跳躍するつくり手、からのヒント。【京都市京セラ美術館】
定期的に美術館へ足を行かれますか?
展覧会でよくある、アートやデザイン、テクノロジーと言われても、何だかピンとこない。と、芸術系大学を出ていながら私自身そう思うことがあります。
だって、専門知識も対して持ち合わせていないし、こまめに展覧会をチェックしているわけではないし、云々。と、いくらでも言い訳は出てくる…。
けれど。
これからの不確実な時代を乗り越える為に必要と言われている、感性や思考を鍛えるために、美術館へ行く。
それも気軽に。
これから暖かくなり良いシーズンを迎える京都で、こんな展覧会が始まりました。
京都市京セラ美術館で、3月9日(木)から、特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」
Special Exhibition “Visionaries: Making Another Perspective”という展覧会が始まっています。
展覧会監修は、武蔵野美術⼤学客員教授でもある川上典李⼦さん。
会場内は京都の工芸のつくり手や、海外で活躍するデザイナー、アーティスト、テクノロジー系の作品が織り混ざっていました。
この展示からこれからの時代の思考のヒントを見つけることができたので、少しだけご紹介。
月のように見える自然の木
最初の部屋の壁にかかった、まるでお月さまのような木のプレートが目につきます。
よく見るとそのプレートには曼荼羅のような規則的な木の模様があり、キャプションを見ると、京都の木桶職人の家系に育った、中川周士さんのMoonという作品で、柾合わせと呼ばれる技法を用いて作られたという。
木は自然物なので伐採したら収縮や割れなどが起こる。割れや狂いを防ぐ技術が、結果として翻って、美しい模様を生み出したところが大切だと思いました。
自分の中に表現を見つけて答えをだすだけではなく、
素材に向き合って、そこから生み出される美しさもあると教えてもらったような気がします。
いかにも模様の美しさだけを魅せるのではなく、木そのままの美しさも作品から感じたのも魅力だと思いました。
ベネツィアンガラスの技術が風景を作る
展覧会最後の部屋に設置されたのが、海外で活躍されているデザイナー田村奈穂さんのインスタレーション。
シャンデリアの中に境界線があり、それぞれが並列して展示されていて、まるで一つの水平線のように感じます。
次々にシャンデリアに明かりが灯っては、消えー。
そのうつろう様子が、朝から夜の風景を想像させます。
風景のようなシャンデリアを作ろうと思っても、簡単に叶うはずもなく、この作品の背景にも、ベネツィアンガラスの職人の高い技術が支えていることは想像できます。
けれどここでも、その美しさを目立たせるのではなくて、そっとベニスの水面を表現する。
じっと時間をかけて鑑賞し、作品と過ごし、自分だけの答えを探る。
そうやって深まった感性こそが、不確実な時代を生き抜くヒントではないか、と教えてもらったような気がしました。
特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」
Special Exhibition “Visionaries: Making Another Perspective”
会期:2023 年 3 月 9 日(木)~6 月 4 日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
開館時間:10:00~18:00(最終入場は 17:30) 休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
もう少し暖かくなると、このエントランス付近で一休みしながら、展覧会の余韻に浸るのもオススメ。