小説「ムメイの花」 #36夢中の花
朝の日課。
家の前に立つ。
右手に花はない。
僕は今朝、久しぶりに家の前に立っていた。
ただ空を見上げる。
本来ならロケットが飛んでいくはずの空。
どこまでも遠く、広い。
せっかく何もない空を見ていたのに
鳥が飛ぶ姿が視界に入ってくる。
しかもまた何か咥えているじゃないか。
鳥のヤツ……
あいつのせいでブラボーとの会話中にパンを盗まれた。
あいつに花を咥えていると惑わされたせいで
花を追ったデルタも僕の前から姿を消すことになった。
「いい加減にしてくれ」
ため息