#137 郊外で市バスに乗って大混乱・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月13日(火) 13日目・・・2
今日は、いつものAtlantics Avenue - Barclays Center stationではなく、
Fulton Street stationからF(Gだったかも……)ラインに乗って、
Smith-9 Streets Stationに着いた。
曇り空だったせいもあり、ホームから見るビル群が遠くに霞んでいた。
駅のエレベーターは古く、キイキイギシギシと音を立てていた。
これにももう驚かない。これもNew Yorkだしね。
駅前は異国情緒たっぷりで、いかにも、アメリカ郊外の田舎町に着いた感覚だった。
目的地のRed Hookへは、駅前から家具のIKEAに行く、B61のバスに乗る予定だった。
ふとバス停を見ると、B61のバスが、今まさにノロノロと出発し始めていた。英語が話せて慣れていれば、走ってドアを叩いて乗れそうな気がしたが、私にはできず辞めた。本当にIKEAに行くという確信がなかったし、走り出したバスを止めてまで乗る勇気もなかった。
B61のバス停を、もう1度しっかりと確認して、待つことにした。
宿を出るときにはやんでいた雨が、また降りだしていた。
傘を差しながらB61のバスを待つ。中々来ない。
時刻表を見て確認すると、あと10分ほどで来る予定。
前のバスを見送ったばかりなのだから、すぐには来ないだろう。
けれど心配になり、斜め前で待っていた、真面目な高校生もしくは、幼顔の大学生風のおねえさんに聞いてみた。
「IKEA OK?」
本当は、〝このバス停で待ってたらIKEA行きのバスが来ますか?〟と聞きたかったのだが、無理だ。IKEAの何がOKなんだか、自分でも歯がゆかったが仕方ない。けれど察してくれた真面目な高校生もしくは、幼顔の大学生風のおねえさんは、何も言わずに無表情のまま、コクンとうなずいてくれた。
少し安心して再びバスを待つ。
目の前を大音量でけたたましく消防自動車が走って行った。近くのおじさんが耳をふさぐ。雨は少しだけ強くなり、電光掲示板の気温は9℃。吐く息が白く見える。寒い。バスは来ない。でも、おねえさんがうなずいてくれたのだから、信じて待とう。
雨の中、2人とも無言でB61のバスを待つ。10~20分ほど待っただろうか。
ほどなくしてB61のバスがやってきた。さぁ、Red Hookへ出発だ。
空いている座席に座り、窓の外を見た。
気を付けなければいけないことは、IKEAまで行ってしまってはいけないという事。途中で、目抜き通りのVan Brunt St.(バン・ブラントストリート)という通りを走り出したら、下車しなければいけない。
車窓から異国情緒たっぷりな、いかにもアメリカ郊外の田舎町の風景を楽しみながら乗っていた。
晴れていたらもっときれいな風景なのだろうなぁと思いながら、私にとって大切な日は決まって雨降りの自分を、仕方ないと納得させていた。
乗ってから5~10分後、あるバス停に到着すると、先ほど私のめちゃくちゃな〝IKEA OK?〟にうなずいてくれたおねえさんが、離れた席から突然私のところにやってきて、何やら慌てて必死に話し出した。
「#$%&‘‘+*|&%¥4&’〇×△□!!!」
え!? なに?なに? 何が起きたの!? 何を話してくれているの!?
ん~ん、わからない。何かを一生懸命話してくれている。何をそんなに必死に訴えているの?
訳が分からずポケーっとしていると、おねえさんは〝カモーン〟という仕草で、バスの前方を指した。
え? 降りるの? どうして? だってこれはB61のバスでしょ? このまま乗ってたらバン・ブラントストリートを通ってIKEAに行くんでしょ? どうしてここで降りなきゃいけないの?
頭の中にはてなマークが大量に浮かんだ。
でも、あまりにもおねえさんが必死に訴えるので、思わず、
「え? 降りるの?」
と日本語で言いながら、おねえさんに続いてバスを降りた。
〝こっちだよ〟と目くばせするおねえさんの後を付いて歩いた。
バン・ブラントストリートの文字もIKEAも全く見当たらない。見知らぬ風景の見知らぬ街を、とにかくおねえさんに付いて行く。
交差点を1つ超えたところで、またバス停に到着。どうやらここで乗り換えるようだ。
〝ええ? 何のために? 何でわざわざ乗り換えるの? あのままB61のバスでいいじゃん〟
不思議に思ったが、急いでいるわけではないし、メトロカードなのでバス運賃も余分にかからないし、おねえさんが悪い人には見えなかったし、騙されてるようではなかったし、このままついて行ったらどうなるかも気になり、従うことにした。
他にも数人のバス待ち客と、相変わらず寒いバス停で待つこと数分。
やってきたバスはB61。
はぁ? どうして? さっき乗ってたバスもB61だったじゃん。だったらわざわざ乗り換える必要なかったんじゃないの!?
そう思いながら再びB61のバスに乗り込み、とりあえず座席についた。
何が何だかわからないままおねえさんを見ると、何事もなかったように、
無線イヤホンをしながら何やらスケッチブックにデッサンを始めていた。
ええ? どういうこと?? 訳が分からず頭の中は大混乱。
とりあえず、黙って乗って行くことにした。