英断検定準2級
不器用な英断。
◆ ◆ ◆
漢字検定2級を持っている。
そのひとつ下に「準2級」があるのだが、「準」とつく称号よりもない称号のほうが、大きな差を持ってカッコよく感じた。だから、必死に2級を勉強した。
◆ ◆ ◆
今の仕事を続けようか、ベトナムの仕事に転勤しようか、1週間煩悶して考えた。
自分なりの結論を出すための、考え方すらわからなかったから人一倍苦しかった。2択のそれぞれにひそむプラスの数をかぞえても、上手くカウントができなかった。それではと、それぞれにひそむマイナスの数をかぞえてみた。
ここでやっと、結論までの道のりを整備できた。マイナスの数が、同じだっただのだ。つまり、僕は、どちらの選択をしても、絶対に後悔すると断言することができた。どちらも後悔するのならば、もう、今の自分がしたいことを選べばいい。
そして、答えが出た。
◆ ◆ ◆
そういえば、履歴書の資格欄に書いた「漢字検定2級」には、面接のおりに触れてもらえなかった。昔から、小説を読んでいるときに初めての漢字に出会うとおじいちゃんからもらった電子辞書で調べる癖があった。熟語の意味と読み方を頭のなかにたくわえることが、たまらなく好きだった。
好きだったものの延長で合格した検定だったから、自己満足の結晶だったから触れてもらわなくても不平不満はない。
漢字検定の受験を決断したような心持ちで、今回の件も決断できればどれだけカッコよかっただろうか。
◆ ◆ ◆
きっと、僕は転職して数日後、あるいは数ヶ月後、もしかしたら数年後に後悔するだろう。日本の仕事を続けていれば、こんな苦しみを味わなくてすんだのに。
この分岐点となった1週間を、そのときはまた思い出してくれるとうれしいな。