男さんに誘われたD子さん。とぼとぼと家へと歩きながら、F男さんへ感じたドキドキを反芻すると同時に、E太さんにはこうした感情をいつから感じなくなってしまったのだろうと寂しく思いました。二人で飲みに行くことに戸惑いを感じつつも、またあのドキドキを感じたいという気持ちは膨らむばかり…

D子さんはその後、数回F男さんと会い、とても楽しい時間を過ごしました(★)。次第に、F男さんと結婚していたらどんな人生だったろう、という考えもちらつくようになりました。

前回の事例の中では、D子さんはE太さんに夢中でしたが、それから数年の歳月を経た今回の事例では、D子さんはすっかりE太さんにときめかなくなっていました。これはなぜなのでしょうか。

前回の記事でご紹介しましたが、ドーパミンは「期待していたよりも大きな報酬が得られた」という、自分の予想・期待が良い意味で間違っていたときに放出されるといわれています。このため、付き合い始めの頃は「E太さんが本当に自分を好きでいてくれるのか」という不安が常にあったため、「E太さんが自分を好いている」ことが確認できる出来事がある度にドーパミンが放出され、ときめくことができたのではないかと考えられます。

ところが順調に交際が続くとお互いに信頼関係ができ、「どんなときも自分を愛してくれている」という安心感が生まれます。このこと自体はとても良いことなのですが、ドーパミンは放出されにくくなります。それは、二人の関係が安定するほど未来が予測しやすくなり、期待した通りの結果が得られることが増えるため、ドーパミン放出のトリガーとなる「期待していたよりも大きな報酬」が得られにくくなるためです。このため、安定した関係ではトキメキが感じられにくくなっていくと考えられています。

米国の文化人類学者のヘレン・フィッシャーによる研究では、トキメキは長くて12〜18ヶ月程度しか続かないという結果が出ています。トキメキは楽しいものですが、必ず終わりが来てしまうようです。このため、仮にD子さんがE太さんと別れ、F男さんと新たな人生を歩むことにしても、E太さんのときと同様におそらく二人の関係が安定するにつれてトキメキは失われることでしょう。

映画や小説ではトキメキを主題に描かれることが多いため、恋愛関係ではトキメキが最重要事項のように感じれられることがあるかもしれません。しかしもしあなたが恋愛する目的を生涯を共にできるライフパートナーを探すこととするならば、トキメキだけを指標に行動・意思決定をするのは得策ではないかもしれません。

次回はトキメキが失われた後の関係を楽しむ方法についてお話します。

☆心理のひとくちメモ☆
ヘレン・フィッシャー(Helen Fisher, PhD)
インディアナ大学の特別研究員。人類の性行動、一夫一婦制、不倫、離婚、脳の性差に関する研究で知られる。米国デーティングサイト “Match.com” のアドバイザーも務める。

長谷川由紀

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。
また、本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。

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