#188 お誕生日おめでとう、私。・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月18日(日)18日目・・・9
Barに行くために28 Street駅に着いた時からドキドキしていたこと、
途中の道で怖気づいて帰りたくなったこと、
エレベーターで20階までは心細く来たこと、
人生初めてメルシーと言われたこと、
ギャルねえさんとギャルにいさんのこと、
などなど、このわずか40分の間に起きた、ドキドキハラハラシクシクなど、
昼間の、あまりお上品ではないマダムのことも含め、色んな出来事と感情を少し振り返って整理していた。
気持ちが落ち着いてきたら段々と冷静になってきて、クランベリージュースを一口飲んだ。
うすい黄緑色のライトが波を打つように光るEmpireを、イスに深く座り直して長い時間じーっと見つめていた。
やっとここまで来たなぁ。
今、私はこんなにも近くでEmpire State Buildingを見ている。
遠い遠い昔から、憧れ続けて、あまりに恋しすぎて何度も泣いて、それでも諦めきれなくて、思い続けたNew York・Manhattanにいる。
夜景が広がる摩天楼の中でEmpireを目の前にしている。
初めて摩天楼の写真を見てから、何十年経ったのだろう。長すぎて、遠い昔なのかつい最近なのか、はたまた前世なのか、もう感覚が分からなくなってきた。ちょうど2日目の夜に、Times Squareに来た時のような感覚に似ていた。
この風景が、今回限りの旅行で見納めなのか、この先いつか本物のNew Yorkerになって日常になるのか、今はわからない。
今回の旅は、最初で最後なのだろうか、私はNew York・Manhattanに歓迎されているのだろうか、拒否されているのだろうか。
90年近く前からずっとそこに鎮座しているEmpireを眺めながら、少し大げさだが、今までの53年間の人生を振り返った。
どれくらい居たのだろう。随分長い時間、Empireを眺めていた。
ふと気がづくと、頭上には電気ストーブがあり、いたるところに毛布が置いてあった。私には寒さは感じられなかったが、ありがたいサービスが、日本みたいだと思った。
グラスの中の氷はすっかり溶け、目の前のEmpireも堪能した。いや、無理やり堪能させた。このままではお尻に根っこが生えて動けなくなり、離れられなくなってしまう。同時に、もう2度と来られないような気がして、離れることが怖かった。そして急に悲しくなって泣き出しそうになった。
でも、せっかくここにいるのだから、さぁ、記念写真をたくさん撮って帰ろう。
後ろ髪惹かれる思いで椅子から立ち上がった。
お誕生日おめでとう、私。