人の気持ちに寄り添うとは
仕事柄、お客さまの気持ちを汲み取るのは不可欠なのですが、今日は身近で起こった話を書いてみようと思います。
いじめの構図を想像していただけるとわかりやすいかと。
あるグループ内でのこと。
Aさんが突然、グループから抜けると言い出しました。
Aさんは、グループの中心的役割を担っていて、抜けるとなると、グループの存続自体が危ぶまれる状態。
Aさんの言い分は
「私がどれだけ心を尽くして動いても、話を聞いてくれない。私はみんなから見下されてる」
というものでした。
ほかのメンバーは、突然の申し出に焦り、弁明を始めます。
「見下してないよ」
「あなたの思い込み。誤解してるよ」
Aさんは、納得するどころか、ますます頑なになってしまいます。
この話、いったい何が問題なのでしょうか。
冒頭でいじめの構図を想像してくださいと書きました。
ここでは、
いじめられている側:Aさん
いじめている側:ほかのメンバー
実際にいじめが起こっていたわけではありませんが、大切なのは「見下してない」というメンバーの言い分ではなく、「見下されている」と感じたAさんの気持ち。
いじめた側は、得てして、いじめているという認識はないものです。
だから、相手の気持ちに寄り添うことなく、「私はやっていない」と主張する。
自分を正当化し、守ることしか考えていないのです。
また、メンバーがAさんの言い分にまったく耳を傾けようとしていないことも問題です。
なぜAさんが、そういう気持ちに至ったのか。
少しでもAさんを尊重する気持ちがあれば、いきなり弁明には走らないはず。
そういった相手に対する配慮と想像力の欠如がひとつ。
あとは、Aさんの言い分を認める=自分の非を認めるということになるので、素直に受け入れられないのかもしれません。
そうなると、Aさんはますます気持ちのもって行き場がなくなり、追い詰められるのが目に見えています。
今回の場合は、結局、Aさんが自分の気持ちを整理してメンバーに伝え、なんとか気持ちを汲み取る方向に舵を切ることができたので、グループを抜けることは回避できました。
ただ、メンバー全員が、何が問題だったのか理解するまでには時間がかかりそうです。
Aさんは、謝罪の言葉がほしいわけではありません。
もっと言えば、Aさんの気持ちを理解しないまま謝られても意味がないということ。
理解できていなければ、いずれまた同じ問題が起こるでしょう。
対話の際、必要なのは、まずは相手の気持ちを汲み取り、受け止めることだと、私は思っていて。
会話のキャッチボールという表現がありますが、文字通り、自分が投げるばかりでは成立しません。
「この人は私の気持ちを否定せず、受け止めてくれる」
「話を最後まで聞いてくれる」
そういった安心感が生まれて初めて、会話のスタートラインに立つことができます。
ただ、何でも相手の言う通りにしなさいと言っているわけではありません。
自分の考えは、相手の話を聞いてから伝えても遅くはないと、私は思うのです。