#75 帰りたいのに帰れない・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月5日(月)5日目・・・6
Borough Hall/Court Street駅からあてずっぽうに乗った地下鉄が、ラッキーなことに正解で、わずか3駅で、宿の最寄り駅Atlantics Avenue - Barclays Center(アトランティック・アベニュー-バークレイズ・センター)駅に着けることが分かってホッとした。
けれど私は、方向オンチ選手権で世界一に輝ける、筋金入りのスーパー方向オンチだ。Atlantics Avenue - Barclays Center駅を地上に出たら、宿とは離れた出口に出たらしく、またしても見たことのない風景が広がっており、宿に戻れない現実を目の当たりにして、呆然と立ち尽くした。
〝どうして? 何でよ! 私は宿に帰りたいだけなのに……〟
宿のある時計塔の方角だけでも知りたかったが、真昼間だというのに誰も歩いておらず、聞くに聞けない。しかも道路沿いに並んでいる店舗は、営業中なのかクローズなのかも区別がつかない。
マップアプリはトンチンカンな動きをしており、困り果てた。
とにかく誰かに聞かなければ。
散々迷いながら歩いていると、向こうからきれいなおねえさんが歩いてくるのが見えた。よし、絶対につかまえて聞くぞ! さっきの駅でのガン無視傷心を跳ね除け、勇気を出して話しかけた。
「Excuse me. Where is Barclays Center? 」
自分では最大限に英語の発音をしているつもりだったが、おねえさんにはカタカナ英語に聞えたらしく、顔中ハテナマークだらけだった。
ここで知らないと言われてしまうと、次、いつ誰に聞けるかわからない。
逃すものか。そうだ、Barclays CenterはNBAバスケットチームのブルックリン・ネッツ”の本拠地だ。
とっさに、バスケットボールのドリブルをエアーでやって見せた。
「basketball! Basketball!!」
カタカナ英語にならないよう、一生懸命口の中で舌を巻いて流暢英語(のつもり)で強調した。するとお姉さんは、
「Oh! Barclays Center」
と気付いてくれ、その方向を指差してくれた。Oh!通じたよ私の英単語。Barclays Centerにさえ戻れれば宿に帰れる。
実は私は、中学時代に、万年補欠で嫌々バスケットボール部に所属していたのだが、エアードリブルがこんなところでこんな形で役に立つとは、おかしなものだ。
きれいなおねえさんに教えられた方向に歩き、さらに運よくすれ違えた何人もの人に聞き、いい加減だとわかっていても一応マップアプリを開き、ようやくBarclays Centerに辿り着いた。
ああ、やれやれ。見覚えのある風景(Barclays Center)が見えると、ホッと安心できた。
さっさと宿に帰ればよかったのだが、ふと、冷蔵庫に水が残り少なくなっていることと、空腹だったため、昨夜のチキンサラダをパンにはさんで食べることを思いつき、買って帰ることにした。
宿のオーナー・陽子さんに勧められたフィジーのお水は、これからも飲むだろうし、滞在中に頻繁に買うのも面倒なので、思い切って大量に買うことにした。
TARGETに行くと、フィジーのお水は何種類も束になっており、大きい物は車でなければ運べないほど大量だった。その中から、私でも歩いて持って帰れるギリギリの、1ℓ強のペットボトル6本入り選んだ。これなら1週間はもつだろう。
そしてパン。日本に売っているサンドイッチ用の薄くて小さいパンが欲しかったのだが、ここはAmerica、Brooklyn。あるはずはなく、ハンバーガー用のパンが1袋に6個も入った物が1番少量だった。しかも1個が日本のハンバーガー用のパンより大きい。〝うぅぅ~これからしばらく毎晩これかぁ……〟致し方ない。チキンサラダはまだ残っているし、もったいない婆さんの私には、食べないという選択肢はない。
かくして、お水6本と6個分のハンバーガー用のパンを両手で抱きかかえ、
重さにふらつきながら、ヨレヨレと部屋に戻った。
時計は3:10。どんなに遅くても4時には出なければ間に合わない。
すぐに買ってきたパンにチキンサラダを挟み、お水で流し込みながら出かける準備をする。
日本から持って来たお土産の駄菓子、あられ、頼まれていたタバコ、そしてもう1度行き方のチェックをする。目的のGrand Central Terminalまでは地下鉄④に乗る。遅刻だけは死んでも嫌だ。バタバタと大慌てで支度をし、
3:45に部屋を出た。
さあ、急げ、急げ。