#61 やっと礼拝参加・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月4日(日)4日目・・・6
Apollo Theaterの前をどれくらいうろついていただろう。
いつかまた来ることを自分に約束した。
名残惜しみながら、さて、これからどうしたものか考えながら、
とりあえず135st駅の方に向かって歩き出した。
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しばらく行くと、前方に、さっきまで一緒に歩いていたツアー御一行が、
相も変わらず教会の前にかたまっているのが見えた。
仕方ない、また出会ったのなら、このままついて行くとしよう。
駅に着いたら抜ければいいのだから。
すると、1つの教会の前で止まり、ツアーガイドと教会員らしき人が、
何か話している。どうやらこの教会の中に入るようだ。なんだ、礼拝に参加できるのではないか。きっと出発前の説明では話されたのだろう。そりゃそうだ。ゴスペルツアーなのだから、礼拝の1つにでも参加しなければね。
しかも、私は倍の$84も払っているのだから。
New Yorkに来て、初めて本物の教会に入った。
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さて、礼拝が始まる前に、おトイレおトイレ。
地下の奥まったところを指示された。真昼間なので窓から明かりは入るが、ドーンとだだっ広く、夜は怖そうな雰囲気だった。今は電気が通っているが、昔ロウソクだったことを思うと、怖いを通り越して、恐ろしく不気味だったのではないだろうか。
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用を済ませて、そんなことを考えながら写真を撮って振り向くと、シスターが立っていた。
「うわぁーっ!!!」
びっくりして思わず声が出た。シスターだって人間、おトイレにも入る。
けれど、あまりに静かに現れていたので、心臓が止まるかと思うほど驚いた。
ビックリする私に、シスターは何か話したが、理解できなかった。もしかしたら、〝ここで写真なんか撮ってはいけない〟と言っていたのかもしれない。とにかくびっくりから冷静に戻らなければ。これから礼拝が始まるのだから。慌てて礼拝堂に戻った。
広い礼拝堂の前方やバックステージには教会員が座り、観光客やツアー客は後方に座った。長いベンチに座っていると、次々に人がやって来て、フレンドリーに握手を求められた。
今、ここにいる人たちは皆家族だよと言っているようだった。
実は、長女がキリスト教の幼稚園に通っていたため、礼拝がどういうものかは知っていた。そして、国や時代が違っても、一般的な礼拝の行程や内容そのものが同じであることに驚いた。当然と言えば当然か。
ふと我に返ると、今朝、起きてから今まで、私は会話らしい会話をしていなかった。朝食をとらなかったため、宿のオーナー・陽子さんにも会っていない。急に淋しくなって、英語もわからないくせに、隣りに座った女の子に話しかけてみた。
「English OK?」
すると、うまく聞き取れなかったが、少し話せるという感じだった。「Where are you from country?」
英語が合っているか間違っているかは、わからなかったが、勇気を出して聞いてみた。やはり、しっかりとは聞き取れなかったが、どうやら出身はドイツで、今はNew Yorkに留学しているらしかった。(多分)
「NO, English」
と言いながら苦笑する私に、女の子は、
「Don't worry」
と言って微笑んでくれた。一気に距離が縮まった気がして嬉しかった。
英語が話せたら、もっと楽しくおしゃべりできたのになぁ。英語が話せたら、ゴスペルツアーももっと楽しめたのになぁ。少しだけ残念に思っていると、礼拝が始まり、牧師さんが聖書を読んだり礼拝説教を始めた。
だが言葉が分からないと、それは子守歌のようだ。途中で睡魔に襲われて居眠りしてしまったようだ。献金箱が回ってきたので、慌てて1$札を入れて隣りの人に渡した。
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礼拝が終わり、礼拝堂内の、緊張感でピーンと張りつめた空気が、緩んだ。
前方にはスープや食べ物が用意されていて、教会員らしき人たちが取りに行っていた。けれど私の周りの観光客たちは、誰も取りに行かなかった。
そう、あの食事は、毎週真摯に教会に通う人たちの物で、にわか教会員もどきである観光客の物ではない。
今朝は早くに宿を出たので、朝食を食べていなかった。最後の食事がいつだったかも忘れ、飲み物も持参しておらず、道理で空腹なはずだ。何か食べたいと思いながら周りを見ると、ツアー客たちがポツリポツリと外に出ていくのが見えた。〝ああ、ゴスペルツアーはここで解散なんだ〟とわかった。
きっと朝の説明のときに言われていたのだろう。
礼拝前に借りたおトイレをもう1度お借りして、外に出た。
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