#27  B&B THE ONE HUNDRED・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月1日(木)1日目・・・27

Jamaica(ジャマイカ)駅を出発してから、20分ほどでAtlantics Avenue - Barclays Center(アトランティック・アベニュー-バークレイズ・センター) stationに着いた。
ホームで駅名を見たときには、心底安堵した。肩に乗っていた錘が取れ、
自分の足で立っている感覚をしっかりと感じていた。 
宿のオーナーさんが送ってくれたメールの案内通りに、エレベーターで地上に上がり、右手のガラス戸を開けると外に出られた。
 
New York・Brooklyn(ブルックリン)。
空港や駅以外で、初めて踏み入れた憧れのNew Yorkの地。
踏み出した右足が、わずかに震えた気がした。
四角いコンクリートが敷き詰められた歩道を右手に進み、2つ目の信号を左に曲がると宿がある通りに出る。

すっかり暗くなった夜の歩道を、へっぴり腰で重いスーツケースをゴロゴロ鳴らしながらヨレヨレと進んだ。
ああ、やっと辿り着いた。私は今、New York・Brooklynの街を歩いているのだ。一歩一歩が愛おしかった。新雪の上を丁寧に歩くように、足の裏でコンクリートをギュッと踏み込むように進んだ。
35年以上憧れた、New Yorkの土地だよぉ。ついに来たんだよ。New York。
自宅を出てから長かったなぁ。長女は元気にしてるかなぁ。

あと数分で宿に着く。2つ目の信号を左に曲がって宿がある通りに出た。
ブラウンストーンの建物がズラーッと並んでいる。

昼間はこんな感じ

100と書かれた白いプレートがある家が、3週間お世話になる、
B&B【THE ONE HUNDRED】。

宿がある通りに入り、ドンドン進みながら玄関ドアを1軒1軒確認していく。けれど、行けども行けども100のプレートはない。
 〝あれ~?、あれ~?、おかしいなぁ~〟と思いながら7~8軒過ぎた頃、
ついにあった。白地に黒文字で100と書かれたプレート発見! 
あった、あったよ。
なんて素敵な建物、なんて素敵な玄関、なんて素敵な佇まい。
一目で気に入り、ワクワクした。 

昼間はこんな感じ

ふとその先を見ると、あと2軒ほどで大通りに出るようだ。
100のプレートは見つかったが、とりあえず大通りまで歩いてみよう。
なんたってここは35年以上憧れたNew York。歩きたい。
そう思いながらONE HUNDREDを通り越し、大通りに向かって進んでいると、背後から声がした。
「YUKIEさんですか?」
振り向くと女性の姿があった。暗くて黒いシルエットしか見えなかったが、すぐに
「陽子です」
と言われ、オーナーさんだとわかった。なんと、オーナーの陽子さんは、私が100のプレートを見過ごしたと思って、わざわざ出迎えに出て来てくださったのだった。

 宿を少し通り過ぎていたので引き返し、玄関への階段を10段ほど上がる。
私がへっぴり腰でヨレヨレと歩きながら運んだ重いスーツケースを、陽子さんが軽々と運んでくださり、可愛らしい蔓草模様の鉄扉、茶色が優しい木の扉、そして白い木の扉を開けて家の中に入る。
ドキドキした。生まれて初めて海外のお家に入る。
しかも築160年の指定文化財。これまで住んできた日本家屋とは全く違う、白い壁と、あちこちに施された彫刻が、海外にいることを実感させてくれた。
20畳以上はありそうな広い広いリビングに案内された。木の床に白い壁、天井ではシーリングファンが回り、壁と天井の境い目にはズラーっと彫刻が並ぶ。まるで外国映画のセットの中に入り込んだようだ。

広いリビング


玄関中扉

 陽子さんは、個室や建物の鍵の使い方、周辺の地理やお店、目印になる建物や時計台のことなど、詳細に教えてくれた。

 そして、2階の部屋に案内される。階段の手すり1本1本やドアノブの1つ1つ、床の木材が、建てられた160年前のままでレトロ感満載だ。
2階に行くための階段は途中でカーブしており、その手すりにつかまりながら上っていくとき、気分は外国映画の主人公。 


バスルームへの廊下

 3週間お世話になる部屋のドアを開けると、

10畳ほどの縦長で、窓際にベッド、両サイドに間接照明のランプ、テレビ、冷蔵庫、タンスが並んでいた。ベッドの上の天井には、インドの大きな布が、横になったヨットの帆のように下がっており、優しい雰囲気を醸し出していた。 

テーブル手前の紫がボストンバッグ、左の黒がスーツケース

 一通りの説明を受けた後、オーナーの陽子さんが、同行しながら実際にご近所を案内してくれた。
駅に着いた時に、宿に帰る目印になる時計台を確認し、大きなスーパーのWhole foods market(ホールフーズ・マーケット)や、良質な商品を置く24時間営業のスーパーmr.mango(ミスターマンゴー)に入り、どこにどんな商品が売られているか、細かく教えてくれた。

 ご近所にはハイステータスの黒人が多く、特に女性はマナーに厳しいとのことだった。
狭い店内の通路をすれ違う時は、必ず1歩下がって進行を譲る。
すれ違いざまに少しでも触れたら即座に〝Sorry〟は必至だ。
子どもの頃、近所にいた厳しいおばさんに会う感覚。
だが、ただ厳しいだけではない。〝Thank you〟と言った時にかえしてくれる〝You're welcome〟の言葉は、笑顔とともに、あたたかくて優しい。
そして私がすっかり虜になってしまったのは、1本ビシッと筋が通った、
力強い自分軸と凛とした態度のかっこよさだった。 

そういえば、飛行機を降りてから宿に着くまで、白人はあまり見かけなかった。親切に助けてもらったほとんどの人が黒人だった。
普段日本で生活していたら、まずお目にかかれない人種の人たちなので、慣れなくて少し緊張していた。けれど、Brooklynの黒人女性の立ち居振る舞いと、凛とした雰囲気にすっかり魅了されてしまった。
そんなマナーに厳しいおばちゃんたちのことを説明されながら、陽子さんにくっついてご近所を回った。 

New Yorkフリークから、B&B「THE ONE HUNDRED」オーナーの陽子さんは、至れり尽くせりだと聞いてはいたが、最初の問い合わせから、出発前日までのメールでのアドバイス、さらに宿に着いてからも、ここまでしていただけたことに、びっくりだった。
けれどこれだけでは終わらず、翌日からこの至れり尽くせり度はさらにパワーアップし、滞在3週間の大きな大きな助けとなった。

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