#183 煮えくり返った腸を、こぶしを握り締めて耐える。・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月18日(日)18日目・・・4
カーネギーホールの中の、Zankel Hall at Caregie Hall(ザンケル・ホール)にやっと入ることができ、席に着いた。
ステージ上にはグランドピアノが鎮座しており、薄茶色の照明が落ち着いた雰囲気を作っていた。
けれど、先ほどに続き、ここでも私は怒りでこぶしを握り締めることになる。
右隣に、年配のオババ、その向こうにどっからどう見てもお高く留まった駐在員マダムが座っており、2人の会話内容がイヤでも聞こえてくる。
マダム
〝子どもの学校がアメリカだからぁ、日本語がちょっと心配なのよね。慶応は厳しいからいいと思って転入させたの。知名度もあるしーーー〟
〝そういえばこの前台湾に行ったときシャネルがあってーーー〟
〝ティファニーのカフェには中々入れないんですよね~~~〟
オババ
〝私はあんまり行く気にはなれないわ。あんな白と水色だけのお店なんて~~~〟
まぁ~、大きな声でピーチクパーチクうるっさいなぁ。もっと声のボリューム落としてよっ! こちとら、慶応なんて縁もゆかりもないおバカですいませんね。シャネルなんて一生縁がありませんことよ。ティファニーのブルーボックスカフェで、サプライズおもてなしに武者震いが止まらなくて困ったほど感動したのは、ええ、ええ、何を隠そうこのワタクシでございますよ。すいませんね、あなたたちの愚痴の内容1つ1つに私は感動してしまってっ!!。
心の中で〝お前ら、お子ちゃまか!ドついたろかっ!!〟と、お下品になりながら思ったら、何だか吐き気がしてきた。
せっかくの私の誕生日を台無しにするなっ!と思わず叫びそうになった。
New Yorkに来て2週間半。到着直後のJFKから、New Yorkerの親切と優しさの数々に、毎日毎日ずっーーーーーと感動しっぱなしの日々だ。その素敵な日々を一気にぶち壊された気がした。しかも誕生日の夜に、あろうことか日本人に。同じ日本人として恥ずかしくて、悲しくなった。
10日にMadison Square GardenでのBilly Joelのコンサートに行ったとき、
はやる気持ちが抑えきれなくて、かなり早めに席に着き、1人ワクワクしながら開演を待っていた。そのとき、周りのNew Yorkerたちは誰1人としてお行儀の悪い人や迷惑をかける人はいなかった。
それなのに、今、私の横にいる2人の日本人はどうだ。大きな声でベラベラベラベラ喋りまくって、何が楽しいの? 愚痴? リア充自慢?
黙って静かにうんざりしていると、オババが私に言った。
「すみません」
何に対してのすみませんなの? うるさいこと? 品のないこと? わかってるならもう少しお上品に静かにしてよ。別ホールとはいえ、ここは、カーネギーホールなのよ。そう思いながら冷静にキッパリと言った。
「いえ、お気になさらなくて結構です」
自分でも、なんと嫌味なヤツ、私すっごい嫌なヤツと思ったが、Kさんから続く、煮えくり返った腸を、なんとか収めるのに精一杯だった。
そこへ、オババのもとに、何人もの人がやってきて、名刺交換会が始まった。はいはい、お名刺を交換するくらいだから、それなりにステータスのある、お偉いお方なのでしょう。
New Yorkでは、これくらいでは品がないとは言わないのかな? 私が気にしすぎなのかな? こんなところで静かにしているようじゃ、New Yorkerにはなれないのかな?
それでも、心の中で〝お前ら、お子ちゃまか!ドついたろかっ!!〟と、お下品に思ったくせに、私は品のあるNew Yorkerになりたいと思った。
無料につられて来たくせに、Kさんの不手際と品のない日本人マダムに腹を立て、気分はよくなかった。誕生日の夜なのに。
(この時点で日本では翌日になっていた)
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